南シナ海で再び緊張 米国防長官、「アジアへの関与を強化」
【大紀元日本6月6日】ゲーツ米国防長官は4日、シンガポールで開催中の「アジア安全保障会議」での講演で、国内の国防費削減方針やイラクとアフガンでの軍事行動に対して国内で圧力がかかってはいるが、米軍はアジアへの関与を強化すると述べた。
「これまでの人生で、米国の強大な力と適応能力を自分の目で見据えてきた。米国の力を過小評価する独裁者と侵略者は、すべて歴史のゴミ箱に捨てられてきた」とゲーツ国防長官は発言。
これに対して、かつて米軍と戦争したベトナムのグエン・チー・ビン国防次官は、「米軍の存在を歓迎する」と表明した。同国防次官は5日、シンガポールでの記者会見で、「いかなる侵略行為も許さない」と南シナ海の島々の領有権を強調している。
ゲーツ米長官とベトナム国防次官の発言の背景には、ここ一ヶ月、南シナ海での勢力拡張に中国が力を入れている事実がある。中国は南沙(英語名スプラトリー)諸島などの領有権をめぐりフィリピンやベトナムとの摩擦を強めているのだ。
フィリピン当局は先月、中国が、南沙諸島にある浅瀬付近に建築物の材料を持ち込み、浅瀬を占拠しようとする動きを見せたとして懸念を示した。また、ベトナム政府は、南シナ海で先月、自国の国営石油会社の探査船が中国から妨害を受けたとして、中国に「国際社会に対する約束どおり行動するよう求めたい」と先週、声明を出したばかり。ベトナムの首都では最近、数百人が中国大使館の前で「侵略をやめろ」と抗議した。
近年中国が見せた軍事拡張に対してアジア諸国が懸念を示している。
中国の梁光烈国防相は5日、「アジア安全保障会議」で講演。「中国は永遠に覇権を唱えず、永遠に軍事拡張しない」と述べた。中国の軍事脅威に対する周辺国の警戒を緩めるためのアピールと見られている。
一方、ゲーツ米長官はシンガポールでのアジア安全保障会議で、主席の27カ国代表に対して、米国国内で進めている国防費削減方針と、米国民衆の戦争に対する反感が、アジア太平洋地区への米軍による軍事介入への障害になることはないと発言した。アジアでの軍事拡張は、米韓との関係強化のほか、東南アジアとインド洋も米軍の活動範囲とし、シンガポールに新たな戦艦を置くことや、中期的な空海戦争計画を新たに検討していることなどの内容だ。
また、米国は海上通路とパソコンなどへの投資を続けていくと同氏は発言した。
ゲーツ長官のこの発言は、米国のアジア政策方針の一環で、中国海軍の近年の台頭、南シナ海における中国と周辺国家の利益紛争にあるとアナリストは見ている。
台湾国防省の楊念祖副相は、米VOAの取材に応じ、アジア太平洋地区の平和と安定の維持は米国の国益の核心であり、「米国はこの問題を常に重要事項としていくだろう」と語っている。
香港軍事評論家、馬鼎盛氏は、メディアの取材で、アジアで盟友の利益を保護するために十分な軍事力を有する米国は近年、軍事力のほか、外交や経済などのソフトパワー使用も重視していることを指摘した。