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秋の終わりの「土用」――里芋で体を温め、湿を祓う

土用とは、湿った「土の気」が主となる時期

それぞれの季節の最後の節気は、実は五行のうち「土」のエネルギーが天地を主り、季節の移り変わりを調える時期なのです。

中医学では、最後の節気の三日前からを「十八日間は土に属す」とし、土の性質である“湿”が強まる時期とされています。日本でも古くからこの考えが残り、暦の上で「土用」と呼ばれています。

今秋の最後の節気は霜降で、10月23日から立冬の前日までの15日間にあたります。この霜降の三日前、つまり10月20日から数えて十八日間が、秋の「土用」の時期です。

ちょうど秋から冬へと季節が切り替わるこの頃、土の気が主となり、冷気も加わって、気候は寒湿に傾きやすくなります。

脾を健やかにし、湿を祓う――温める養生を心がけて

人の体は天地と呼応し、脾胃は五行で「土」に属します。

寒湿が脾を塞ぐと、脾の働きが弱まり、胃の気も下へ降りにくくなり、

お腹の張りや消化不良、痰が多くなる、咳が出るなどの症状が現れます。さらに脾胃の働きが乱れると、肺の気も下降できず、風邪や咳、痰のからむ不調を起こしやすくなります。

そのため霜降の前後は、養生の要が「湿を取り、脾を整え、体を温めて寒を除く」ことにあります。こうして土の気を養えば、五行の気の昇降が調和し、体内の循環も整っていきます。

この時期にぴったりな食材が里芋です。

寒湿の季節にぴったりな里芋(Shutterstock)

里芋は性質が穏やかで味は甘く、脾胃に入り、脾を健やかにし、湿を祓い、体を整えるとされています。 牛肉と合わせれば気と血を養い、体を内側から温める一品に。

さらにピーマンを添えれば気の巡りを促し、寒を散らす働きが加わり、寒湿を取り除きながら体を温かく保つ、まさにこの季節にふさわしい養生料理となります。

 

レシピ:里芋と牛ひき肉のピーマン詰め(2人分)

ピーマンの肉詰め(Shutterstck)

材料

  • ピーマン……4個
  • 牛ひき肉……150g
  • 里芋……150g
  • おろし生姜……小さじ1
  • 味噌……大さじ1
  • 醤油……小さじ1
  • みりん……小さじ1
  • ごま油……小さじ1
  • 塩……少々
  • 清酒……大さじ1
  • 片栗粉……小さじ1

作り方

  1. 里芋は皮をむいてすりおろし、牛ひき肉・おろし生姜・味噌・醤油・みりん・ごま油・塩・片栗粉を加えて、よく練り合わせて粘りのあるタネを作る。

     
  2. ピーマンはヘタと種を取り除き、肉だねを詰める。

     
  3. フライパンに少量のごま油を熱し、弱火で表面に軽く焼き色をつける。

     
  4. 清酒を加えてふたをし、弱火で5〜6分蒸し焼きにする。ふたを開けて煮汁を少し煮詰めたら完成。

養生のポイント

里芋は湿をさばき脾を健やかにし、牛肉は気と血を温めて養います。

ピーマンは気の巡りを促し、寒を散らし、生姜と味噌は陽気を助けて胃腸を整えます。

温かいものを食べることで、胃腸に陽気がめぐり、体を温めながらも乾かしすぎず、体内の余分な湿を自然に変化させてくれます。脾の働きが高まり、体内のめぐりが整うことで、寒と湿は自然に消えていきます。

まさに霜降から土用の時期にふさわしい一品で、土の気を養い、体の芯の陽気を守り、季節特有の冷えや重だるさを和らげてくれる、理にかなった一皿です。

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中医学の養生は、体を自然界のように調和させる「気候調整」の学問。五行の働きが乱れると病が生じ、整えば健康が戻る。季節と連動した「人体の気候」を理解することで、日々の食と生活に新たな視点が生まれます。