メコン川流域国、干ばつ拡大で中国当局を糾弾

【大紀元日本4月13日】中国西南部の大干ばつによる飲用水不足や農作物の被害が深刻化し、2千万人が生存の危機に晒される中、中国と近隣国との外交にも深刻な問題がもたらされている。中国とメコン川(中国国境内ではランチャン川)を共有する一部の国の農民と漁民、特にタイの漁民は中国国内を流れるメコン川の上流に建設された4ヵ所のダムに対し、猛烈な批判を行っている。

4月初め、影響を受けているミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムはタイで開催されたメコン川サミット会議において、干ばつ等の関連問題の討論を行っている。この会議に参加した中国は、記者会見で、干ばつは自然現象であることを強調した。

史上最低水位に下がったメコン川

現在、世界各地で水資源を分かち合う国同士の政治的緊張が発生しており、タイでは少なくとも1万4千の村が干ばつによる影響を受けている。メコン川を共有する国家間の討論はさらに複雑だ。もしも河川の将来に関する計画に合意が得られるなら、それは各種政体、タイの活力溢れる自由社会、ミャンマー(ビルマ)の軍事独裁、カンボジアの民主独裁およびラオスとベトナムの共産体制が相容れる事を意味する。

ニューヨークタイムズの報道によると、ここ数週間の水資源の深刻な不足により、メコン川の一部区間では船の航行が出来ない状態となっている。川の水位を上げるため、メコン川委員会(MRC)のバード事務局長は中国に対し、ダム放水を要求したと伝えている。MRCは95年、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム政府が設立した諮問機関だ。中国とミャンマーはメンバーに入っていないが、情報交換は承諾している。

「バンコクポスト」によると、昨年末チェンライのメコン川に面した国境の町チェンコンで10年以上メコン川の発展観測を行っているグループ「Chiang Khong Conservation Group」のメンバーJeerasakさんが調査したところ、メコン川の水位はかつてないほど低くなっていたという。河畔に住む人々は漁獲量が減り、飲用水、灌漑、家畜に与える水も不足した状態で、河川内の航行困難は観光や貿易に影響を与えているそうだ。

Jeerasakさんによると、メコン川は枯渇し始めているだけではなく、90年代初めから水位の変動異常も見られるとのことだ。雨が降らないため、メコン川上流の水が制御を受け貯水されている。中国の上流で建設されたダムとこの母なる川の変化は関係があると、Jeerasakさんを含むチェンコンのメコン河畔住民たちは考えている。

先日、タイとラオスの村民200人が仏教儀式を執り行い、メコン川流域を多国籍魚類保護区であると宣言し、水力発電所が作り出す川の生態系へのダメージに注目することを表明した。

小湾ダム」を巡る論争

ニューヨークタイムズの報道によると、タイの環境保護組織「国際河川(International Rivers)」のPianporn Deetesさんは、メコン川は自分たちの漁場であり、食べ物を得、家族を養う場所であると語った。中国のダム建設による漁獲量低下を非難すると同時に、不透明な公共協議や、中国が更なるダム建設を考えていることについても批判している。

一部の環境保護主義者によると、河川の水位低下の原因の一つとして、中国がメコン川の小湾区間に建設したダムが挙げられている。

最近の統計によると、メコン川の上流で、中国国境内にあるランチャン川では、主流で4つの大ダムが、支流では10~20カ所以上の大ダムが建設されており、現在さらに、主流および支流で80か所以上のダムが準備または建設中である。

中国では、92年からランチャン川に建設された漫湾ダムの運転が開始された。03年と08年にはそれぞれ第2、第3のダムである大朝山ダムと景洪ダムが完成。その後09年10月、中国は第4のダム、「小湾ダム」で貯水を開始した。

昨年、「小湾ダム」という水力発電ダムが正式に運行し始めた。同ダムは「三峡ダム」に次ぐ大型水力発電プロジェクトとみなされ、その固定貯水量は54億立方メートルに達し、ランチャン川の年間総流量の7~8%で、長江の年間総流量の10%に相当する。

中国国土計画専門家・王維洛氏(ドイツ在住)によると、泥などがこのダムを埋め尽くさない限り、この54億立方メートルの水は永遠に下流に流れることがない。

これに対し中国側政府職員は、ダムは昨年7月の雨期から貯水を始め、干ばつの到来につれ貯水は停止したと話している。中国当局は下流の2つのダムの資料をメコン川流域の国に譲渡したが、「小湾ダム」の資料は提供していない。

メコン川サミット会議で、ある学者は、駐バンコク中国大使館の政治部領事・姚文氏に、「あなたが自由に発言できないのは分かっている。本当のことを話すと、会議後即免職されるからだ」と話した。

90年代初めにはメコン川流域の浮流土砂と中国のダムは関連していると学者たちは考え始めていた。タイ北部の地方コミュニティや非政府組織は、魚類と水生植物資源の衰退が現地経済と人々の生計に影響を与えているとしている。これにより、河流に住む人々が、これらランチャン川のダムが今回の干ばつを引き起こしたと考えるのはおかしいことではないだろう。

まず、漫湾ダム始動と92~93年のメコン川干ばつは同時に起きており、これほど満足できる説明はないだろう。今回の干ばつは小湾ダムの貯水と一致し、これによる河流の流量低下も同時に発生している。小湾ダムの高さは292メートル。世界で最も高いダムで昨年雨期から貯水を開始している。

深刻化した干ばつは依然として周知の緊急問題だ。しかし最も肝心なデータが差し押さえられている。ニューヨークタイムズは、もし、中国が本当に河流の国々との信頼関係を打ち立てたいのならば、自国のダムが今の干ばつを引き起こしたのではないということを証明すべきであり、小湾ダムの水位データを公表すべきだと指摘した。

(翻訳編集・坂本)
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