ストライキ風潮拡大 中国政府、進退両難の政治ジレンマに

【大紀元日本6月14日】「賃上げ求めホンダ部品工場でスト」。5月下旬、多くの中国国内紙で掲載されたこのニュース。今まで「ストライキ」ということばに敏感だった中国当局は、今回、新聞紙のトップ扱いさえ黙認した。中国政府系の労働組合「中華全国総工会」は6月4日、ホンダ中国部品工場で発生したストライキを異例に通達し、外資系企業の賃金アップなどを促した。

しかし、先週、広東省中山市で起きた3件目のホンダ中国系列工場のストライキに対し、当局は態度を180度変え、国内メディアの報道禁止や、海外メディアを現場から追い出すなどの対応となった。

ドミノのように、ホンダから始まったストライキの風潮は、南部の広東省から中国各地に蔓延している。先週、広東省のほか、江蘇省や、江西省、上海市、陝西省などの各地でもストライキが起きている。

賃上げだけではなく、労働者の権利をカバーしない政府系労組を解散して独立の労組の設立を要求する中国の新世代労働者は、外資系企業の基本給アップを促しながらも、集団抗議に異様に敏感な反応を示す中国政府に、政治難題を突きつけた。

もし、ストライキがこれからも続発するのであれば、ストライキに対する態度表明を避けてきた中国政府は、やむを得ず方針表明に追い込まれるだろうと、ファイナンシャルタイムズ(FT)が6月10日の報道で分析。

その理由は、当局は次の圧力に面しているからだ。▼経済の改革者と一般国民は、増給を求める努力を、所得の不平等配分を縮小する第一歩の成功とみなしている▼企業側は、コストの上昇を心配している▼共産党の幹部は、集団抗議の発生を憂慮している。

「政府が労働法に基いてどう対応するのか、正念場になる」。コンサルタント会社の「コントロール・リスク」社上海事務所のアナリスト、アンドリュ・ギオーム氏は、FTに対してそう話す。「もし、ホンダの部品工場を真似するストライキが続発すれば、企業は非常に頭を悩ますだろう」

実際には、ここ数十年間、中国国内では相当数の労働者の抗議が発生していた。その多くは地域的な事件だったため、広範囲の民衆の目には届かなかった。事件の起因はほとんど、給与の未払いや、過酷な労働条件である。

しかし、アンドリュ・ギオーム氏やその他の専門家は、ホンダでのストライキは新たな情勢である、と認識している。これらの労使紛争の起因は、労働者が受けた虐待ではなく、賃上げの問題であるからだという。すなわち、たとえ運営が健全な工場でも、この種の労使紛争が起こりうる。

上海師範大学の劉誠教授はホンダのストライキを「新しい形式で象徴的な事件だ」とみている。中国政府の2008年版「労働法」の起草の顧問を務めた同氏は、FTに対して、長期にわたり給与が低く抑えられてきたと指摘、「ついに爆発を引き起こした。労働者は自分たちの正当な権利を徐々に認識するようになり、関連の議論や研究もよく行われているためだ」と述べた。

労働者のこの認識を、共産党内部の一部関係者は重大な脅威と受け止めるだろう。その理由は、ストライキの連鎖発生は、共産党とその労働組合「中華全国総工会」のコントロール範囲外で、独立かつ信頼性の高い組織的な労働組合の誕生を促すからだ。

実際、ホンダのストライキに始まる一連のストライキでは、今までなかった組織性と普遍性を持っているのが特徴的。労働者らは、携帯電話やショットメールなどを使って連絡を取り合ったり、最新の情報を入手したりしている。

上海付近の蘇州では今年、退職する際納付した年金を入手できるある計画の取り消しについて、すでに数回のストライキが発生している。

「従業員らはショットメールの連絡ですぐ集まってくる」と、上海市の法学学者董保華氏は、現代の科学技術がストライキ発生の可能性を高めたと話す。

14日から始まる端午の節句の祝日を前に、蘇州市のある企業のオーナーが憂慮する。「祝日前に出荷する計画があるから、従業員は往々にしてそれを交渉の条件にして祝日前にストライキを行う」という。

ホンダストライキの成功に影響され、長江デルタ地域の労働者らもストライキに突入する行動を取るだろうと、もう一人の雇用主は話した。

実際、蘇州市の昆山では先週、台湾系電子部品工場「KOK書元機械」ではストライキが発生、従業員らと警察との衝突が起きた。

先週、メディアを主管する共産党「中央宣伝部」は中国国内メディアに通達を出し、ストライキおよび「富士康」の従業員連続自殺の報道禁止を命じた。昆山のストライキも、当局に報道を禁じられている。

しかし、一旦瓶から出た精霊を再び瓶に戻すことはできない。「団結は力、抗争で希望を」とスローガンを叫ぶ「書元機械」の従業員らは、当局宛の請願文で、「最近のホンダと富士康は、私たちが見習う模範と力だ」と記している。

(日本語大紀元ウェブ編集報道チーム)
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