中国の汚染問題「極めて深刻」 専門家「腐敗と言論封鎖 改善は困難」

【大紀元日本7月2日】先日、米ワシントンにあるウッドロー・ウィルソンセンターで開催された「中国の有毒災難を回避する」という座談会で、中国の汚染状況・措置について多くの環境活動家による討論が行われた。

『Chasing Molecules(分子を追って)』などの著書で有名な環境汚染作家、エリザベス・グロスマン氏は、汚染は極めて深刻な状況にあり、中国人の健康が害されていることを次のように指摘した。

「広東省の貴嶼には廃棄されたゴミが集中しており、ここの水は汚染されているため、完全に飲用できないと認定されている。現地の水は、鉛、合成化学物質、消火剤、防炎剤(臭素化合物)、プラスチック、金属関連物質により汚染されている。また、大気汚染レベルも極めてひどく、現地住民は呼吸器系統、胃腸、皮膚などの疾患に苦しんでいる。土壌についても、以前の農地は今や完全に汚染されてしまっている」

貴嶼は、中国初の「循環型経済試験地域」。国務院の同意を得て国家発展・改革委員会(国家発改委)、国家環境保護総局、科学技術省、財政部、商務部、国家統計局が共同で許可した地域だ。電気機器の廃棄物を扱う世界最大の処理場となっており、現地を流れる練江の汚染は深刻だ。グロスマン氏は、これらの有害化学物質の問題は中国で起きているが、長期間の堆積により土壌、水路、さらには空気中にも混入し、世界の大気の一部になっていると指摘している。

また、米グリーンサイエンス政策協会のアリーン・ブラム氏によると、中国のPBDEs(ポリ臭素化ジフェニルエーテル)汚染は深刻で、パンダの体内からもこの物質が発見されているという。

 地方:法律があっても、準拠しない

天然資源防衛協議会(NRDC)のデービット・レネット氏は、中国政府はすでに鉛、水銀、カドミウム、クロム、ヒ素などの有害化学汚染を管制する関連政策を打ち出しているが、今のところ具体的な効果は上がっていないと語る。「中国はすでに、5カ年計画に重金属汚染への対処を盛り込んではいるが、大まかなところ、この計画は米国の環境法律をまねたものだ。しかし、残念なことにこの5カ年計画が今年2月に認証された時点でも、計画の詳細内容は知らされなかった。多くのプロジェクトについても公開されていないため、どういう事情かを知ることは難しい。中国の政策決定はこのようなものだ」と指摘している。

グリーンサイエンス政策協会のブラム氏は、中国に関連法規がないわけではない。問題は徹底した執行がなされないところにある、と指摘した。中国の環境保護部はすでにこれらの化学物質に対し米国よりも優れた法規を制定している。環境保護部は鉛事件の再発を望まない一方、商業利益にも左右されている、とブラム氏は話している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの「保健と人権」局長ジョー・エイモン氏は、問題の根源は立法と地方レベルでの法の執行にギャップにあることを指摘。この他、腐敗問題も上げている。現地の多くの人々は、工場責任者は私有・国有にかかわらず、監督側であるはずの現地共産党委員会の幹部とコネがあるかグルになっていると訴えている。環境保護機関も工場と緊密に繫がっているケースが多いという。

現在、中国メディアは汚職事件を報じることを許可されてはいるが、安定維持の前提のもとで、中国当局はこの種の問題を社会の不安定要素とみなしている。このため一旦、中毒・汚染事件が発生すると、環境活動家や被害者が攻撃の対象となってしまう、とエイモン氏は話す。同氏にかつて協力したことのある中国の環境保護活動家たちは失踪しており、連絡がつかないという。

北京当局はすでに環境汚染の深刻さを認めている。しかし、中国本土の企業と党幹部や職員が絡み合う関係や、経済成長追及の圧力、言論封鎖による情報の欠乏などの状況が変わらない限り、中国汚染問題の根治は難しいと専門家らはみている。

(翻訳編集・坂本)
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