立秋を迎えても暑さはまだ残り、空気の乾燥「燥気」はひそかに高まってきます。この時期は、肺を潤し、胃腸を整え、暑さと乾燥の両方に備えることが大切です。
そんな季節にぴったりなのが、ほんのり温かくやさしい甘酒。そのまま一杯飲むのはもちろん、甘酒を使ってさっぱりとしたサラダに仕上げるのも、季節に寄り添った賢い食べ方です。
古くから続く日本の“食べる点滴”
米麹からつくられる甘酒は、中医学の考え方では「甘味で温性」の性質を持ち、脾(胃腸)と肺にやさしく働きかけるとされています。
つまり、胃腸の働きを助けてエネルギー(気)を補い、肺を潤してのどの渇きをやわらげる――そんな効果が期待できる、今の季節にぴったりの発酵食品です。
立秋を過ぎても湿気はまだ残り、胃腸が弱って食欲不振やだるさを感じやすい時期。そして空気が乾燥し始めると、今度は肺に負担がかかり、のどの渇きや便秘といった不調が現れがちです。
そんなときこそ、甘酒の「補」と「潤」という2つの力が心強い味方になります。夏の暑さで消耗した気を補い、乾燥で失われがちな体内の潤いを守って、疲労感・口の渇き・便秘などの不快な症状をやわらげてくれます。

「甘酒=冬の飲み物」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実は江戸時代、甘酒は真夏の滋養ドリンクとして大人気でした。冷房のなかった時代、蒸し暑さで体力を消耗した人々の間を、甘酒売りが熱い桶を担いで歩き、道行く人は一杯買って疲れを癒していたといいます。浅草・観音堂前には、夏季限定の甘酒店があり、一日百杯以上売れたという記録も残っています。
そして、現代の栄養学でも甘酒の実力は裏付けられています。

ブドウ糖、ビタミンB群、アミノ酸、オリゴ糖、食物繊維などを豊富に含み、ノンアルコールで体にやさしく、消化吸収もスムーズ。腸内環境の改善や代謝促進、さらには体力の回復にも一役買ってくれる、まさに“飲む点滴”のような存在です。
甘酒はそのまま飲むだけでなく、ヘルシーな調味料としても活躍します。
たとえば、ドレッシングや和えものとしてサラダに使えば、さっぱりとおいしく仕上がり、肺を潤しながら体にやさしい一皿に。
甘酒ドレッシングの作り方
【材料】
・米麹甘酒(ノンアルコール)…大さじ3
・米酢…大さじ1
・しょうゆ…小さじ1/2
・ごま油…数滴
すべての材料をよく混ぜるだけ。まろやかな酸味とやさしい甘さが絶妙で、口当たりのやさしいドレッシングになります。
甘酒ドレッシングの海藻チキンサラダ
【材料(2人分)】
・鶏むね肉…100g(ゆでて細く裂く)
・きゅうり…1/2本(スライスして塩もみ)
・サラダほうれん草または水菜…ひとつかみ
・乾燥海藻…適量(水で戻す)
・青じそ…2枚(細切り)
・甘酒ドレッシング(上記の分量)
【作り方】
すべての具材をボウルで混ぜ、甘酒ドレッシングをかけてよく和えるだけ。

このサラダは、鶏肉で気を補い、甘酒で肺と胃をやさしく潤し、きゅうりで熱を冷まし、海藻で余分な熱や湿気を整えてくれるバランスの良い一皿です。さらに、紫蘇が気の巡りを促し、さっぱりとした風味で全体をまとめながら、胃腸の調子もととのえてくれます。
冷たすぎず、でもすっきりと食べやすいこのサラダは、秋のはじまりに起こりやすい「乾燥」と「湿気」が入り混じる季節の不調を、やさしく整えてくれる一皿です。そこに甘酒の力が加わることで、消耗した気をすばやく補い、体の内側からふっと力がわいてくるような感覚をもたらしてくれます。
季節の変わり目に、食べることで心と体をととのえる――そんなやさしい習慣を、甘酒とともに始めてみませんか。
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