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免疫力を高める昔ながらの知恵:きのこ入り鶏スープ

秋から冬にかけて、肺が弱りやすい季節

秋が終わり冬が始まるころは、インフルエンザや風邪が流行しやすく、呼吸器が弱まりやすい時期です。誰もが体調を崩さないようにと、自然に「免疫力を高めたい」と思うようになります。これは人間の本能的な自衛の働きであり、実は古くから伝わる養生の考え方と同じなのです。

免疫の基本は「自然に合わせて食べること」

では、どうすれば免疫力を高められるのでしょうか? その答えは、季節に合わせた食べ方をすることにあります。昔から人々が食べてきた家庭料理には、ただおいしいだけでなく、長い年月をかけて磨かれた「自然に順応して体を整える」知恵が詰まっています。

中国最古の医学書『黄帝内経・四気調神大論』には、「人は四季の変化に合わせて心身を調えることで、陰陽のバランスを保ち、臓腑の働きを整える」と書かれています。そしてその中に、「賢者は病気を治すのではなく、病気になる前に防ぐ」という有名な一節があります。

つまり、古代の人は「病気になってから治す」よりも、「日々の食事で自然に沿って体を整える」ことの大切さをよく知っていたのです。今のように短期間の栄養実験で効果を測るのではなく、何世代にもわたる経験と生活の中で築かれた食の知恵こそが、本物の健康法でした。

昔から人々が食べてきた家庭料理には、長い年月をかけて磨かれた「自然に順応して体を整える」知恵が詰まっています。(Shutterstock)

だからこそ、私たちはもう一度、昔ながらの家庭料理に目を向け、そこに受け継がれてきた「食で整える知恵」を取り入れることが、最も自然で、確かな健康法なのです。自然に沿った方法ほど、実は一番シンプルで確実なのです。
 

季節の食材を使うのが、一番の免疫強化法

秋から冬にかけて豊富にとれる、旬の食材を使うことこそが、自然の流れに沿った「順天養生」です。旬の食材は生命エネルギーが最も満ちていて、栄養価が高く、味も良く、しかも手に入りやすい——まさに人々の味方です。

食材は「性質(温・冷・中性)」や「味(甘・酸・苦・辛・塩)」によって体のどの臓器に働くかが分かります。たとえば甘味は「消化器」を助け、酸味は「肝」に、苦味は「心」に関係します。こうした性質を理解して調理することで、毎日の食事が自然と薬のような働きを持つのです。

古代の人はこの理屈を使って、体に合う組み合わせで料理を作っていました。これこそが、現代で言う「免疫力を高める食事」に通じます。特に肺(呼吸器)と脾胃(消化器)は、免疫の中心になる臓器です。この二つの働きを支えて栄養をとることが、病気を防ぐ一番の近道です。

東洋医学では、秋冬の養生は「消化を補い、肺と腎を養う」ことが基本。つまり、胃腸を丈夫にして体の基礎を整え、肺を守ってウイルスに負けない体を作る——これが昔からの知恵なのです。
 

大地の恵み・きのこ:胃を元気にし、肺を補う

きのこは、まさにこの季節にぴったりの食材です。秋から冬にかけては陰の気が強まり、湿気が多くなって胃腸の働きが落ちやすいのですが、きのこは大地の栄養を吸収して、胃腸や肺の働きを助けてくれます。

きのこは大地の栄養を吸収して、胃腸や肺の働きを助けてくれます。(Shutterstock)

『本草綱目』には「きのこは山林の精であり、気を補い、空腹を防ぎ、体を軽くして長寿をもたらす」と書かれています。つまり、きのこは胃腸を整えて体のエネルギー(正気)を強くする食材なのです。

現代の研究でも、きのこには「β-グルカン」という成分が豊富に含まれ、免疫細胞を活性化し、白血球の働きを高めることが分かっています。中でもしいたけには「レンチナン」という特有の多糖類が含まれ、免疫力を調整して病気に対する抵抗力を高める作用があります。
 

