寒露を過ぎたら、刺身や寿司は控えめに
寒露を過ぎると、冷たい食べ物がもっとも脾胃を傷つけやすい時期になります。冷えと湿気が脾を塞ぎ、気血の巡りが滞ると、あらゆる不調のもとになります。
とくに脾胃が冷えやすい体質の人は、刺身や寿司をできるだけ避けたほうがよいでしょう。たとえ体質が丈夫な人でも、量はほどほどにするのが賢明です。
刺身と寿司――食べすぎは寒湿のもと
刺身や寿司は、日本を代表する料理です。新鮮な魚の身がとろけるようで、醤油やわさび、酢飯との組み合わせも実に爽やかです。しかし中医学の観点から見ると、これは「陰寒と湿」を併せ持つ食べ物とされます。
魚の身には水分が多く、火を通していないため陽気が生じていません。さらに寿司の酢飯も性質がやや冷たく、寒気が湿を助ける形になります。そこに冷たい緑茶や氷入りの飲み物を合わせると、陰湿が重なり、体をさらに冷やしてしまいます。
脾胃の弱い人にとっては、まさに「寒気が脾胃を直撃する」ようなものです。軽ければお腹の張りや下痢、倦怠感を招き、重ければ陽気が抑えられて血の巡りが次第に悪くなっていきます。
長くこのような食生活を続けると、舌の苔が厚くねばつき、顔色がくすみ、手足が冷えるといった症状が現れることがあります。これは、体の中に寒湿がこもり、脾の陽気が弱っているサインです。
寒湿を和らげる食べ方
食べ物には、それぞれ寒・熱・燥・湿といった性質があります。これらは工夫次第で調和させることができます。もし本当に“生の美味しさ”を楽しみたいなら、「温で寒を制し、脾を健やかにして湿を化す」方法を学ぶとよいでしょう。
【柚子香る炙り寿司】
新鮮な魚の切り身を、表面に軽く焦げ目がつく程度に炙ります(キッチンバーナーやフライパンでさっと焼く程度)。温かい酢飯と合わせ、仕上げに細く切った柚子の皮やおろし生姜を少量のせます。
魚の身が火にあたることで温かみが生まれ、寒湿の性が和らぎます。柚子の香りは気の巡りを促し、脾の働きを助けて消化をスムーズにしてくれます。
この方法は、生の旨味をある程度残しながらも、寒露以降の体に最も合った食べ方となります。
【温かい生姜紫蘇茶を添えて】
炙り寿司や煮魚を食べるときは、生姜紫蘇茶を添えるのがおすすめです。
作り方は、生姜3枚と紫蘇の葉2枚を水300mlで弱火で5分ほど煮て、温かいうちに飲みます。
生姜は体を温めて冷えを散らし、紫蘇は気を整え湿を取り除きます。寒露以降の季節に、もっともふさわしい組み合わせです。
【生ものの代わりに煮物を】
炊く・煮る・焼くといった温かい調理法で、生や冷たい料理を置き換えましょう。とくに脾胃が冷えやすい人には、最も適した食べ方です。
参考レシピ:白身魚の味噌煮
材料
- 白身魚の切り身……2切れ
- 生姜……3枚
- 味噌……大さじ1
- みりん……大さじ1
- 醤油……小さじ1
- 水……150ml
作り方
1. 魚は軽く洗う。鍋に水・味噌・みりん・醤油・生姜を入れ、弱火で煮立てる。
2. 魚を加え、弱火で10分ほど煮て煮汁を軽く煮詰める。
養生ポイント
生姜は脾を温め、冷えと湿を散らします。味噌は甘く温かい性質で胃を守り、魚の臭みを抑えながら陽気を引き出してくれます。