(Shutterstock)

秋分の養生:もつ煮で肺を潤し腸を守る

秋分の頃になると、日本のスーパーでは豚の大腸など「もつ」類の食材や、もつ煮などの惣菜が目立って増えてきます。これは売り場の戦略だけではなく、季節に寄り添った伝統的な養生の知恵に基づくものなのです。

「形が形を補う」──秋に大腸を食べる智慧

中医学では、秋分の時季は「金」の気が盛んになり、乾燥の性質が強まるとされています。この「金」は肺と大腸に対応しており、空気が冷たく乾燥してくると、まず肺と大腸が影響を受けやすくなります。その結果、呼吸や消化の働きが乱れやすく、便秘、お腹の張り、乾いた咳、胸のつかえ、さらにイライラや気の高ぶりといった秋特有の不調が現れるのです。

古くから「形で形を補う(以形補形)」とされ、秋には大腸を食べて大腸を養い、肺の働きを助けると考えられてきました。豚の大腸は白い色をしており、五行では「金」に属します。このため自然と大腸の経絡に入り、巡りを整え、胸のつかえやお腹の張り、便の滞りなどをやわらげる食材とされてきたのです。こうして、熱々のもつ煮は秋分の頃にぴったりの養生料理として受け継がれてきました。

現代栄養学の観点から見ても、豚の大腸などのホルモンにはたんぱく質やコラーゲン、ビタミンB群が豊富に含まれており、呼吸器の粘膜を潤して季節の乾きによる違和感を和らげ、腸の動きを整えてすっきりとさせる働きがあります。また、鉄分やビタミンB群はエネルギー代謝を支えるため、秋に感じやすい疲労感のケアにも役立ちます。これは、伝統的な「形で形を補う」という知恵と見事に一致しています。

 

季節のおすすめ料理:味噌もつ煮

味噌モツ煮のイメージ写真(Shutterstock)

材料(2~3人分)

  • 豚モツ(大腸)…300g(よく洗う)
  • 大根…200g(乱切り)
  • にんじん…100g(薄切り)
  • しらたき…150g(下ゆでしてアク抜き)
  • 長ねぎ…適量(仕上げ用)
  • 味噌…大さじ2
  • しょうゆ…大さじ1
  • 清酒…50ml
  • みりん…大さじ1
  • 生姜…3枚

     

作り方

  1. 豚モツは下ゆでして臭みを取り、一口大に切る。
  2. 鍋に清酒、生姜、豚モツを入れ、弱火で30分煮る。
  3. 大根、にんじん、しらたきを加え、柔らかくなるまで煮込む。
  4. 味噌、しょうゆ、みりんを加え、さらに15分煮る。
  5. 器に盛り、長ねぎを散らして完成。

     

期待される働き

豚モツ(大腸):五行では大腸の経に入り、体の潤いを補いながら、めぐりをサポートするとされています。季節の乾燥で乱れやすい肺と腸のバランスを整える

大根:からだにこもる余分な熱をすっきりさせ、呼吸を整え、食後の重さをやわらげます。秋に起こりやすい乾いた咳や胸のつかえ、お腹の張りなどをサポート

しらたき:腸内のめぐりを整え、脂質や糖のとりすぎにも配慮できる

これらはいずれも「白い食材」であり、秋に弱りやすい肺と大腸をやさしく整えるとされています。高脂血症や痛風の方は、量を控えめにし、体調に合わせてお召し上がりください。

関連記事
立春のころは気が動き出す一方、体が追いつかず不調を感じやすい時季。ねぎま鍋は巡りを助けながら内側を養い、陽気がのびる流れをやさしく支えます。
真冬の強い冷えは心の働きを弱め、動悸や不安感を招くことがあります。さつまいも・生姜・黒糖を組み合わせたおかゆで、体を温め血を養う養生法を紹介します。
柚子皮の香りは気を巡らせ、果肉は潤し、はちみつはやさしくまとめる。はちみつ柚子茶にひそむ陰陽の調和と、心を整える食養の知恵を解説します。
冬は腎を中心に、体の土台を静かに整える季節と考えられています。黒豆を軸に五穀を組み合わせることで、五臓の巡りを穏やかに支える食養生の知恵を紹介します。
生姜は冬に役立つ食材ですが、使い方によっては体の温かさを外に逃がしてしまうこともあると考えられています。酢と火の入れ方を工夫した、生姜焼きの一例を紹介します。