抑えて発表の死亡者数・救援物資の分配遅延 被災地のチベット人、北京当局に不信感
【大紀元日本4月20日】19日午前の中国当局の発表によると、青海地震の死者は1944人、行方不明は216人。胡錦濤国家主席は18日、海外訪問中から被災地に飛び、緊急に救援活動にあたることを約束した。一方、現地のチベット人は、実際の死亡者数は1万人以上に達し、損失は当局発表よりはるかに大きいことを指摘する。チベット人の集結による暴動発生を恐れる当局は、現地でのテントの分配を遅らせたため、多くの被災者はいまだに氷点下で夜を明かしているという。青海大地震で奪われたのは多くの命だけではなく、チベット人の北京当局に対する信頼だ。
住職の証言:死亡者は1万人以上
「政府が公表した死亡者数が、私が実際に目にした死亡者数と、なぜこれほどまで差があるのか理解できない」。17日、震源地に近い玉樹県の結古鎮で、寺の住職をするアンウンタンバルンチンさんは、香港紙「明報」の取材に応じてこう語っている。
同住職によると、地震発生から3日間で、寺で処理した遺体は計3400人に上る。処理した遺体の数を登録し、そのデータは、処理の当日、必ず当局に報告しているという。
しかし、当日、「新華社」が発生した死亡者の数字は1124人だった。
同住職によると、この二日間、災害地を訪れたが、実際の死者は8千人から1万人以上に達すると試算する。
結古鎮付近の団結村で、救援物資の分配作業をしている政府幹部は、付近の村では、家屋の大多数が倒壊し、村民の8割にあたる4千人以上が死亡したと話している。
チベット人暴動を恐れて、テントの分配を遅延
被災地は標高約4千メートルで、夜間は氷点下になる。16日夜、被災地にすでに4万枚のテントや、7万7千枚の布団などの物資が届けられたが、被災者の手には渡っていない。現地住民の情報によると、18日の時点で、7割以上の被災者は救援物資を手にしておらず、いまだに街頭や広場で夜を明かしている。
救援活動参加のボランティア、蘇さんは、「テントは被災者に届けられていない。昨日、テントを奪おうとする人がいた。政府が群衆事件の発生を恐れているようだ。テントを今だに分配していないのは、チベット人が集結したら暴動する可能性があるからだと聞いている」と、本紙記者に話した。
蘇さんによると、玉樹県の人口の9割以上がチベット人。2008年3月14日に起きたチベット人抗議事件では、現地のチベット族自治州のうち、玉樹県だけが暴動を起こさなかった。
救援にあたる幹部は、「テントは主に体育館や赤十字が所在するあたりに集中している。周辺地までテントの分配をしていない。ここでも腐敗の現象はかなり深刻で、コネがないとテントは手に入らない」と指摘する。
現地の情報筋によると、被災地に入る主要道路には武装警察による検問が敷かれている。民間のボランティア救援隊は青海省政府の許可を得なければ、被災地入りできない。また、一部の辺鄙な地区には、テントなどの救援物質は一切届けられていないという。
このような環境で、救援活動は難航している。多くの救援者は高山病に苦しんでいるもよう。一人の中国人記者が高山病により死亡したとも伝えられている。
チベット人僧侶:地震は当局の宣伝道具
建物が全壊した結古鎮の技術学校。瓦や砕けた建材を退けながら被害者を探していたチベット人僧侶が、ある死亡者を発見したところ、隣で休んでいた兵士が突然動き出した。兵士は撮影機材を手に入れて撮影し始め、僧侶にカメラを避けろと叫びながら、死亡者の遺体を掘り出す作業をし始めた。
僧侶たちは怒りを抑えながら、お経を唱えて死者の冥福を祈り始めた。「私たちが救出する時、これらの撮影機は回されない。私たちは命を助けようとしているが、彼らはこの悲劇を宣伝道具として利用している」と僧侶のジアーサは、米紙「ニューヨークタイムズ」の記者に話した。
青海大地震を人道とチベット統制の二重危機として、北京当局は緊急対応している。政府報道機関による記事は、被災地のチベット人が政府や兵士に感謝する内容の一辺倒で飾られている。18日に被災地を視察した胡錦濤国家主席に関する報道は、受傷したチベット人の女の子を慰める場面や、「新しい校舎は必ずできる。新しい家は必ずできる」と小学校の黒板に書きながら、家庭を失った孤児と一緒に朗読するシーンが国内で報道された。
現実に直面するチベット人は全く異なる見解を示している。救済にあたる僧侶ジャージャバさんは、「彼らは、この地震の深刻さが世界に知られることを怖がっている」と話す。
17日、救済活動を巡って、軍人たちと僧侶たちの間に論争が発生した。軍人が大型の機械を使って倒壊した建材を掘り出すため、被害者が救出されるチャンスが奪われた。被害者の遺体も破壊してしまっていると僧侶たちは非難する。論争の結果、僧侶たちは廃墟から追い出されてしまった。当局はチベット人の民心を掴むどころか、民心の怒りを買ってばかりいるようだ。