中国食品安全問題の根源=何清漣
【大紀元日本10月1日】中国の有毒粉ミルク事件が拡大する中、各国で発覚した中国関連の有毒乳製品のリストも増え続けている。
外国人はこの種の信用を破壊する「中国製造」に深く困惑し、思わずこのような疑問を発している、「中国人は道徳の基盤を喪失したのか」。
「中国製造」の問題は実は道徳だけの問題ではない。一国の商品、同国の技術製造の水準を示すほか、その他の各種の社会・文化の要素をも反映している。例えば、商品の価格は同国の労働力の給料水準と福利厚生を反映、商品の品質はこの国の商業信用、信用度の土台である道徳基準および同国の社会制度を表す。
中国の食品安全問題は表面上、産業界で生じる経済問題とみなされるが、その実質は中国の政治制度の腐敗、経済倫理の異変、自然生態環境の持続的悪化が育てた「有毒の果実」である。
まず、その有毒食品の源を探ってみよう。
その一はいわゆる「高科学技術手法」
例えば、通常の農業生産において大量の農薬と化学肥料を使用。通常の家畜養殖において、普遍的に抗生物質とホルモンを大量投与。淡水または海水の養殖業で育った水産品は各種の汚染水に侵食される。
その二は食品の加工過程
コストを節約するために、企業は各種の食品添加剤と化学物質を大量に使用。たんぱく質の含有量をごまかすためにミルクにメラミンを入れるのは一つの事例に過ぎない。
その三は中国の深刻な環境汚染
国家環境保護局の統計によると、現在、カドミウム、ヒ素、クロム、鉛などに汚染された耕地面積は2000万ヘクタール、耕地総面積の五分の一である。重金属に汚染される食糧は全国で年間1200万トンに上り、すべて消費者のお腹に入り、一部は輸出されている。
機能しない国家監督管理
有毒商品が広範に氾濫する状況において、政府の監督管理能力は食品の安全を保障する最後のガードである・・・。なぜならば、中国は強い政府と弱い国民が共存する国家である。民間社会は監督管理の権限もなければその力もない。しかし、関連の食品安全問題では、中国当局の対応は最低限の政治責任を欠いている。
第一、民族主義(愛国主義)を乱用して国民を煽ぎ、政権と企業の責任を回避する
例えば、2007年に中国製品の欠陥問題が多発、各国が中国製品の品質問題に抗議の声を上げた際、中国当局は国内では報道規制を一層強化して民衆に真の情報が伝わるのを阻止した。その一方で、国際社会の抗議を、海外の中国反対の勢力が「中国製品安全脅威論を捏造している」と決め付け、「その目的は、中国製品を妖怪化し、経済上わが国の輸出貿易に深い影響を与え、政治上わが国の国際イメージを破壊することである」とした(国家質検総局の李長江・局長の発言=2007年7月17日)。このような状況において、玩具製造業者が破産に直面しても、各国が抗議する原因は玩具のペイントに鉛が含有している事実が完全に無視され、反省されることもない。すなわち、政府は国内企業に「民族主義」という保護カードを提供した。その結果、鉛含有の玩具は他国の児童を害し、今もなお中国本土の児童を害し続けている。
第二、国家の検査免除制度を濫用。中国当局は「国家検査免除制度」を設けている。
一定の市場規模を有する企業について、その製品が連続して三度、省レベル以上の「質量検査機構」の検査に合格し、中央の「国家質検総局」の許可を得れば、検査免除の製品となる。その有効期限は3年間。すなわち、それらの企業は3年の間に、製品の品質を自主管理する。中国の政治制度が高度に腐敗しているのは周知の事実。企業が「検査免除」の許可を獲得するまでには、5つの段階をクリアしなくてはならない。その過程で実権を握っている幹部はまさに絶好の汚職機会を得ている。
安徽省阜陽地区で2004年、たんぱく質含有量が低い粉ミルクを摂取した乳児は栄養不良により頭が異様に腫れ、死亡する事件が相次ぎ発生した。その後の当局の調査により、「三鹿粉ミルク」はすでに品質不良であることが判明した。しかし、同社は、政府との強力なコネクションを利用し懲罰を逃れた。それだけに留まらず、その後、「国家質検総局」が同社の粉ミルクを検査免除のブランド銘柄として消費者に推薦した。検査免除という盾を得た同社は、製品にメラミンを投与し始め、そして、今回の有毒粉ミルク事件の導火線となった。
第三、深刻に汚染されている畑の耕作を容認、蝕まれる国民の健康を無視。
さらに民衆の怒りを誘ったのは、当局は食品の安全問題を根源から解決するのではなく、2005年から「国務院中央国家機関食品特別供給センター」を設立し、中央政府の幹部に安全な食品を提供するため、全国各地で専門の生産・養殖基地を作った。
中国の有毒食品は上記のように、政府、市場、生産者の三者の間で悪循環を繰り返し助長し続け、今日に至って、すでに中国産業界全体を覆う「巨大な樹」となった。加担する数人の幹部を懲罰して検査免除の許可の剥奪を宣言するのは表面的な解決策に過ぎず、食品の安全問題を根底から改善するのは不可能である。