郭軍:中国の躍進は災難か、それともチャンスか

【大紀元日本7月14日】米国及びヨーロッパが中近東のテロ組織に注意を集中しているとき、中国は往々にして注目の的から外される。しかし、中共は軍事及び経済において力がついてきたここ数年、掲題の内容について、国際社会が考えるようになった。中国が米国及びヨーロッパに対しての本当の意図は何か、西側諸国と中共の関係の行方はどうなるかを考えるようになったのだ。

 私が大学を卒業した頃、たまたま卒業パーティ会場に世界地図が飾ってあった。中国出版の世界地図は、勿論中国を中心に配置されているのだ。ヨーロッパ・アジア大陸は中国の左側に、太平洋は右側にある。そして、大西洋は世界の中心からか遠く離れた両端に位置し、米国及びヨーロッパは左右両サイドにあるように作られているのだ。

 当時、西洋の哲学を相当に研究しているドイツ語学科のある卒業生が、パーティの最中に突然演説を始めた。彼は箸で北京を指し、「北京を円心として、北京からハワイまでの距離を半径にしてできた円は我々の代が築かなければならない中華帝国だ」と発表した。彼の発言のあとに卒業生らの拍手が止まなかった。それは1985年だった。当時の中国の大学生は最も西側寄りだと言われていた。

 だから、米国9・11テロ事件が起こったとき、米国のシャトル・コロンビア号が空中で爆発したとき、中国の若者らが歓声を上げたことに対して、私は全くおかしいとは思わなかった。何故なら、米国はまさにその「中華帝国」領域内の主な障害物だから。

 強権が一つ躍進すれば、軍事、経済などの面を含み、実質上は国際社会に於ける新たな権力配分と関わり、巨大な災難を引き起こす可能性が高い。過去二千年余りの世界歴史に於いて見ても、そのような結果があった。ヨーロッパは前の世紀で、既に痛ましい教訓があったのだ。

 勿論、世界は発展して今日に至って、強権の躍進は必ずしもこのような災難をもたらすとは限らない。しかし、それには非常に重要な前提条件を必要とし、主に二つある。第一、国際社会が相互の協力を基にしていることであり、対抗するのではないこと。そして、衝突に対して、寛容の心をもって理解しあうことであって、激しく争うのではないこと。第二、新に躍進した強権は外部の圧力の下、自我をコントロールし、協力し合う方法によって自国の国際地位を築くことである。

 私は特に第二の要素がより重要であると思う。

 また、今の国際社会はまさにこのような局面に直面しているのだ。中国は躍進しつつあるが、先ほど言及したように、中共は平和的に世界中の国々と協力し合おうとしているだろうか。

 この問題を分析するのに先ずここ50年、中国社会においての重要で根本的な変化を知らなければならない。共産主義理論は十七、十八世紀の幾つかの科学原理に基づいている。その内の一つは進化論である。進化論の核心が競争及び適者生存の法則だ。中国共産党が旧ソ連から取り入れた専制制度はこの理論をさらに極めたのだ。彼等は歴史の発展動力が階級闘争であり、プロレタリア階級がブルジョアジーを消滅しなければ、共産主義を築き上げられないと主張している。

 故に、共産党はある謬論を作り出した。それが、恨みを通じなければ愛に到達できず、戦争を通じなければ平和を得ることができず、悪行を通じなければ物事の素晴らしさを知ることができないと言うのだ。

 しかし、恨みと闘争を尊ぶ中共政権は平和的に躍進を遂げることができるのか?

 中国人は悠久の歴史を持つことが自慢である。中国の歴史において、皇帝は即位する前までは平和で寛容な振る舞いだったが、即位後は暴虐に変貌してしまうような教訓が多くあった。それは、皇帝の権力は誰の制約も受けないからだ。だから、中国人は人を判断する際、その人が絶対優勢にあるとき、弱者に対する態度を見るのだ。つまり、例えば、警察が穏和で礼儀正しいかどうかが重要ではなく、ある程度乱暴なことをしても処罰を受けることがないとわかるとき、婦女や子供のような弱い者に対して、どう対処するかは重要であるのだ。

 これと同様な見方で中共を分析して見よう。この場合、人権状況が非常に重要である。自国民を迫害する政権は、外部の衝突に対して平和的に対処することができるのか?

