河南省の市副書記、海外亡命 増え続ける中国の「裸官僚」
【大紀元日本9月5日】総人口 542万人の河南省安陽市では最近、失踪した市の副書記・李衛民の行方が市民の間で話題となっている。ネット上で広まる噂を受け、同市の中共宣伝部は先週、地元のニュースサイトを通して、汚職の疑いがある李はすでに党籍を除籍されたが、海外に逃亡したと公表した。
ネットの情報によると、李は3カ月前から突然行方不明となっていたが、市当局は病気治療のために外出したと説明していた。一方、市民の間では、李は亡命したという情報が伝えられていた。亡命先についてはカナダやシンガポール、また三峡ダムプロジェクトの汚職事件に関わっているなど、さまざまな噂がネット上で流れており、注目の的となっている。
それを受け、8月27日付け安陽市の地元ニュースサイトは、李が汚職の疑いで亡命したと伝えている。翌28日、安陽市中共宣伝部はメディアに対し、この事実を認めた。
家族は海外、一人で留守の「裸官僚」
近年、中共の官員が海外に亡命する事件が相次いで伝えられている。2008年、浙江省温州市の官員・楊湘洪は病気治療を理由にパリに行ったきり帰らなかった。翌年、温州市の検査院は、2000万元の不明資金を海外に送金した疑いで楊の妻を逮捕している。
そのほか、上海市湾区副区長の忻偉明は代表団の一員としてパリを訪問した際、行方不明となった。また、山西省疾病制御センター主任の栗文元がオーストラリアに旅行に行った際にも、帰らなかった。
多くの汚職官僚は、家族や財産を海外に移転させ、可能な限り金銭を集めて海外に送り、自分一人だけが国内に留まる。このような官僚は「裸の官僚」と呼ばれ、自らも外国のパスポートをすでに取得しており、いざ問題が発覚しそうな時は、すぐに海外へ逃亡できるよう準備しているという。
汚職官僚の海外亡命を防ぐために、当局は多くの措置をとっている。中国の国営銀行で高級管理職だった張さん(匿名)は、2ヶ月前に日本に出てきた。以前、妻と子供は日本に在住し、張さんだけが上海で生活していた。上海で留守を預かっていた張さんに数ヶ月前、国家安全局の人がアプローチし、張さん一家が東京にいる理由を尋ねたり、張さんのパスポートを調べるために一時的に預かると話を持ちかけてきたという。
上層部に疑われていると感じた張さんは、高収入で安定した地位と、身の安全を秤にかけた結果、張さんは静かに中国を離れ、日本の家族の元に来ることを選んだ。
しかし、すべての「裸の官僚」の海外逃亡が成功するとは限らない。7月、国営通信「新華社」の国内報道部トップの万武義氏(男、58歳)がイギリスに逃亡したと伝えられた。しかし、その後、新華社が海外メディアに万氏を取材するよう段取りしたところ、同氏はイギリス訪問中に病気のため一時的に入院していたと述べ、同事実を否定したという。8月、万氏は帰国したというニュースが新華社から伝えられた。
しかし、万氏の妻に関する新華社の説明や、イギリスで入院した経緯は万氏本人との説明と矛盾する点が多く、海外亡命を図った同氏の計画が失敗したのだとする見方もある。
内部情報筋によると、万氏はメディアを管轄する中央宣伝部の代表団メンバーとしてイギリスを訪れていた。訪問期間中に持病の腰痛が悪化し、歩行不能になったとして、代表団から一時脱却することを許可された。
海外の中国語メディア「明鏡ネット」の取材に答えたとする万氏の説明によると、万氏がイギリスに脱出したのは政治上の問題だったという。しかし、新華社内部の関係者は、同氏が汚職と収賄に関わったとする告発があり、懲戒免職と取り調べが内部で予定されていたため、それを察知した万氏がイギリス訪問を機に逃亡を図ったと話している。
一方、万氏の妻子は今回の逃亡に備え、すでにイギリスに移民したという。すなわち、万氏は典型的な「裸官」だったのである。
中共検察機関の統計によると、海外亡命した汚職官僚の人数はおよそ4千人で、彼らが海外に持ち去った金額は50億元(7.4億ドル)に達する。この統計はかなり過小評価されており、実際の金額はこれの数倍になるという指摘もある。
「裸の官僚」の逃亡を防ぐために、中共当局は最近、関連の幹部管理規定を発表した。しかし、政治情勢の不安や管理体制の混乱による海外亡命は、より一層増えていくとみられている。