腰痛・体のこわばりの原因は「筋膜」だった 1分でできるほぐし方
ジムへ行くと、見事な筋肉を持ちながらも、動きがぎこちなく硬い人をよく見かけます。一方で、何十年もヨガを続けている人の中には、高度なポーズを難なくこなしながら、それでも慢性的な腰痛に悩まされている人もいます。
この一見矛盾した現象は、なぜ起こるのでしょうか。
健康教育団体「Intelligence of Body」の創設者であり、脊椎健康コーチでもあるドラゴン・チェン氏によると、その答えは全身をつないでいるにもかかわらず、あまり理解されていない組織「筋膜」にあることが多いといいます。
チェン氏は新唐人テレビの番組『Health 1+1』で、体のこわばり、痛み、可動域の制限、慢性的な痛みなど、多くの一般的な不調は、筋膜ネットワークの機能異常に起因している可能性があると語りました。
筋膜――体を支える「隠れた」システム
「豚足や鶏の脚を見てみてください。皮をはぐと、薄い白い膜が見えます。それが筋膜です」とチェン氏は説明しています。
体内の組織にはそれぞれ膜があります。骨には骨膜、腱には腱鞘、筋肉には筋膜、神経には保護膜があります。しかし、筋膜はそれらとは異なり、全身を一つにつなぐ連続したネットワークを形成しています。
これは、乾燥したヘチマの繊維状の網目や、ミカンの房を仕切る薄い膜のように、全身の臓器や組織を包み込み支えるネットのようなものだと考えると分かりやすいでしょう。ある部位の筋膜が硬くなったり、位置がずれたりすると、その影響は筋膜ネットワーク全体へ広がる可能性があります。
そのため、膝や肩、腰に痛みがあっても、必ずしもその場所自体が原因とは限りません。本当の原因は、筋膜ネットワークの別の場所にあるアンバランスかもしれないのです。
筋力と柔軟性のバランス
健康な筋膜を保つには、動きやすさ(可動性)と安定性のバランスが重要です。
筋力トレーニングを中心に行う人は関節の安定性には優れていても可動性が不足しがちであり、逆に長年ヨガを続けている人は可動性は高いものの、安定性が十分ではない場合があるとチェン氏は述べています。
また、筋膜を硬くし、水分を失わせる大きな原因の一つが長時間の座位です。スマートフォンやデスクに向かって前かがみの姿勢で何時間も過ごすと、体を動かす機会が減ると、筋膜の潤滑性や弾力性が失われ、炎症を引き起こす可能性があります。
筋膜は感情にも影響を与える可能性がある
筋膜は体の機能だけでなく、私たちの感情とも密接な関係があるとされています。
研究によると、筋膜には2億5,000万個以上の神経終末が存在し、体の中でも特に感覚が豊富な組織の一つです。チェン氏は筋膜を「感情の器官」と表現しています。
姿勢は動きだけでなく、気分にも影響を与える可能性があります。
例えば、頭を手で支えながら前かがみに座る姿勢では、疲労感や悲しみ、孤独感を感じやすくなることがあります。一方、ヨガの戦士のポーズのように胸を張ってまっすぐ立つ姿勢は、自信や活力を高める助けになる可能性があります。
筋膜の緊張を体感する3つの簡単なテスト
筋膜の緊張が体にどのような影響を与えるかを体感するために、次の3つの簡単なテストを試してみましょう。
1. 呼吸テスト
背中を丸めて猫背になり、意図的に姿勢を崩してみると、深呼吸がしづらくなり、胸が締め付けられるような感覚を覚えるでしょう。
一方で、「身長を測られている」とイメージしながら、背骨を上へと優しく引き伸ばすようにすると、呼吸はすぐに自然で楽になります。
「良い呼吸は良い姿勢から生まれます」とチェン氏は言います。
2. 可動域テスト
姿勢が崩れた状態では、首を回したり体をひねったりすると、動きが制限され、引っ掛かるような硬さを感じやすくなります。
反対に、背筋を伸ばした姿勢を保つと、関節が筋膜ネットワークの中で浮いているような感覚になり、椎間関節への圧迫を招くことなく、可動域がすぐに広がります。
3. 押すテスト
