【大紀元日本12月4日】担担麺(たんたんめん)は、中国四川省発祥の辛みを利かせた、挽肉やザーサイの細切りなどをのせた麺料理です。香港または日本でアレンジされ風味などは異なりますが麺料理の一種として定着しています。
「担担麺」は「坦々麺」と表記されることも少なくありませんが、これは日本語入力の際の漢字変換辞書に「担担麺」が登録されていなかったため、「平坦な」という意味の「坦坦」が「坦々」に誤って確定されてしまったと考えられます。中国や香港では「坦」の字は使用されていません。
担担麺は清の時代に四川省自貢の陳包包と呼ばれる男性が考案し、成都で売り歩いたと言われています。もともとは天秤棒の片側に豆炭を使う七輪と鍋を、もう一方に麺や調味料、食器、洗い桶などを吊し、担いで売り歩いていました。鍋は真ん中に区切りがあり、片方には具を、片方には湯を入れるようにしていました。温かくて辛い麺を出したところ、それが受けて流行ったそうです。
「担担」または「担担兒」は成都の方言で「天秤棒」を意味し、元来、天秤棒に道具をぶら提げて担いで売り歩いた麺料理のためにこの名がついたとのことです。
中国の四川省では、一般に日本で俗に言う「汁なし担担麺」が食べられています。天秤棒を担いで売り歩くのにスープを大量に持っていたのでは困難であるため、「汁なし」が原型とされています。日本の汁椀のような小さな碗で売られる事が多く、一杯あたりの量は少なく、小腹が空いたときに食べる中国式ファーストフードの一種と考えられています。麺は一般的にストレートの細麺で、かん水は使わないため麺の色は白いのが特徴です。
四川風の花椒とラー油の風味を利かせた醤油系の少なめのたれに、ゆでた麺を入れ、「脆臊」(ツイサオ cuìsào )と呼ばれる豚肉のそぼろとネギ、ザーサイなどを載せたスタイルのものが一般的です。そぼろは豚肉を中華包丁でみじん切りにし、ラードを入れた中華鍋で、料理酒、甜麺醤、塩、醤油を加えてパラパラになるまで炒めます。
味付けは、ラー油、花椒(ホアジャオ)の粉または花椒油、醤油がベースで、少量の酢、塩などを合わせます。花椒は山椒と同じミカン科の種類の異なる植物で、山椒は日本原産、花椒は中国原産です。花椒は山椒よりもさらに芳香、辛みが強いようです。また、豆板醤や芝麻醤が使われることもあります。この辛い液が入った碗に、ゆでた麺を入れてから具を載せます。具は一般的に豚肉のそぼろで、薬味には刻みネギ、もやし、刻んだ「川冬菜」という菜の漬物、エンドウの芽、煎りゴマ、刻んだピーナッツ、揚げた大豆などが添えられ、混ぜてから食べます。
四川料理を日本に持ち込んだのは料理の鉄人・赤坂四川飯店の陳建一さんの父・建民さんです。健民さんは当初、本場四川風の汁無し担担麺を出していましたが、評判があまりよくありませんでした。日本で一般的な中華料理といえばラーメン。そこで「日本人には汁が無いとダメなんだ」と考え、スープを入れてまろやかな味にし、日本人の舌に合うようにアレンジしたそうです。一般に中国のものと比べて直径で1.5倍以上、場合によっては3倍ほどの碗で出されています。そして、辛さをおさえるためにラー油と芝麻醤の風味を効かせたスープを合わせ、汁麺として出されるようになりました。汁の味や辛さは中国のものより薄く、飲める程度になっています。麺は店によって異なりますが、一般的に中国のものよりも少し太く、かん水を使った中華麺がほとんどです。太麺はスープがからみにくくなることもあるので、一部の店では縮れ麺を使用し、スープとからみやすくしています。日本では、担担麺の定義はないため、店によって様々な味付けと具材が工夫されています。たとえば、そぼろ肉には豚肉ではなく牛肉、合い挽き肉、鶏肉を使用したり、チャーシューや煮豚を載せるなど店によって異なります。また、チンゲンサイ、ホウレンソウ、サヤエンドウ、モヤシなどの野菜が少し添えられたりする場合もあります。薬味は刻みネギや唐辛子の細切りなどです。
その他、香港の担担麺をまねた干し海老の味がするものを出す店もあります。また、千葉県勝浦市にはラー油ベースの激辛スープを使った勝浦式タンタンメンが存在し、神奈川県川崎市周辺には元祖ニュータンタンメン本舗の出す辛い汁に溶き卵を絡めたものがあり、黒ごまやうどんを使ったものを出す店もあるなど、地域や店舗独特の風味のものが見受けられます。
近年中国各地の四川料理店や専門店で食べられますが、上海など辛いものを食べ慣れていない地域では、辛さを控えて出すこともあります。また、スープが十分に入ったものは日本でアレンジされて普及した担担麺ですが、現在では中国大陸の四川料理店でも汁麺を出すことが増えつつあるそうです。
これからの寒い時期には、辛いスープの担担麺が体を温めてくれそうです。
(文・大鬼)
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