世界首位のEMS、中国工場の一部を台湾回帰示唆

【大紀元日本6月10日】世界最大のEMS(電子機器の受託生産サービス)企業である台湾「鴻海精密集団」は、8日に台北で開かれた株主総会で、従業員の自殺が続いた中国深センの工場「富士康」について、総裁の郭台銘氏は、職員の生活管理に関し、「社会的機能を政府に戻していく」との考えを示すと同時に、コスト増により中国工場の一部生産を台湾に移し、「無人工場」の構想などを株主に説明した。

深セン工場の従業員の連続自殺を受け、「富士康」は最近、従業員の給与を30%引き上げ、更に10月から最大67%アップすると公表した。

台湾系新聞「世界日報」の報道によると、今回の株主総会で郭台銘・総裁は、中国沿海地域の労働コストの上昇圧力は避けられないと示し、リスク分散のため、中国の工場を内陸の北西部に移行するほか、精密加工の一部を台湾に戻して、産業ロボットを使用する「無人工場」の構想を説明した。

また、同総裁は中国製造業全体の賃上げ傾向に、台湾資本を中国から逆流させるチャンスにさせるべきだと台湾政府に進言した。台湾の製造業の優勢を発揮して、台湾政府は経済貿易特別区を設立して、本土の企業に特別区の優遇を示すべきだと、同総裁は強調した。

台湾中央社通信の報道によると、郭台銘氏は昨年年末から、台湾台北県の土城市に無人工場設置の考えについて、経済部と協議してきた。

台湾経済部幹部の話では、中国大陸の賃上げの影響で、少なくとも3社の電子メーカーは台湾に戻る考えを示していると中央社が報道。

一方、フィナンシャルタイムズの報道によると、8日の株主会議で、郭総裁は、「(中国製造業)の構造改革は避けられない」と述べた。大幅な賃上げ政策について、他社に先駆けた対応を迫られたと説明、中国の賃上げを要求する環境について、「今日では当社は少しばかり急速に成長した」が、「その速度と激しさは一般の想像以上に大きい」と述べた。

約27万人が職住一体で暮らしている自己完結型の「富士康」工場の環境について、職住環境を分離する方法を検討、従業員宿舎を政府に売却し、「(工場の)社会的機能を政府に戻していく」との考えも会議で示した。

今回の中国工場での大幅賃上げによるコスト増について、香港で株式上場する「富士康国際」の陳偉良・総裁は、次の四半期での取引先との価格交渉で、最大限に吸収してもらう考えを示した。

安価な人件費で築いてきた中国の「世界の工場」としての地位が揺らぎ始めている。最近、ホンダ中国部品工場は従業員の賃上げストライキを受け、33%の基本給増給に同意した。それを受け、中国各地の外資系工場で、賃上げを求めるストが相次いで発生している。

(翻訳編集・叶子)
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