消えた都:タクラマカン砂漠の伝説

【大紀元日本3月28日】中国・新疆ウイグル自治区に位置するタクラマカン砂漠は、世界第2の面積を有する広大な砂漠だ。日中は摂氏50度、夜は氷点下10度にもなり、気候は厳しく、生命を寄せ付けない、まさに「死の砂漠」である。

中国には次のような言い伝えがある。遥か昔、ここは砂漠ではなく、豊かで美しい都だった。都の住民は、贅沢な暮らしを送り、ほしいままに散財して、快楽の日々を送っていた。次第に、人々は伝統文化を失っていき、困っている人を助けるというような、思いやりの心も忘れていった。贅沢になればなるほど、けちで、貪欲で、冷酷になっていった。

ある日、2人の天使が命を受けて、人間界に降りてきた。人間の道徳と、彼らの生活状況を見るためだ。天使たちは、乞食に変身し、都に入って物乞いをしながら人間を観察することにした。すると驚いた事に、金持ちの人間はよりケチであり、決して天使たちに金銭も食べ物も与えることがなかった。人々は、乞食たちをぞんざいに扱い、物乞いを続ける彼らを捕らえて古びた小屋に監禁した。

その夜、都のリーダーたちが集まって、捕らえた乞食にどのような罰を与えるか相談した。彼らは、様々な拷問のアイデアを出した。彼らが編み出した拷問方法は、どれも残酷で悪質だった。彼らは、地球上の全ての娯楽に飽きていたのだ。乞食たちを虐めることでしか、新たな興奮や快楽を得ることができなくなっていた。そして、彼らは残虐な方法で乞食たちに拷問を加えることに決めた。

都に住むある若者が乞食の噂を聞きつけ、小屋にやってきた。リーダーたちが拷問すると聞いて、乞食たちの身の上が心配だったのだ。若者は、リーダーたちに見つかるのを覚悟で小屋に忍び込み、乞食たちの縄を解いてやった。若者は、リーダーたちが今晩、乞食たちにとても残虐な拷問を加える計画をたてているから、早く逃げるようにと告げた。

若者からその話を聞いた天使たちは、心が引き裂かれる思いだった。既に人間の心を失ったリーダーたちは、天から抹殺されるだろうし、恐ろしい天罰がこの都にも降りかかってくることが分かっていたからである。乞食たちは、都に危険が迫っているから、早く逃げるようにと若者に忠告した。彼らは乞食ではなく、実は天使なのだと悟った若者は、ひざまずいて都の人々を助けてくれるように懇願した。善は報われ、悪は応報に遭う。これは、天の掟であり、天使たちにも変えることはできなかった。天使たちはため息をつき、消えてしまった。

都の人々を助けるため、若者は夜中、家々のドアをたたいて都に危険が迫っていることを伝えた。彼は早く都から逃げるようにと叫んだが、人々は全く相手にしなかった。彼らは既に贅沢な暮らしに慣れており、豊かな都を離れて苦しい生活を送ることなど考えられなかった。多くの人は、夜中に起こされたことに腹を立て、若者を激しく罵った。

時間は迫っていた。若者は仕方なく、家族を連れて急いで逃げた。彼らは、後ろを振り返ることもせず、でき得る限り遠くへと逃げた。徐々に、都は黄砂に飲み込まれ、奥深く沈んでいった。遠い所まで逃げた若者が、一休みしようと後ろを振り返ると、そこには遥かかなたへと続く砂漠があるだけだった。タクラマカン、それは古代語で「消えた都」を意味するという。

(正見ネットより転載)

(翻訳・田中)

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