バナナは、世界で最も人気のある果物のひとつで、消費量も非常に多い食品です。では、バナナを買うとき、どのように選ぶのが良いのでしょうか? 青いバナナ、黄色いバナナ、それとも茶色い斑点が出始めたバナナ──どれが一番良いのでしょうか?
「バナナが時間の経過とともに熟していくことは、誰もが知っていることですが、その過程は非常に興味深いものです」と、「Live it Up」の主任登録栄養士レイチェル・ガルガーノ氏は、エポックタイムズへのメールで語っています。「熟成は遺伝的にプログラムされたプロセスで、生化学的および生理的な変化を伴いながら、バナナの味・食感・香りが、私たちにとって馴染みあるものへと変化していくのです」
バナナは、健康維持に欠かせないビタミンやミネラルの優れた供給源です。
熟成の過程で、ビタミンや栄養素の含有量はほぼ一定のままですが、血糖値や消化に関わる抗酸化物質、でんぷん、糖分の量は変化します。
青いバナナ(未熟)
でんぷんが多く甘みが少ない青いバナナは、そのままではおいしく感じにくいかもしれません。しかし、カリブ海地域や中南米、アフリカ、インドなど多くの地域では、青いバナナは食文化に欠かせない食材として使われています。植物学的には「ベリー」に分類されますが、一般的には果物というより野菜のように扱われ、食べる際は加熱調理が必要です。ゆでる、焼く、揚げる、蒸す、ローストするなど、調理法はさまざまです。
糖分の変化
ガルガーノ氏によると、「バナナは熟成の過程で、でんぷんや繊維の一部がアミラーゼやインベルターゼなどの酵素によって分解され、より小さな糖分子に変化します」。アミラーゼはでんぷんを単糖に分解し、インベルターゼはショ糖を果糖とブドウ糖に変える酵素です。これが、熟したバナナが柔らかく甘くなる理由です。
未熟なバナナには、熟したバナナよりも多くの繊維とでんぷんが含まれていますが、単糖の量は少なくなっています。
「ただし、熟度に関係なく、バナナに含まれる炭水化物の総量は変わりません。違いは、その炭水化物が『でんぷん由来』なのか、『糖分由来』なのかだけです」とガルガーノ氏は解説しています。
青いバナナには、ペクチンとレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)が豊富に含まれており、熟成が進むとこれらの成分は減少し、でんぷんが糖へと変化します。皮の色が黄色に変わるのは、その兆候です。熟したバナナは柔らかく、甘く、消化もしやすくなります。
消化への影響
バナナに含まれるペクチンやレジスタントスターチは、いずれも消化を助ける食物繊維です。
ペクチンは水溶性食物繊維の一種で、消化速度を緩やかにし、腸が栄養を吸収する時間を延ばします。また、腸の働きを整え、便秘や下痢を予防し、満腹感の持続にも役立ちます。
栄養指導会社「Top Nutrition Coaching」の登録栄養士コートニー・ペリテラ氏は、「繊維が豊富なため、未熟なバナナは消化にとても役立ちます。腸内環境を整え、便通の改善にもつながります」と語っています。
腸内環境への影響
青いバナナに多く含まれるレジスタントスターチは、小腸では消化されず、大腸で発酵し、善玉菌のエサになります。これによって腸内フローラが整い、健康維持に役立ちます。
2024年に日本で行われた研究では、健康な女性26人が毎日2本のバナナを2週間摂取したところ、腸内環境の悪化を示す指標である尿中インドキシル硫酸の値が有意に低下することが確認されました。
また、青いバナナに含まれるレジスタントスターチは、血糖コントロールや体重管理にも効果があるとされています。2019年に『British Journal of Nutrition』誌に掲載された研究では、糖尿病予備群または2型糖尿病のある113人を対象に青バナナを食事に取り入れたところ、24週間後には血糖値、HbA1c、血圧、BMIがすべて改善しました。
ガルガーノ氏は、「青いバナナには食物繊維が豊富で、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。これは、消化や吸収の速度が遅くなることで、ブドウ糖がゆっくりと血中に放出されるためです」と説明しています。
さらに、「腸内環境を整えたい場合には、青いバナナはとてもおすすめです。人間はレジスタントスターチを消化できませんが、それが善玉菌のエサとなり、短鎖脂肪酸を生成して腸壁の健康維持に貢献します」と付け加えました。
「腸内環境が整うことで、消化だけでなく免疫力やメンタルヘルスにも良い影響があります。私なら、少し青みが残ったバナナを選びますね!」と語っています。
黄色いバナナ(熟した状態)
熟したバナナも、さまざまな場面で活躍します。
ペリテラ氏は、「運動前にエネルギーを補給したい方や、健康的な炭水化物をしっかり摂りたい方には、熟したバナナがぴったりです。風味も豊かなので、スムージーや焼き菓子にもよく合います」と話しています。
また、ガルガーノ氏は「熟したバナナは、フルクタンの含有量が減少します」と説明します。フルクタンはFODMAPs(発酵性炭水化物)の一種で、一部の人には消化が難しく、膨満感やガス、けいれん、便秘、下痢といった症状を引き起こす可能性があります。
熟したバナナが消化しやすいのは、含まれていたレジスタントスターチが単糖に変化するためです。ただし、糖分が多くなることで血糖値が上がりやすくなるため、糖尿病の方は摂取量に注意が必要です。
また、熟したバナナは未熟なバナナよりも抗酸化物質が多く、体内の活性酸素によるダメージから細胞を守る働きがあります。
研究では、バナナの皮に含まれる抗酸化物質も熟度とともに増加し、完熟の段階でピークに達し、その後、過熟になると減少していくことがわかっています。バナナの皮は日本ではあまり食べられませんが、インドや東南アジアでは、カレーや炒め物などに使われることもあり、ヴィーガン料理ではベーコンの代替品として調理されることもあります。
茶色い斑点のあるバナナ(過熟)
茶色い斑点が出ているバナナも、決して食べられないわけではありません。やや熟れすぎたバナナには栄養が豊富に含まれており、でんぷんがさらに糖に変化しているため、消化吸収が非常に良くなります。体調がすぐれないときや、消化機能が弱っている方にも向いています。
バナナは「BRAT食」(Banana・Rice・Applesauce・Toast=バナナ・ごはん・リンゴソース・トースト)の一部としても知られ、下痢や吐き気、消化不良の回復期に推奨されます。特に子どもに適しており、胃に優しく、便を固める作用も期待できます。
ただし、過熟を通り越して腐敗が始まっているバナナは避けるべきです。以下のような状態が見られる場合は、食べないようにしましょう:
- 皮がほぼ黒くなっている
- 果肉が傷んでいる
- 水分がにじみ出ている
- カビが生えている
- 酸っぱい、または発酵したような匂いがする
匂いも良い指標となるので、腐った匂いや発酵した匂いのするバナナは食べないようにしましょう。
特別な健康目的がない限り、バナナの熟度はお好みに合わせて選んで問題ありません。どの段階のバナナにもそれぞれ異なる栄養的メリットがあり、健康に役立つ果物であることに変わりはありません。
(翻訳編集 正道勇)
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