宴の後
【大紀元日本8月29日】世界を沸かせた北京オリンピックが終わった。これほどまでに話題を呼んだオリンピックも珍しい。壮麗を極めた開会式、中国の金メダルラッシュ、厳重を極めた警備体制や報道規制、観客動員、果ては可愛い歌手の口パクや少数民族の児童が漢民族だったこと等、話題の多い大会であった。参加した米国をはじめ80余国の元首や首脳すら厳しい指摘を躊躇した位だから今やスポーツ貴族のサロンとなり利権の巣窟と化したIOCが中国当局の強引な手法に対し傍観を決め込んだというのも肯けるというものである。諸外国首脳もIOCもベルリンオリンピックの轍を踏み開催国の国威高揚強行の前には為すすべもなかったというのが真相であろう。
それでも中国人民にとっては勿論、行事として見る限りオリンピックは成功したようだ。開会式や閉会式におけるNHKの放映でも解説者が一様に讃辞や驚きを伝えるのみで、華やかさの陰の部分については多少の論評もないではなかったが、所詮つけ足しの扱いだった。結果として中国人の愛国心やプライドも満たされたろうし阿片戦争以来の屈辱も払拭出来たのではなかろうか。華々しく自他共に認める大国としての復活を世界に告げる一大イベントであり、中国人民というより文字通り「中国共産党のための中国共産党による中国共産党の行事」ではあった。きっと中南海の領導達も中国共産党独裁の正当性と威光さを世界に認知させたとして感慨深いものがあろう。
さりながら、オリンピックが終わると現実の世界が待っている。あらゆる資源を集中し膨大なコストとエネルギーを消費した北京オリンピックが終われば、以前日本や韓国が経験したオリンピック後の不況が起こらないという保証があるのだろうか。折悪しくサブプライムローンに端を発した問題は今や世界経済に波及し、輸出依存度の異常に高い中国経済、原油価格の高騰はもとより根拠のないまま先進国経済とのデカップリングの故に悪影響を受けないとされた株式市場をはじめ明らかに過熱状態にある不動産市場の低迷、都市部と地方の所得格差、三農問題、全土に蔓延する官僚の汚職、公害問題、少数民族対策等喫緊の重要課題に対し果たして矢継ぎ早に有効な対策を打てるのだろうか?民主主義とは全く異なる強圧政治、法治にも程遠く、社会の隅々まで蔓延している汚職体質、何でも有りの世相をどうやって是正しようとするのか、富厚な大地も今や飲料水に事欠く程、公害も限度に達しているというのに。