今回は台湾南部の屏東県に来ました。屏東県で必ず訪れたいのが、万金聖母聖殿。まるでスペインの古城のような佇まいで、カトリック教が台湾に根付いてきた150年あまりの歴史を今に伝えています。

台湾で最も美しい小学校とも称される泰武小学校では、古くから伝わる歌を現代に伝える古謡隊の子供たちが、大地と空に向かってパイワン族の物語を歌い継いでいます。
そして、パイワン族の想いが詰まった泰武コーヒー。その一杯は、簡単には生まれません。
スペインの古城のような万金聖母聖殿
万金聖母聖殿は、屏東県·万巒郷の萬金村にあります。清の時代に、カトリックのドミニコ会により設立され、1870年に現在の会堂が完成されました。
台湾に現存するカトリック教会建築の中で最も古い教会として知られ、すでに150年以上の歴史を誇っています。今、万金村の人々の信仰の中心となっている場所です。
ここに立つだけで、不思議と心が静まり、やさしく包み込まれるような平和な雰囲気を感じます。大きな窓と、スペインから海を渡ってきた鐘が、いっそう異国情緒を添えています。
どうして、万金聖母聖殿のファサードに「奉旨」と刻まれた石碑があるのでしょうか。万金聖母聖殿の神父を務めている李漢民さんに訪ねると、これは、清の時代にスペイン人宣教師がこの地に来たことに由来するということです。

当時この地域には、原住民、平埔族、閩南人、客家人など、さまざまな人々が共に暮らしており、布教は決して簡単ではないということでした。そこで台湾巡撫·沈葆楨が清の同治帝に働きかけ、「奉旨」の石が与えられたことで、宣教師たちは自由に布教できるように認められたということです。
「奉旨」の上には、立派な王冠と盾というデザインがあります。それはどういうことでしょうか。
王冠はキリストの神性を表し、盾はスペインから来た宣教師たちのドミニコ会の紋章です。黒と白の色は、正義と真理を守るということを象徴しています。李神父さんは803年の歴史を持つドミニコ会の信仰とともに、万金聖母聖殿は台湾だけでなく、世界でも高い評価を受けているのだと教えてくれました。
台湾には二つの聖殿があって、もう一つの聖殿は高雄の玫瑰聖母堂です。どちらもドミニコ会の神父たちによって建てられたのです。李神父さんは「聖殿」とは、ローマ教皇から特別に認められた、一般の教会より格の高い存在なのだと説明しています。
聖殿外の世界は現代でも、ここに一歩入ると、150年前にタイムスリップしたような感覚です。赤レンガの床を踏み、両側の長椅子の間を進むと、質素ながら静かで穏やかな祈りの空間が広がります。
中央の聖母像と十字架は、1870年にスペインから運ばれたもので、この聖母像は慈愛に満ちた表情が訪れる人を包み込めるような気がします。高く聳える柱と彩色ガラスの窓から差し込む光が、聖殿全体を安らかな空間にしています。

ここでは、にぎやかなイベントも行われているのではと聞いてみたら、万金では、毎年の12月に唐慶という大きなパレードがあって、その時、台湾中のカトリック信徒が集まります。彼らは聖母像を神輿に乗せ、万金から赤山まで運びながら、地域の人々や台湾全土の平安のために祈ります。李神父さんはコロナ禍の時でも、このパレードは続いていたと、答えてくれました。

これはとても特別です! 万金でも聖母像を神輿に乗せてパレードが行われています。まるで台湾の民間信仰の媽祖(海の女神)巡行のように、信仰と希望の力を地域に届けるのです。
万金聖母聖殿は、その宗教的地位においてバチカンの大聖堂に次ぐ重要性を持っています。東アジアの華人教区でも、ローマ法王庁から「聖母聖殿」に冊封された教会はごくわずかです。屏東の万巒を訪れる際は、ぜひ足を止め、台湾のカトリック布教の歴史を今に伝えるこの聖殿を観てみてください。
安らかな気持ちで万金聖堂に別れを告げ、私たちは緑の回廊へと歩き出しました。両側に並ぶレモンユーカリの木々が続くこの道は、どこへ向かうのでしょうか。
集落の入口に見える像の衣装、あれはパイワン族の伝統服です。私たちは、吾拉魯茲(ウラルズ)泰武にたどり着きました。
「太陽の子」 パイワン族の里
かつて、パイワン族は屏東県泰武郷·北大武山に暮らしていましたが、しかし大型台風で故郷が失われ、やむなく平地へ移住しました。多くの支えで築いた新しい場所-それがウラルズです。
部落入口のウラルズ移村記念碑には、パイワン族の神話のモチーフが描かれています。太陽の伝説が多く、パイワン族は自分たちを「太陽の子」と呼んでいます。
こちらに住宅もあります。家はみんな似ていますが、パイワン族は生まれながらのセンスで、自分の家を素敵に飾ります。こちらは部族長の家屋です。門や梁には陶器の壺や祖霊の像、羽飾りの人形などの彫刻があり、家族の地位を表しています。陶器や祖霊像がある家は貴族、動物の彫刻がある家は猟師の家です。それぞれの模様には意味があって、とっても面白いです。

