モンゴル三千年の遊牧生活:中国当局、わずか十数年で破壊=大紀元時報講演会(上)

【大紀元日本4月12日】春霞などの雅語がつけられた黄砂。遙か昔から存在していた黄砂がこの数十年で有害な汚染物質をもたらす可能性があることを人工衛星画像やフィールドワークなどで実証した星野仏方理学博士(酪農学園大学環境システム学部教授)の講演会が四月十一日、都内で開かれ、モンゴル三千年の遊牧生活がわずか数十年で破壊されたという事実が紹介され、来場者は隣国で起きている自然破壊のスピードの速さと、日本に及ぼす影響に衝撃を受けた。

本紙が主催した講演会「09年中国を見抜く・中共による破壊と迫害の真相」には、星野教授のほか、高峰一工学博士が招かれ、十年を経てもなお中国当局の弾圧が続いている気功修煉「法輪功」問題について、平和的な気功が不当に弾圧された経緯について詳細が明らかにされた。

両氏とも中国出身だが、星野教授はモンゴル族であり、高峰博士は朝鮮族で、周辺民族としての視点から中国が抱える問題を客観的に捉えている。今回は、星野教授の講演についてレポートする。

リモートセンシングとフィールドワーク

星野教授は、人工衛星や航空機などから取得した画像データなどを解析することで地表面の状況を観測するリモートセンシングの手法を使うだけでなく、故郷の内モンゴルで二千五百キロに渡るフィールドワークを敢行するなど、空と陸の両面の調査・研究であることから、その実証性と説得力はひときわ高い。

これまでに尖閣諸島の魚釣島のヤギの生態系変化、アジアの環境・文化と情報に関する総合研究など、幅広い領域に調査を進めている。

講演する星野教授(大紀元)

砂漠化は人災

星野教授によると、内モンゴルは本来草原が広がる自然の恵みの豊かな地域だが、砂漠化が進んでいることがこの十年の研究・調査からわかり、それは天災というよりは、中国当局の政策の誤りによる人災であるという。

ゴビ砂漠で発生する砂嵐は、「砂塵暴」と呼ばれ、家屋や自動車のボンネットにも大きな傷をつけるほど破壊力を持つという。

この莫大なエネルギーで上空に吹き上げられた黄砂が従来、西日本を中心に降り注いでいたが、砂漠化の北上により北海道や東北、関東にまで黄砂が降り注いでいるという。

しかも、中国の西部辺境地帯には、これまで東部沿岸にあった工場などが移され、大気汚染や廃棄物などから有害物質が発生し、汚染が著しいという。

この汚染物質が黄砂の粒子に付着し、日本に到達する、いわゆる越境汚染の可能性が高くなっているという。

内モンゴルの砂漠化が急激に進んだ原因は、中国当局の政策にある。定住化と生産性を高めるために、柵や囲いなどを設置し、放牧を人為的に調整しようとしたが、柵があるために、自由に移動できなくなったヤギの群れは、同じ場所を掘り起こし、二度と草が生えなくしてしまった。

さらに、生産性をあげようと、頭数を増やしたことが、過放牧となり被害を大きくした。

また、定住化による農作業も砂漠化を促進させた。内モンゴルは草が生える土壌の層が数センチしかなく、耕すとすぐに砂の層が現れる。

モンゴルの長老からは代々、「草原を耕すな」と伝えられてきたが、中国当局の強制的な定住化により、内モンゴルの人々は矛盾を感じながらも、放牧という生きる術を失ったからには、農作業をせざるを得なかった。

モンゴルの自然の均衡を保っていた放牧生活は三千年以上も続いていたが、中国当局はそれをわずか数十年で破壊してしまったといえる。

生々しい汚染の実態(星野教授のスライドより)

東部沿岸地域にあった工場が西部へ移され、汚染物質が黄砂によって拡散するという(星野教授のスライドより)

(記者・佐藤)
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