イスラエル昔話

自己中心の大金持ち 最後はどうなったか?

イスラエルのお話です。昔々あるところに、きれいな庭園に囲まれた豪邸を持つ大金持ちがいました。庭園をもっと美しくしようと、金持ちは使用人たちに土の中からいらないを掘り出し、の外に投げ捨てるよう指示しました。使用人たちは毎日、塀の外に石を捨てる作業を繰り返しました。

ある日、金持ちは作業の様子をみるために、門のところへ出てきました。すると、そこを通った古老が彼に話しかけました。「あなたは、なぜ自分の石を、家でもない所から、わざわざ自分の所に投げ捨てるのですか?」

金持ちは、ぽかんとして心でつぶやきました。「何を言っているのだ、この老人は?」

そして、古老に言い返しました。「爺さん、この豪邸と庭園は私のものだ。建物から塀までの土地は全て私のものだ。塀から外は、よその土地だ。よその土地に私の石を投げ捨てて何が悪い」

古老は頭を横に振りながら、「あなたは神からたくさんの恩恵を受けすぎていて、万物は流転するということを忘れている」と言い残し、去って行きました。

金持ちは古老の話には気を留めず、使用人たちの間を行き来しながら、相変わらず石を塀の外へ投げ捨てるよう指図しました。

それから何年か過ぎて、庭園の石は完全に取り除かれました。しかし、この時から、金持ちの財も日に日になくなっていきました。しまいには、大事にしていた庭園の一部を売ることになり、その後もまた残りの一部を売りました。どんどん売りさばき、最後には豪邸まで売却することになってしまいました。財産が底をついた金持ちは、汚い格好をして、物乞いのような生活を送りました。

歳老いた彼はある日、かつて自分が住んでいた豪邸と庭園の前を通りました。彼はふと道に転がっている石につまずき、転んだ拍子に足をケガしてしまいました。彼は庭園を囲む塀を眺めながら、道端に腰を下ろすと、傷付いた足を休ませることにしました。

その時、以前に古老が言った言葉を思い出しました。「あなたは、なぜ自分の石を、家でもない所から、わざわざ自分の所に投げ捨てるのですか?」

(翻訳編集・豊山)