ウラルズの魅力は住宅だけじゃありません。地元の学校もパイワン族の伝統文化を伝える大事な役割を担っています。子どもたちは小さい頃から自分の文化を学び、誇りに思えるようになります。では、パイワン族の小学校、泰武(タイウ)小学校に行ってみましょう!
泰武小学校の古謡隊、木彫り、石板屋
校門には瑠璃珠(リューリーズゥ)を模した門止め、灯篭が輝き、校舎の壁にはパイワン族の伝統故事の壁画があります。尊重·調和·幸福を表す黄·緑·赤の祈りの壁や、階段には子どもたちの彫刻作品がずらり!どれも芸術的で素敵です。

運動場からは、校舎を囲むパイワン族のデザインも見え、原郷の文化がたっぷり感じられます。だからこそ、日本の土木学会の専門家も「世界で最も美しい小学校」と絶賛したのですね!
泰武小学校は美しい校園だけでなく、査馬克(チャマック)先生が率いる古謡隊でも有名です。2012年には台湾の23回目金曲奨(Golden Melody Awards)の伝統芸術部門で5部門にノミネートされ、授賞式でも招待演奏を行い、大きな反響を呼びました。
チャマック先生はこう語ります。
「泰武小の子どもたちの八、九割は古謡を学んでいます。登下校のチャイムも古謡の旋律で、学校に入ればいつでも歌がそばにあります」
子供たちが伝統衣装をまとい、古謡歩道で歌う古謡を聞いてみましょう。
泰武小は、子どもたちが幼いころから自分たちの文化の尊さを知る場所です。パイワン族の文字はなくても、古謡を通して歴史と祖先の知恵は受け継がれています。

万物には霊が宿る。山には山の神、水には水の神がいる。自然と調和し、勤勉に生き、家族と一族の誇りとなる人になりなさいと、古謡はそうした大切な教えを今に伝えています。
泰武小には有名な合言葉がありますかと、頼慶安校長に聞いたら、それは
「根を深く、夢を大きく。勇敢に追い、部落を成す」ということです。
校長先生はこう語ります。「子どもたちには、学校で自分たちの文化をしっかり学んでほしい。そして大人になったとき、部落を支える存在になってほしい。何より、『自分らしく生きる人になってほしい』
さらに校庭には「栄耀の石」がある。旧泰武の部落から運んできた大切な石だ。良い行いをした子はその上に立ち、みんなの拍手でたたえられる。

その石は、部落の長老たちが無償で学校に託してくれたもので、子どもたちに自分はパイワンの一員なんだと、ずっと覚えていてほしいからだ」
泰武小に来ると、「泰小石板屋」というカフェがあります。
これは全校の先生と子どもたちが力を合わせ、祖先のやり方にならって建てた伝統家屋です。地元の石や木をそのまま生かしていて、パイワンらしさがぎゅっと詰まっているようが気がします。

石板屋の中に入ると、コーヒーの香りがふわり。今、飲んでいるこのコーヒー、実は日本時代から残る「おばあちゃんのコーヒーの木」からできたものです。とてもまろやかで、やさしい味です。
周りには木彫りやガラスビーズなど、手作りの作品が並んでいて、小さなアートマルシェみたいです。コーヒーを飲みながら古謡を聴いて、石板屋を眺めていると、パイワンの空気に包まれて、心までゆるんでいく感じがします。
ウラルズ· コーヒー産業パーク
ご存知でしょうか? 屏東県の泰武村は、台湾でも有数のコーヒー豆の産地です。
百年前から残るコーヒーの木をもとに、パイワン族は自分たちのブランドを作り、コミュニティにカフェも開きました。有機栽培で厳選されたコーヒーは評判もよいため、多くの人がウラルズのコミュニティまで足を運んでいます。

コーヒー豆の収穫から選別まで、すべてこだわり抜いて、細部までしっかり管理されています。栽培から一杯のコーヒーになるまで、すべて泰武で行われます。そのおかげで、味わいはとても純粋で、ほかにはない独特の風味に仕上がります。
ここではただコーヒーを飲むだけじゃなくて、山に上がってコーヒーの実を自分で収穫したり、手作りで焙煎したり、カッピング体験をしたりもできます。
コーヒー館では、パイワン族風のランチセットも楽しめます。ここには屏東の特産品が揃っています。
屏東·満州の名物であるイシクラゲ(台湾では雨來菇という)を使って作ったサラダや、アバイ(ピーナッツ入りのお餅)、ジナプ(酸漿の葉っぱで包んだちまき)、石板で焼いたカリッとした山豚の肉、コーヒーチェリーのドライティーなども、部落のごちそうです!(17:49)
コーヒーチェリーのドライティーとは、収穫したコーヒーの実の皮を天日干しして、しっかり乾かします。乾いた皮は大切に保存して、後でお茶として使うものです。
こうして作られたコーヒーフルーツティーは茶色で、サンザシや梅干しを混ぜたような酸味があります。味わいはすっきりして、スープに入れて、酸味や奥行きを加えることもできます。夏に飲むと、喉が潤って、すごく心地いいです。ぜひこの美味しさを味わってみてください!
1000歩的繽紛台湾から転載
(翻訳編集・蘇燕)
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