 中国の地下キリスト教会に対する中国政府の迫害を専門的に調査する委員会が米国にある。創設者の李世雄氏は幼少の頃から強制労働収容所で過ごしてきた。李氏の調査資料によれば、過去5年間において、中国政府に逮捕され、迫害によって死亡したクリスチャンが二万人を超えている。

 1999年中共が法輪功を迫害し始めて以来、5年が経ったが、既に2,000人あまりの人が迫害されて死亡した。多くの人は何故中共が法輪功だけを迫害し、その他の宗教や気功団体に対して、迫害を加えないのかと疑問を持っている。実は李世雄氏の調査結果はこの疑問に対して答えたのだ。カトリック教、キリスト教を含めて、政府側が制定した教会でなければ、一切禁止されているのだ。中国政府に禁止されているのは十四の気功団体にのぼり、その他仏教も禁止されている。チベットのラマ教と寺院はご周知の通りであり、中国西部のイスラム教も同様に深刻な状況にあるのだ。

 宗教信仰に対する迫害は、中国のあらゆる人権問題の一つに過ぎないのだ。中国経済の発展に伴ったものは、農民が耕地を失い、大量の労働者が失業(下崗)したことであり、官吏及び企業主が成金になったと同時に、人々が社会保障を失ったのである。中国へ旅行すれば豪華な高層ビルの群を目にするが、しかし、元々そこに住んでいた住民はどこへ行ったのか?実は、上海の弁護士・鄭恩寵氏が、これら立ち退きのために追い出された住民達の法律問題を扱っていたが、結局、弁護士の免許証が取り上げられ、3年間の懲役に処された。罪名は国家機密を漏らしたことであった。

 現在の中国のギニ係数は0.49で、世界で二位を占めているもっとも貧富の差の激しい国である。多くの金持ちの中国人がヨーロッパで豪遊し、物を買いあさっている時、私たちはそれらのお金がどこから来たのかを考えたことはあるのか?

 世界の人々は中国国内の状況を知らないし、あるいは関心がないかもしれない。

 中国の経済発展は粗放型である。中国は一米ドルのGDPを生産するごとに、エネルギー及び原料の消費において、米国より3倍高く、ヨーロッパより7倍高く、日本より約10倍高くなるのだ。このままの速度で進めば、15年後、中国は世界中の石油の半分を消費し、50%の鋼鉄等の有色金属資源を消費することになるのだ。これらの資源は国際市場から購入しなければならない。

 ここでよく似た物語があることに気づかないのか。十九世紀及び二十世紀前半においてのドイツの躍進は、似たような過程があったのではないだろうか。

 躍進しつつある新しい強権国に対して、全世界の国々は十分に心構えをしているのか?その国について本当にわかっているのか?未来に起こりうる状況を予知しているのか?大紀元グループは、昨年年末に社説のシリーズをまとめ、『九評共産党』、即ち中国共産党についての九つの論評を出した。既に幾つかの言語に翻訳された。現在中国の政権を握っている者や中国社会の現状を知るには、大きく役立つものなので、是非ご一読頂きたい。

 さらに、九つの文章が発表されてから、中国で共産党を脱党するブームを引き起こし、既に二百万人以上の人が共産党及び関連組織を脱党することを表明した。民衆が自ら反省し、自発的に脱党した運動であり、重大な意義を持つのだ。二百万人が恐怖と威嚇の下に、恨みと闘争から離れ、懺悔そして、善と寛容を選んだのだ。これこそが中国の希望であり、世界の希望でもあるのだ。

 共産党を脱党するブームは中国式ベルリンの壁が崩壊するシグナルである。中共内部が解体しつつあるのだ。しかし、中共は脱党の危機及び経済危機から逃れるために、またも常軌を逸した行動をとる可能性がある。これは全世界の国々と人々が警戒すべきことである。また、同時に脱党した膨大な数の中国国内の人々の基本人権を守る必要があり、中国の民衆に脱党できる自由選択権を与えるべきだ。

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