幸せな結婚生活を支える道――陰陽の調和、琴瑟相和す

現代社会では離婚率の高さがしばしば問題視され、人々はこぞって「幸せな結婚生活の秘訣」を探し求め続けています。しかし、先人はすでに手本となる答えを示してくれました。それが「陰陽の調和」や「琴瑟相和す」という夫婦のあり方です。互いに思いやりを持ち、それぞれの役割を尊重してこそ、家庭は安定し、幸せが育まれます。
 

夫婦和合は、琴瑟の調べのごとく

古来、「琴瑟相和す」という言葉は、夫婦関係の円満をたたえるたとえとして用いられてきました。伝えられるところによれば、上古の帝・伏羲が琴と瑟という二つの弦楽器を創り出したとされています。いずれも桐の木で作られ、琴は上面が弧を描いて天を象徴し、底面は平らで地を表します。いわゆる「天円地方」の思想そのものです。一方、瑟は長方形で、弦は平らに張られています。

琴は七弦、瑟は古くは五十弦、現在では二十五弦が一般的です。唐代の詩人・李商隠は「錦瑟端無くも五十弦、一弦一柱華年を思う」と詠み、その音色に歳月への思いを託しました。
 
形も構造も異なる琴と瑟ですが、合奏すれば見事に調和し、美しい響きを生み出します。このことから後世では、「琴瑟相和す」は夫婦の愛が深く、心が通い合っていることを指す言葉となりました。

『詩経』にも琴と瑟にまつわる表現が数多く見られます。『国風・周南・関雎』には「窈窕淑女、琴瑟友之(窈窕たる淑女は、琴瑟もて友(した)しむ)」とあり、徳のある女性と琴瑟を奏でながら心を通わせる様子が描かれています。また『小雅・常棣』には「妻子好合、如鼓琴瑟」と詠まれ、琴瑟の響きにたとえて、夫婦の和合が家庭全体の調和をもたらすことが示されています。

『常棣』は本来、兄弟愛を歌った詩ですが、その根底には賢い妻の存在が描かれています。兄弟は時に争いますが、いざという時には命を懸けて助け合います。しかし穏やかな日常に戻ると、かえって友人の方が親しく感じられることもあります。そうした時、家庭を整え、酒肴を用意し、兄弟が和やかに集える場を作るのが妻の役割とされていました。

詩の結びにはこうあります。「妻子好合、如鼓瑟琴。兄弟既翕、和楽且湛。宜爾室家、楽爾妻帑。是究是図、亶其然乎」――夫婦が和し、琴瑟のように調和すれば、兄弟も自然と親しみ合い、家庭は安らぎと喜びに満ちるという意味です。

夫婦の和は、一族繁栄の基礎とされてきました。『礼記・昏義』には、「結婚とは二つの姓を結び、上は祖先に仕え、下は子孫を継ぐためのものである」と記されています。古来、結婚がいかに重んじられてきたかがうかがえます。

現代においても、結婚は二人だけの問題ではありません。親への孝行や、兄弟姉妹、親族との良好な関係を保つことも求められます。
 

「男は外、女は内」という古代の社会構造

古代中国の農耕社会では「男耕女織」が基本でした。甲骨文字の「男」は「田」と「力」から成り、男が力をもって田を耕す存在であることを示しています。その後、男性は外で働き家計を支え、女性は家を守り、夫を助け、子を育てるという役割分担が形づくられました。男性は「陽」として責任を担い、女性は「陰」として包容力をもって家庭を支えると考えられてきました。強さと優しさのバランスが取れてこそ、夫婦愛は深まり、家庭は円満になるとされます。

唐代の詩人・李郢(りえい)の逸話はその一例です。科挙に合格して帰郷する途中、蘇州に立ち寄った李郢は、地方官となっていた友人に強く引き留められ、妻の誕生日に間に合わなくなりました。贈り物を届けたものの帰れなかった無念を、詩に託したと伝えられています。

その詩には「鴛鴦交頸期千歳、琴瑟諧和願百年」とあり、鴛鴦のように寄り添い千年を期し、琴瑟のごとく和して百年を願うという、遠く離れていても妻を思う深い愛情が込められています。

家とは、いつの時代も疲れた時に帰る場所であり、自分を取り戻す安らぎの場です。

『詩経・鄭風・女曰鶏鳴』には、勤勉な妻とそれに応える夫の日常が琴瑟の調べとともに描かれています。夫婦が共に働き、共に食し、共に老いていく——そこには静かな幸福があります。

しかし現代中国社会においては、中国共産党が掲げた「男女平等」や「女性も天の半分を支える」といったスローガンのもと、女性の社会進出が進み、子どもが留守児童となる例も少なくありません。中国女性の社会進出率は約70%と高水準ですが、それが必ずしも家庭の安定に結びついているわけではないと指摘する声もあります。2024年の黒竜江省では、100件の結婚に対し81件の離婚が報告されたとされています。

家庭の世話に加えて働く責任も担う現代の女性は、古代に比べて大きな負担を抱えている面があります。もちろん、その中で能力を発揮し、仕事そのものにやりがいを見いだしている女性がいることも事実です。

筆者は、現代社会の問題の一つに「陰陽の失調」があると考えています。男性が本来持っていた責任感を十分に果たせず、女性が過度な負担や強さを求められることで、双方が疲弊している側面があります。男性が主体的に家庭を支え、女性がその優しさで家庭を包み込むという役割が調和し、互いに補い合うことができれば、より安定した関係につながるのではないでしょうか。

古人が示した「陰陽調和、琴瑟相和す」の道こそが、家庭安定への一つの鍵であるといえるでしょう。

(翻訳編集 正道勇)

李疏達