【大紀元日本7月2日】外苑を少し離れ、赤坂見附界隈の外堀通り「日枝神社」の近辺を流していると、昼ともなれば、タイトなビジネス・スーツに身を固めて颯爽と闊歩する日本のビジネスウーマンの姿が目立つ。ここは、外資系の会社が立ち並ぶオフィス街であるので、外人ビジネスマンの他、このような留学経験のあるバイリンガルな日本女性がもてはやされる。その姿は、夏の強い日差しにも映えて、まぶしいくらいだ。
私が、赤坂エクセルホテルの近辺で拾った客は、そのような女性の一人だ。既に五十は過ぎているであろうが、長身で均整の取れた体躯と色白で秀麗な顔立ち、携帯電話から聞こえてくる英会話、それは典型的な「留学帰国組」の日本的美人だ。乗り込んですぐに、車内に息苦しいほどの色気が充満している。しかし、どことなく眉間が曇っている。何か憂いを含んでいるのであろうか、「青山までお願いします・・・」というので、地下鉄の赤坂見附駅を睨みながら国道246に入った。
豊川稲荷附近の信号待ちで、例によって車内の時間を短縮する。「・・・実は・・私、最近になって中国の気功を始めたんです・・・」女性客が切り出す。「いいじゃないですか、僕も帰国者ですけど、本国では相当に修行したんですよ・・あれは、体にもいいんですよ・・」「私も最初そう思って、心身をリフレッシュするために始めたのが動機なのですが・・いつのまにか、先生とデキテシマッテ・・・」「いいじゃないですか、まだお若いようですし、僕だって外国人の彼女と楽しい時間を送りたいですよ・・羨ましい限りだ・・」「・・・私も最初はそうでした・・けれど、最近になって私のお腹の中から先生の声が聞こえるようになって・・・自分の魂が日に日に占領されるようで、怖いんです・・・」、何!?それは明らかにオカシイ、何かの方術にかかっているか、それとも・・・
私はさらに聞き込んだ。「僕は、中国の山中で座り込んだ人間です。よかったら、詳しく聞かせてもらえませんか?」・・・驚いたことに、その中国人だという気功の教師は、通り一遍の気功の型をこの女性に習わせた後、奥の小部屋で情交しているというのだ。しかも、こういった個人教授の後、きまって道場近辺の酒場で、毎晩のように酒宴を繰り返しているという。「私、もうそれが毎日の生きがいになってしまっていて、先生から離れようとしても離れられないのです・・」女性はうなだれた。しかも、このような女性が何人も練習生として通っているのだという。これは、明らかな邪法だ。しかも男女双修の騙り、尋常な術ではない。
水も滴るようないい男だというので、私はその女性にせがみ、道場まで案内してもらうことにした。その道場は、練馬区石神井公園近くのマンションの一室にあった。202号室「中国陰陽正伝気功・楊大偉」と表札が掛かっているのを見て、私は思わず失笑してしまった。「・・・なるほど、陰陽には違いない」。女性に目配せしてインターフォンを押させる。「すみません・・練習生の松本ですけど」。しばらくして三十歳位の男性の声が聞こえた。「ああ、松本さん。その横の方はどなた?」「私の中国の友人ですけど」という具合に首尾よく中に入ることができた。
はたしてこの気功教師・楊は、なるほど長身で甘いマスク、中国服に身を固めた水も滴るいい中国男だ。何か、眼から愁いを含んだ光線を婦人に投げかける。これでは、外国人女性もひとたまりもないだろう。「お客さんも来たので、ジャスミン茶を煎れましょうか・・・」それにしてもこの男、全ての立ち居振る舞いに何かしら含みがあるというか、雰囲気のある俳優のような奴だ。雰囲気作りも巧みだ。すると、程なくしてさっきからあれほど憂いを含んでいた松本さんが、いつのまにやら眼を潤ませ楊と楽しそうに会話を楽しんでいる。すっかり、術中に嵌ったのか・・私は蚊帳の外だ。
私は、出されたジャスミン茶を一口のみ、二人の会話を傍で眺めながら、意念功を使って楊の脳裏に接触を試みた。「おい!楊、おまえのやっていることは、明らかな法則違反だ。外国人女性をたぶらかすのは、もうよせ。それは、男女双修の亜流だろう?」すると楊のこめかみが微かに動揺したのが観察できた。「おまえ、日本人女性の子宮に自分の霊体を植えつけて、精気を吸い取っているだろう・・・中国房中術の亜流だ・・魂を束縛するのは、神でもできない所業だぞ・・俺が引導を渡してやる・・・」すると楊の眉間に深刻な皺が寄ったと思うと、奥の「愛の小部屋」から霊的な黒豹が飛び出してきた。
「・・なるほど、こんな番犬を飼っていたのか・・」それは、女性練習生との淫行を通して、邪気で練った邪霊の一種だ。私は、すかさず如意棒を取り出すと、したたかにその黒豹の眉間を突いてやった。すると、それは可愛い黒猫の子に分かれ、「ミャー」と鳴きながら四散していった。楊はこれまでと思い知ったのか、「ちょっと買い物をしてきます・・」と中座しようとした。その刹那、私は如意棒を下段に構えて、楊の金的をしたたかに打撃した。
楊は、「うぅ・・」と呻くと、そのまま白目を剥き、椅子に崩れ落ちて、卓に突っ伏した。すると、楊の下腹部から七色の毒蛇が溢れ出し、入れ違うように松本さんの子宮から、楊の分身が出てきた。私は、それを見逃さずに掴み取ると、元神ごと握りつぶした。しばらくして、楊が面をあげると、それは果たして白髪の顔面に皺が深く刻まれた前歯の抜け落ちた老人のように変貌していた。
松本さんは、一瞬のことなので、訳がわからず呆然として立ちすくんでいる。「みて下さい・・これが、この男の正体ですよ・・・とうに100歳は過ぎています。若いように見えていたのは、日本人女性の子宮から精気を吸い取っていたからなんです・・さぁ、もうわかったら、こんな道場は止めましょう・・・」。私は、松本さんを促すと、楊の道場を後にした・・・その後、風の便りで楊の道場が閉鎖されたとの話を聞いたが、楊本人のその後の消息は、ようとして知れない。
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