夏の「赤い食材」で心をととのえる(第5回:赤パプリカ編)
——心をすっきり、胃腸を元気に、血流をサポート
大暑のころ、強い日差しの下では体のエネルギーや血のめぐりがどんどん悪くなり、その上、胃腸も弱りやすく、新しい血をつくる力も落ちてしまい、心と胃腸のバランスが乱れがちになります。
中医学では、この時季は熱が体にこもることによって、胃腸の働きが弱まり、血流も滞りがちになると考えられています。ここで冷たい飲み物や生のフルーツばかり食べて体を冷やすと、胃腸を傷めてしまうと言われています。
体を冷やしすぎない赤い食材 、特に甘みがあって穏やかな赤パプリカは、心と胃腸を整え、血流を促す夏の味方です。
「心」と「胃腸」と「血流」にやさしい
赤パプリカは、体を冷やしすぎず温めすぎないバランスのとれた食材です。辛くありませんが、ほんのり甘く、実は「舌では感じにくい軽い辛味成分」も持っています。中医学では、「辛味には血流を促し、滞りを解く力がある」とされ、この性質が赤パプリカの秘密です。
唐辛子のように熱すぎることはなく、辛みはやさしく、性質も穏やか。体の熱をほどよくさまし、血の流れをなめらかにし、胃腸の働きを整えます。夏の大暑でよくある、食欲不振・気分の落ち込み・眠りの浅さ・肌のくすみ・血圧の乱れといった症状に効果があります。
現代の研究でも、赤パプリカにはビタミンCやカロテノイド、少量の辛味成分が豊富に含まれ、抗酸化作用、血管をしなやかに保つ作用、血圧や動脈硬化の予防に役立つことが分かっています。
赤・黄パプリカで心と胃腸を同時にケア
赤いパプリカは「心」に働きかけ、心の熱を落ち着かせ、血のめぐりを良くします。イライラや眠りの浅さ、貧血気味の人、手足の冷えが気になる人におすすめです。
黄色いパプリカは「脾(胃腸)」に働きかけ、胃腸の力を補い、消化を助けます。疲れやすい、食後にお腹が張る、顔色がくすみがちな人にお勧めです。
赤と黄を組み合わせることで、一方は熱を鎮め、一方は胃腸を補うというバランスが生まれ、夏の大暑に多い「心は熱く、胃腸は弱る」状態を整える理想の組み合わせになります。
赤パプリカの養生レシピ 3選
① 赤パプリカと鶏むね肉のサラダ
心を落ち着ける・血を補う・胃腸を整える・肌を整える
【こんな人におすすめ】
心が熱っぽい/貧血/イライラ/眠りが浅い/顔色が悪い
【材料(2人分)】
- 赤パプリカ…1個
- 鶏むね肉または鶏もも肉…150g
- レタス…大きめ2枚
- 紫蘇の葉…少々
- 黒ごま…少々
- オリーブオイル・米酢・塩…適量
【作り方】
- 鶏肉はゆでて細く裂く。パプリカは細切り、レタスは食べやすくちぎる。
- 全ての材料を合わせ、紫蘇とごまを散らし、オリーブオイルと米酢で和える。
【ポイント】
鶏肉は元気を補い、赤パプリカは心を整えて血を養い、紫蘇は気分をすっきりさせます。女性におすすめのサラダです。
※胃腸が弱く冷えやすい人は、冷やさず常温か温かい鶏肉で。
② 赤・黄パプリカとエビの炒め物
(血のめぐりを整え、体を潤し、ほてりをしずめ、気持ちを落ち着ける)
【こんな人におすすめ】
湿気や熱が体にこもりやすい/皮脂が多い/口が苦い/ベタつく汗/イライラ
【材料(2人分)】
- 赤パプリカ…1個
- 黄パプリカ…1個
- むきエビ…120g
- 生姜の細切り…少々
- 米酒・塩・オリーブオイル…適量
【作り方】
- エビは下ゆで、パプリカは角切りにする。
- フライパンで油を熱し、生姜を炒め、エビを加え炒める。
- パプリカを加えて軽く炒め、塩と米酒で味を調える。
【ポイント】
赤・黄パプリカは心と胃腸を整え、エビは潤いを補います。生姜は体を温めながら、臭みを和らげます。湿気と熱がたまりやすい体質の方に向いており、体を整えながらさっぱりとした味わいが楽しめます。
【注意】
湿熱体質の方は油を使いすぎない調理法で。エビにアレルギーのある方は避けてください。
③ ターメリック風味のパプリカライス
(胃腸を整える・血の流れを良くする・体を温める)
【こんな人におすすめ】
胃腸が弱い/食後にお腹が張る/冷えやすい/体力不足
【材料(2〜3人分)】
- 赤パプリカ…1/2個
- 黄パプリカ…1/2個
- 玉ねぎ…1/4個
- 米…1カップ
- ターメリックパウダー…小さじ1/2
- 塩・こしょう・オリーブオイル…適量
【作り方】
- お米を炊く際にターメリックを加える。
- 玉ねぎとパプリカを角切りにして炒め、塩で調味。
- 炊き上がったごはんと混ぜ合わせる。
【ポイント】
ターメリックは血のめぐりを助け、パプリカは血を養い胃腸を元気にします。
【注意】
ターメリックは体を温める性質があるため、体に熱がこもりやすい人は食べすぎに注意しましょう。胃腸が乾きやすく便秘になりやすい人は、青菜などの葉野菜と一緒にとるとバランスが取れます。
まとめ:赤で心を整え、胃腸も忘れずケア
大暑の時期は、体の余分な熱をしずめることと、気血(エネルギーと血)を補うことの両方が大切です。
赤パプリカは、鮮やかな色とほんのり甘い味わいを持ち、体を冷やしすぎない穏やかな性質で、ほのかな辛味成分が血流を整える力も備えています。ほてりをしずめ、血を養い、めぐりを良くする三つの働きが一度に得られる夏の心強い野菜です。上手に料理に取り入れることで、暑い夏を元気に過ごすだけでなく、秋の体調管理や予防にもつながります。