続・婚姻をないがしろにした報い -改正国籍法が生み出す新たな外国人差別-
【大紀元日本12月20日】 (第3段落に訂正)去る12月12日に改正された国籍法について、今回は第三条1項の改正により、同法で定めれられている帰化との整合性が崩れ、同法が外国人に対して新たな差別を行うものとなっていることを指摘したい。
日本国籍の父と日本以外の国の国籍の母との間に生まれた嫡出でない子について考えよう。
日本の戸籍法によると、嫡出でない子の出生の届出は母がしなければならないが、母は日本国民ではないから、日本の戸籍法によってその子に日本国籍を与えることはできない。その子の母が、自分が生んだ子が、今はまだ認知されていないけれども将来日本国籍の父に認知されることを信じて、日本の戸籍法に定められている国籍を留保する手続きと同様な自国の法律に定める手続きによってその子の日本国籍を留保していない限り、その生まれた子は日本国籍を留保する法的根拠を有していない。従ってその子は日本国民ではないので、その子が日本国籍を取得するには、改正前の国籍法では第四条に従って帰化申請を行い、法務大臣の許可を得る必要があった。この手続きは国籍法が外国人に対して平等に一律に要求しているものである。
ところが改正後の国籍法では、第三条2項により、日本国籍の父によって認知された嫡出でない子は、届け出た時点で外国人であるにもかかわらず、許可・不許可の判断もなく日本の国籍を取得する。つまり、国籍法第三条2項は今回の改正によって日本国籍を得ることを望む外国人に対して生まれに基づいて差別的な扱いを行うよう日本政府に指示する条文となってしまったのである。
そこで、改正後の国籍法第三条2項と第四条が並存することは法の下の平等をうたう日本国憲法に違反しているから、帰化手続きを廃止し、外国人はすべて届出だけで日本国籍を取得できるように、さらなる改正が必要である、という意見も出てくるかもしれない。
この意見については、「日本国憲法第十四条にある『法の下に平等』とは条文に『すべて国民は、法の下に平等であつて』とあるとおり、日本国民に対してのみ適用されるものであり、外国人には適用されない。」と反論する方もおられるにちがいない。しかし、最高裁判所の裁判官たちは今回の国籍法改正のきっかけとなった判決文において、日本国憲法が定める法の下の平等の適用は日本国民のみに限られるものではないという解釈を示したのであるから、外国人に対して生まれ(門地)に基づいて差別的に扱う改正国籍法が日本国憲法に反するという主張はもはや根拠なきものではない。
このような新たな差別は、日本国憲法の条文を読み違えた判決文を出した最高裁判所裁判官と、その判決をそのまま条文にすればよいと安易に考え、単に第三条1項から婚姻要件をはずしただけの拙作な改正国籍法案を成立させた国会議員のコラボレーションの成果である。
ちなみに最高裁が救済を願った、冒頭の例に挙げた嫡出でない子に対する配慮は、わざわざ第三条1項の婚姻要件を違憲であると判断しなくても、改正前の国籍法に基づいて実施可能である。
たとえば裁判官はその嫡出でない子に帰化申請を行わせるようにする。その子が帰化申請をおこなったら、法務大臣は許可を与えるにあたり、まずその子が日本国籍の父の子であること、また決して人身売買や不法な日本国籍取得をもくろんだものでないことを調査、確認する。調査期間中、その子には「親に扶養され、教育を受けさせられること」、「就労は認めない」などの活動内容を具体的に定めて「特定活動」の在留資格を与え、その子に関する調査が終わり、帰化の許可・不許可の結論がでるまでこの在留資格を発給しつづければよい。
日本国籍はどのような人に与えられるべきかを日本国民の間でもっと議論し、世論形成ができるだけの議論をした上で国籍法を改正するべきであった。それまでの間はとりあえず国籍法を今回の改正前のものに戻すべきであると筆者は考える。