楽さを求めすぎる時代に、私たちが失っているもの

現代社会において、いつの間にか「楽であること」と「便利であること」が文化的な前提になっています。確かに便利さは多くの問題を解決してくれますが、その一方で新たな問題を生み出すことも少なくありません。

私たちの多くは、楽さを人生の指針にしてしまったときに静かに積み重なっていく代償に気づいていません。そしてそれに気づくのは、往々にして手遅れになってからです。

本稿の目的は、過度な快適さや安易さがもたらす弊害を明らかにし、この世界で自分がどの道を選ぶのかを賢明に判断できるようにすることです。

人生のほとんどあらゆることにおいて、どちらか一方に偏りすぎることはあり得ます。安易さに溺れすぎれば、心身は弱く、だらしなく、落ち着きのないものになります。一方で、過度なストレスはあなたをすり減らし、冷めた気持ちにさせてしまいます。
 

節度の道

賢明な生き方とは節度にあります。それは、楽しみのためにも、本来の自分になるためにも、安らぎと困難の両方が必要であると知ることの中に見いだされます。

すべてが楽であるべきだと考えたとき、私たちが何を失っているのかについて、これから述べる教訓があなたの心にしっかりと残ることを願っています。

1.忍耐という美徳と、摩擦に耐える力

人生で最も大きな報酬は、困難であっても粘り強く問題に取り組み続ける忍耐強い人に積み重なっていくように思われます。これは昔から変わらない事実であり、これから先の世代においてもおそらく変わらないでしょう。しかし今日では、その報酬を手にできる人がますます少なくなっているように見えます。多くの人が「すべては楽であるべきだ」という強迫的(やめたくてもやめられない衝動的)な欲求にとらわれ、その結果、自ら取り残されているのです。

2.有能さの土台

熟練者の仕事を見ていると、その人は苦労も葛藤もなく、いとも簡単にこなしているように見えることがあります。しかし、その卓越した技術と能力は、数えきれない試行錯誤の積み重ねの上に築かれています。自分自身の分野で卓越を目指すのであれば、初心者の段階を受け入れ、昔ながらの地道な努力を時間をかけて続ける必要があります。

3.苦闘と忍耐がもたらす満足感

怠惰で楽な生活を好む人にとって、あらゆる快楽は一面的です。すぐに満たされ、即座に心地よいものでなければ、その瞬間に幸福を感じることはできません。しかし、苦闘し努力を重ねるならば、そこにははるかに多層的な喜びが存在します。とりわけ、自分がどれほどの困難を乗り越えて今ここにいるのかを知ることから生まれる静かな満足感は、他のどんな快楽よりも長く続きます。

4.一つの目標に集中し続ける力

豊かさにあふれた世界では、私たちは新しさ(目新しさ)そのものを目的に追い求めることができます。新しい趣味を始めたり、終わりのないフィード(SNSなどの投稿一覧)をスクロールしたり、新しい体験に多額のお金を使ったりして、常に感覚を刺激できます。これら自体が悪いわけではありません。しかし、積み重なれば、私たちは「深さ」から遠ざけられてしまいます。一つの趣味を深く掘り下げたり、お気に入りの本を読み返したり、一つの場所にとどまったりすることで、周囲の人や物に対して層のある親しみが生まれ、人生に質感と豊かさが加わります。それは、次の新奇な刺激を追い求めるよりも、さらに価値のあるものです。

5.日常的な仕事に取り組む誇り

周囲を見渡せば、さまざまな形のギャンブルが増えていることに気づくでしょう。スポーツベッティング(スポーツ賭博)、株式市場のオプション取引(将来の価格を予測して売買する金融商品)、予測市場(出来事の結果を予想して取引する市場)などが爆発的に人気を集めています。これはすべて、楽をしたいという欲望の延長線上にあります。地道に働き、時間をかけて着実に資産を増やすことを望む人は少なくなりました。努力が大きすぎるからです。人々は現実の苦労を経ずに富を得るチャンスを求めます。しかし、その代わりに失われているのは、かつて私たちが(そして今でも)日々の仕事の中に見いだしてきた喜びです。計画を立て、行動し、少しずつ進歩していく過程を味わうという喜びです。

6.人生の厳しい時期を乗り越える回復力

人生には必ず困難が訪れます。問題は「起こるかどうか」ではなく、「いつ起こるか」です。もしあなたの幸福が快適さや便利さに依存しているなら、そうした困難は耐えがたいものに感じられるでしょう。しかし、成長のため、あるいは余暇をより深く味わうために、あえて困難に身をさらしてきた人は、厳しい時期を乗り切る力を身につけています。そしてその経験を通して、より強くなっていきます。

7.あえて困難に挑むことから生まれる自信

良い人生とは、多くの場合、さまざまな目標を緊張関係の中で保ち、その瞬間だけ心地よいものに流されないことを意味します。安易さは、特に溺れやすい誘惑の一つです。

もし意識せず、健全なストレスや意味のある挑戦によってバランスを保とうとしなければ、安易さの道はあなたを偏った存在にしてしまいます。快適さの支配が振り払えないほど強くなる前に、このことに気づいていただければと願っています。

(翻訳校正 井田千景)

妻の MollieとともにThis Evergreen Homeでブログを運営し、現代社会でシンプルに、意図的に、そして人間関係を大切にして暮らす経験を共有。