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ガーデニングでうつが軽減? 科学が語る「緑の効能」

メンタルヘルスの改善を求める人々にとって、屋外の自然の中にその答えが見つかるかもしれません。

最新の研究によると、医師がガーデニングや農業などの自然を基盤とした活動を「処方」すると、患者は不安やうつの症状が大幅に軽減され、全体的な幸福感が大きく向上することが報告されています。

「同じ地域に住む他の人たちと自然の中でつながることにも価値があります」と、ヨーク大学健康科学部の環境とメンタルヘルスの教授、ピーター・コヴェントリー氏は声明で述べています。
 

自然ベースの活動の利点

グリーン社会処方とは、コミュニティガーデニングや屋外での運動など、自然の中で行う活動に人々を参加させることで、精神的・身体的健康を向上させる治療法の一種です。

イギリスで行われた最新の研究によると、グリーン社会処方は生活満足度のスコアを有意に向上させ、不安を軽減する効果があることが明らかになりました。

この研究は『Health & Social Care in the Community』に掲載され、2022年2月から2023年3月にかけて、イングランド北部のハンバーおよびノースヨークシャー地域で実施されたグリーン社会処方プログラムの効果が評価されました。

参加者は、全体的な生活満足度や幸福感についての調査を受け、不安とうつの症状は病院不安うつ病尺度(HADS)を用いて評価されました。

自然の中での屋外活動を行った結果、参加者は以下のような変化を報告しました:

  • 生活満足度のスコアが平均5.10から6.67へ上昇
     
  • 自己価値感が5.36から6.84へ向上
     
  • 幸福感のレベルが5.15から6.71へ上昇
     
  • 不安のスコアが5.35から4.06へ低下

「不安とうつ病は、しばしば孤独感や疎外感から生じることが多いため、自宅近くでの共同活動――特に地域の環境をケアし改善する活動――に参加することが、気分の向上や不安の軽減に効果的なのは理解できます」と、ヨーク大学のピーター・コヴェントリー教授は述べています。

また、3~4か月にわたり長期間グリーン活動に参加した人々は、1~4週間の短期間のみ参加した人々よりも、より大きな改善を経験しました。具体的には、生活満足度のスコアが平均1.27ポイント、幸福感が1.35ポイント向上しました。

研究者によると、これらの改善は、短期的な認知行動療法(CBT)で得られる効果に匹敵するとされており、自然の中での活動が、従来の治療法の補完あるいは代替となる可能性を示唆しています。CBTとは、否定的な思考や行動パターンを特定し、修正を促す心理療法の一形態です。

さらに、関わった活動の種類によって、メンタルヘルスの改善度にも差が見られました。園芸やケア農業に参加した人々は、スポーツや創作活動に取り組んだ人々よりも、自己価値感や幸福感の向上が顕著でした。こうしたポジティブな効果は、18歳から85歳までの幅広い年齢層、そして性別を問わず一貫して見られました。

「この介入がすべての人に効果的というわけではありませんが、初期のカウンセリングを通じて、社会処方者は患者やサービス利用者と一緒に、自然ベースの活動が適しているかどうかを話し合います」と、大学のメンタルヘルスおよび依存症研究グループの研究員であるトリッシュ・ダーシー氏は述べました。

 

自然がメンタルヘルスにもたらす利点

ニューヨークにある「Comprehend the Mind」の神経心理学者で所長のサナム・ハフィーズ氏は、エポックタイムズの取材に対し、自然の中で過ごす時間が、脳を絶え間ない騒音やスクリーン、日常のストレスから解放し、心を落ち着かせ、ストレスの軽減に役立つと述べました。

「公園や庭園などの自然環境は、忙しい都市環境ほど圧迫感がないため、人々がよりリラックスし、集中しやすくなります」と、ハフィーズ氏は語ります。

ウォーキング、ハイキング、ガーデニングなどの活動は体を動かすことで、気分やエネルギーを高める脳内化学物質――エンドルフィンやセロトニン――の分泌を促進します。

また、屋外での活動中に日光を浴びることは、気分の安定や全体的な健康を維持するうえで重要な役割を果たす「ビタミンD」の生成を助けます。

「自然は、今この瞬間に意識を向けてマインドフルネスを実践するのを助け、不安を和らげ、否定的な思考が広がるのを防ぐ効果もあります」と、ハフィーズ氏は述べています。

ハワイにある「The Ohana Addiction Treatment Center」の認定精神科医であり、最高臨床責任者を務めるマイク・マクグラス博士も、自然環境が心理的なマインドフルネスを促進することを認めています。「これによって、私たちはよりリラックスし、落ち着いた状態になることができます」と語ります。

ただし博士は、屋外での身体活動が有益である一方で、たとえば高強度インターバルトレーニングのような中~高強度の運動は、逆にストレスホルモン(コルチゾール)のレベルを上昇させる可能性があると指摘しています。「特にスポーツは競争的な側面があるため、それがプレッシャーやストレスを増大させ、結果としてコルチゾールの上昇につながることがあります」と付け加えました。

彼はまた、「運動はメンタルおよびフィジカルの健康に有益ですが、リラックスできる自然の中での散歩のほうが、多くの運動よりも『単純に心を落ち着かせる』効果がある」と述べました。

患者は、かかりつけ医を通じて、または「リンクワーカー」との相談を通じて、地域の自然ベースの活動に参加できる「グリーン社会処方プログラム」にアクセスすることができます。これらのプログラムは、コミュニティガーデン、公園、ウォーキンググループ、その他の緑地と人々を結びつけることを目的としており、場合によっては地域のコミュニティ組織を通じて提供されることもあります。

(翻訳編集 日比野真吾)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。