しいたけ:「庶民の霊芝」

しいたけは昔から親しまれているきのこですが、実はとても優れた健康食材です。天日干しすると、しいたけの中の「エルゴステロール」という成分がビタミンDに変わり、カルシウムの吸収を助けてくれます。カルシウムは骨を強く保つために欠かせません。東洋医学では「腎は骨を司る」とされるので、しいたけは肺を補い、胃腸を整えるだけでなく、腎を養い骨を丈夫にする働きもあります。まさに「庶民の霊芝」と呼ぶにふさわしいきのこです。

しいたけには「気の流れを整える」力があります。(Shutterstock)

霊芝は古来より長寿の象徴とされるきのこの王様ですが、しいたけをはじめとする食用きのこにも、体を元気にし、気血を整える力があります。薬のように強すぎず、毎日安心して食べられるのが魅力です。体質改善や免疫アップにはぴったりです。

しいたけは香りが豊かで、香りの強い食材ほど「気の流れを整える」力があります。香りが食欲を刺激して胃の働きを促し、気血の巡りを良くするので、秋冬の体調管理にぴったりです。昔から多くの家庭で食養生の定番になっているのは、まさに理にかなっているのです。

きのこ入りの鶏スープは、古代の知恵と現代の栄養学がぴったり重なる料理です。体を温め、消化を助け、肺を潤し、免疫を整える。旬の食材を使って自然に沿って食べることこそ、昔から変わらない最良の健康法なのです。

 

レシピ:肺を潤し、胃腸を元気にする きのこ入り鶏スープ

きのこ入り鶏スープのイメージ写真(Shutterstock)

材料(2~3人分)

  • 鶏もも肉(皮を取る)……200g
  • 干ししいたけ……3枚
  • 舞茸または平茸……50g
  • ごぼう(薄切り)……20g
  • れんこん(薄切り)……30g
  • 生姜(スライス)……3枚
  • 長ねぎ(白い部分)……1本分
  • 塩……少々

作り方

  1. 鶏もも肉を一度熱湯にくぐらせてアクを取り除く。
     
  2. 干ししいたけは水でもどして食べやすく切る。
     
  3. 土鍋または厚手の鍋に、塩以外の材料をすべて入れ、水800mlを加える。
     
  4. 強火で沸騰させたあと、弱火にして約40分じっくり煮込む。
     
  5. 仕上げに長ねぎの白い部分と塩を加えて味を整える。香りやうま味を引きてたいときは、天然のうま味調味料を少し加えてもOK。

各食材の働き(中医学の視点)

しいたけ:甘くて穏やかな性質。胃腸や肺に働きかけ、気を補い、胃腸を整え、痰を除き、毒を流して体を強くします。

鶏肉:甘くて温かい性質。胃腸に入り、気血を補い、体質を改善します。疲れやすい人や冷え性の人にぴったりです。

ごぼう(または大根でも可):辛くて少し苦みがあり、性質は涼。肺と胃に働き、体の熱を取り、血流を良くし、余分な老廃物を出します。

れんこん:甘くてやや冷たい性質。心や胃腸働き、胃腸を整え、血のめぐりを良くし、血栓を防ぎます。風邪や乾燥の季節にもおすすめ。

生姜・長ねぎ:辛くて温かい性質。体を温めて寒さを追い出し、気の流れを良くして風邪を引くのを防ぎます。

スープの効果
この鶏スープは、胃腸を整えながら肺を養い、体のエネルギー(正気)を強めてくれます。さらに腎の働きを助けて骨を丈夫にし、全身の血流を良くして冷えを防ぎます。

やさしい味わいで体を内側から温め、疲れをとり、免疫力を高める効果があります。特に秋から冬への季節の変わり目、乾燥して寒い時期にぴったりです。
また、同じ材料でも、炒め物や煮物にアレンジして楽しむこともできます。自分の好みに合わせて調理をすると、毎日続けやすく、自然に健康を保つことができます。
 
 (翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。