姿勢が崩れている状態では、他人に軽く押されるだけで体勢を崩しやすくなります。
一方、「天地の間にまっすぐ立っている」とイメージすると、特別に力を入れたり抵抗したりしなくても、体は安定し、しっかりと立てるようになります。
これは、筋膜の張力ネットワークが体の安定性を維持するうえで重要な役割を果たしていることを示しています。
硬くなった背中をほぐす1分間のエクササイズ
腰の張りや朝の体のこわばりに悩む人は少なくありません。その原因は、背中の筋膜の可動性が低下していることにある場合が多いといいます。
チェン氏が勧めるのは、「ロールダウン・ロールアップ」と呼ばれるシンプルで効果的な動きです。
この運動は背中を伸ばすだけでなく、固有受容感覚(自分の体の位置や動きを感じ取る感覚)を刺激することで、機能が低下した筋膜の回復も促します。
やり方
1. ロールダウン
お尻を後ろへ引きながら、巻物がほどけるようなイメージで、体を上から一節ずつゆっくりと前へ倒します。頭は完全に脱力して床の方向へ垂らします。背中はリラックスさせ、無理に伸ばそうとしないでください。背中全体、特に腰がゆっくりと伸び、広がっていく感覚を意識しましょう。
2. 重心を移動する
前へ倒していく途中で、体重を意識的につま先の付け根へ移し、かかとを少し浮かせます。このわずかな不安定さが感覚系や固有受容神経を効果的に刺激します。
3. ロールアップ
膝を軽く曲げたまま、腰から順番に一節ずつゆっくりと体を起こしていきます。腰椎、胸椎、上半身の順に起こし、最後に頭を持ち上げます。
チェン氏は毎朝起床後に、このロールダウン・ロールアップを行っています。背中の筋膜の滑りが悪くなることが、痛みやこわばりの大きな原因だからです。
この「力を入れずに行える」リリース法と、軽いアンバランストレーニングを組み合わせることで、腰の筋膜の健康回復に効果が期待できるといいます。
強すぎるマッサージは筋膜を傷つけることがある
筋膜の硬さや痛みは、長時間座り続ける生活と深く関係しています。
長距離ドライバーやデスクワーカーのように座っている時間が長い人では、股関節を曲げた姿勢(股関節と腰の距離が縮まった状態)が続くことで、筋膜の張力バランスが崩れやすくなるとチェン氏は説明しています。そのため、休憩所で車を降りたときや仕事の休憩時間には、ランジストレッチ、背中を反らす運動、肩を開くストレッチなどを行い、体をほぐすことを勧めています。
体に痛みを感じると、多くの人はマッサージを受けようとします。しかし、方法を間違えると、かえって筋膜をさらに硬くしてしまうことがあります。
「痛いほど効く」と考え、強い圧を好む人もいますが、カイロプラクター(脊椎や関節を手技で調整する施術者)の経験を持つチェン氏は、過度に強いマッサージは逆効果になると警告しています。
筋膜は、裂ける危険があるほど強い力を受けると、自らを守るために防御的肥厚(組織が厚く硬くなる防御反応)を起こし、さらに硬くなってしまうといいます。その結果、より強い圧が必要になり、効果は次第に薄れていくという悪循環に陥ります。
チェン氏によれば、マッサージの本来の目的は、筋膜に水分を行き渡らせ、気(生命エネルギー)と血液の流れを促すことであり、痛みを追い求めることではありません。
そのため、表面が滑らかなフォームローラー(筋膜リリース用ローラー)を使って優しく転がす方法を推奨しており、突起やギザギザの付いた「狼牙ローラー」のような器具は、筋膜に過度な負担をかける可能性があるため勧めていません。
健康的に体を動かすためには、強い筋肉や優れた柔軟性だけでは十分ではありません。全身をつなぎ支えている筋膜ネットワークの健康も、同じくらい重要です。
姿勢を改善し、日頃から体を動かし、長時間座り続けることを避け、筋膜の動きを維持するために優しいケアを取り入れることで、多くの人は体のこわばりを軽減し、より自由に動けるようになり、慢性的な痛みを未然に防げる可能性があります。
(翻訳編集 井田千景)