人生最初の1千日が鍵! 砂糖制限で未来の健康を守る

新しい研究によると、妊娠中から生後2年以内に砂糖を抑えた食事を取ることで、成人後の慢性疾患リスクが大幅に減ることがわかりました。

研究チームの調査では、受胎から1千日以内に低糖食を実践することで、成人後の糖尿病リスクが35%、高血圧リスクが20%も低下し、それぞれ発症時期も4年と2年遅れることが示されました。このように、幼少期の糖分摂取量が将来的な健康に大きな影響を与えることが示唆されています。

USCドーンズライフ経済社会研究センターの主任経済学者であり、本研究の筆頭著者であるタデヤ・グラツナー氏は、「健康を守り、子供に最良のスタートを提供するためには、幼少期から砂糖摂取を抑えることが重要です」とエポックタイムズで語っています。

食料配給から学ぶ糖分制限の効果

この研究は、第二次世界大戦中に実施されたイギリスの食料配給制度(1942~53年)を活用して、幼少期の糖分制限が成人期の健康にどう影響するかを調べたものです。この時期に実施された配給制度は、戦時中の食料不足の中で砂糖を含む食品の摂取量を公平に制限し、栄養バランスを保つものでした。

配給制度が行われていた間に生まれた人々は、母親の食事や幼少期の食生活で低糖環境に置かれていましたが、配給が終了した後に生まれた世代は砂糖摂取量が急増した環境で育ちました。

戦時中の配給制限下では、1日約40グラムの砂糖が割り当てられており、現在の栄養指針に合った量でした。しかし、配給終了後は1日約80グラムと倍増し、缶詰や乾燥フルーツ、菓子類の消費が増加しました。

 

幼少期の栄養が成人の健康に与える影響

研究によると、妊娠中や幼少期に配給制度の影響を受けた子供たちは、ほとんど配給を経験しなかった子供たちと比べ、成人後の2型糖尿病や高血圧のリスクが約3分の1減少したことがわかりました。受胎から最初の1千日間(妊娠期間と生後2年間)は、長期的な健康において極めて重要な時期とされ、この間の栄養が成人期の健康に影響を及ぼすことを示しています。

研究は「胎児期発達仮説」に基づき、母体の健康状態(栄養不足など)により、胎児がエネルギーの使い方やホルモンの調整を行い、これが「セットポイント」として成人後まで影響を残すとしています。例えば、胎児期に栄養不足に適応して代謝を低下させると、成人後もエネルギー利用に関わる恒常的な影響が残ると考えられます。

幼少期は「甘味嗜好(または依存)が形成される重要な時期」とされており、幼少期に大量の糖分を摂取すると、生涯にわたり糖分摂取量が増える可能性があります。研究では、配給制度下で育った成人は、配給制度を経験しなかった人と比べ、中年以降の砂糖摂取量が少ない傾向が見られました。また、母親の低糖食も保護効果がありましたが、特に生後6か月以降も低糖環境が継続された場合には、慢性疾患リスクの低減効果が顕著だったとしています。

研究では、妊娠中の母体栄養がリスク低減に3分の1の影響を及ぼし、生後1年までの糖分制限を追加するとさらにリスクが大幅に減少することを確認しました。特に女性でその効果が顕著で、動物実験では女性の方が糖分依存や血糖コントロールの悪化が見られやすく、これが2型糖尿病リスクを高める要因としています。

胎児期のみで糖分制限を行った場合、2型糖尿病の発症が約1.5年、高血圧は半年遅れましたが、生後1年以上の期間も含めた制限では、2型糖尿病の発症が約4年、高血圧が約2年遅れる結果となりました。これにより、離乳食の内容が成人後の健康において、妊娠中の母体の栄養以上に重要だとわかりました。

「UK Biobank」のデータには幼少期や母体の食生活に関する詳細な情報が不足しているため、仮説を十分に検証することはできなかったと、筆頭著者のグラツナー氏は述べています。この研究はさらなる調査の必要性を示しつつ、幼少期からの砂糖制限が成人後の健康に貢献する可能性を示唆しています。

 

健康への広範な影響

この研究は、幼少期の低糖摂取が長期的に高血圧や2型糖尿病のリスクを下げることに焦点を当てていますが、その効果はこれら以外の健康分野にも広がる可能性があります。

研究を主導するグラツナー氏によれば、現在も低糖環境が慢性炎症、肥満、認知機能、さらには経済的成果に与える影響についての調査が続けられていて、「慢性炎症や肥満度、経済的な成果に対するポジティブな影響の兆候も見られています」と述べています。

 

砂糖摂取量を減らすための推奨事項

世界保健機関(WHO)の食事ガイドラインでは、2歳未満の子供は「添加された糖」(加工食品や飲料に加えられた糖分)の摂取を避けるように推奨しています。また、2歳以上の子供や大人も、添加された糖の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満で1日あたり約50グラム(ティースプーン12杯分)に抑えることが望ましいとされています。添加された糖には、すべての添加糖や、果物や野菜のジュース、ピューレに含まれる自然な糖が含まれます。

さらに摂取量を5%未満(約25グラム)に減らすことで、過体重や肥満、虫歯のリスクがさらに低減し、健康に多くのメリットをもたらします。

WHOは、2歳未満では添加された糖の摂取をゼロにすること、また成人は摂取エネルギーの5%未満に抑えることが理想的としている(Shutterstock)

 

添加糖が含まれる主な食品例

「添加糖」は食品の調理や加工時に加えられる砂糖で、高果糖コーンシロップやブドウ糖、糖蜜なども含まれます。添加糖が多く含まれる食品には以下のようなものがあります。

甘い飲料 炭酸飲料、エナジードリンク、甘味入りティー、スポーツドリンク

デザートやお菓子 クッキー、ケーキ、ペストリー、キャンディ、アイスクリーム

朝食用シリアル 多くのシリアル、特に健康食品として販売されているものも含む

朝食用シリアルには多くの添加糖が含まれているため、注意が必要である(Shutterstock)

 

フレーバーヨーグルト フルーツ入りや風味付きのヨーグルト

調味料やソース ケチャップ、BBQソース、パスタソース、ドレッシング

缶詰フルーツと果汁 シロップ漬けの缶詰フルーツや果汁

フレーバーミルク チョコレートやバニラ味の牛乳、植物性ミルク

グラツナー氏は、保護者や介護者への栄養教育の重要性を強調し、食品企業がより健康的なベビーフードを提供する責任を持つことの必要性を訴えています。また、子供向けの甘い食品の販売や価格に関する規制の強化も重要だと述べています。

「親がより良い情報や環境、適切なインセンティブを得られれば、子供や自分自身のために砂糖摂取を簡単に減らせるようになります」とグラツナー氏は語ります。「とはいえ、ホリデーシーズンの楽しみを奪うつもりはありません。誕生日ケーキやキャンディ、クッキーなどの甘いご褒美は、時には楽しむべきものです」

(翻訳編集 華山律)

執筆活動を始める前、レイチェルは神経疾患を専門とする作業療法士として働いていた。また、大学で基礎科学と専門作業療法のコースを教えていた。2019 年に幼児発達教育の修士号を取得した。2020 年以降、さまざまな出版物やブランドで健康に関するトピックについて幅広く執筆している。