世界中でポリウレタンフォームの使用量が増加している一方で、これらのフォームから作られたマットレスやスポンジなどの製品は、廃棄時に埋め立てや焼却が行われることが多く、深刻な環境汚染を引き起こしています。しかし、デンマークの科学者たちは、ポリウレタンフォームをより効率的かつ経済的に再利用する方法を発見し、汚染問題の解決に貢献しています。
ポリウレタン(PUR)は、多用途に使用される高分子材料で、「ポリオール」と「イソシアネート」の化学反応によって生成されるプラスチック素材です。これにより、低速タイヤ、マットレス、スポンジ、風力タービンのブレード、ケーブルなどが製造されます。統計によれば、2022年には世界のポリウレタン生産量は約2600万トンに達し、2030年までには3130万トンに達すると予測されています。
従来のポリウレタンのリサイクル法は非効率的です。主な理由は、ポリウレタンが熱硬化性材料であるため、通常の加熱や再成形による再利用が不可能だからです。多くは粉砕し、イソシアネートを加えて接着される方法でリサイクルしてきましたが、その効果は非常に限られており、最終的には埋め立てや焼却処理が避けられませんでした。
また、多くの化学的なポリウレタンリサイクル作業は、主に軟質ポリウレタンフォームの解重合に焦点を当てていました。これは、多くの商業用軟質ポリウレタンフォーム製品が、異なるイソシアネートとポリオールの共重合体で構成されているためです。しかし、これらの製品を分離する際には有毒な物質が発生する可能性がありました。
今回、約100年の歴史を持つデンマークのオーフス大学の研究者たちは、「酸分解プロセス」と呼ばれる新しい方法を用いて、軟質ポリウレタンフォームを効果的に分解し、再利用可能な原材料に変えることに成功しました。この研究成果は、6月末にグリーンケミストリー誌に発表されました。
研究者たちが採用した「酸分解プロセス」の鍵はコハク酸にあります。コハク酸は解重合剤(ポリマーを分解するための物質)として使用され、軟質ポリウレタンフォームを効率的に分解してトルエンジアミンコハク酸イミドに変換し、これを加水分解、またはルテニウム(Ru)金属を用いた触媒水素化によって、最終的にジフェニルアミン(TDA)とポリオールに分解します。
これらの物質は、新たなポリウレタン材料の製造に使用でき、ジフェニルアミンは新たなイソシアネートの製造に再利用できるため、リサイクルに非常に有利です。
研究者たちがコハク酸を選んだ理由は、コハク酸が天然で入手しやすい酸であり、食品添加物やプラスチック製造によく使用され、一部の生分解性ポリマーの原料にもなることが証明されているためです。また、他の化学物質を使用せずにポリウレタンと反応できることも利点です。
実験では、まず酸分解された軟質ポリウレタンフォームをコハク酸環境に浸漬させ、内部のポリオールは容易に分離しました。その後、水酸化ナトリウム溶液を用いてアルカリ分解を行い、ジフェニルアミン関連物質を得ました。同時に、無毒の二酸化炭素を多く放出できました。
この方法によるポリオールとジフェニルアミンの回収率は83%に達し、市販の化学剤を使用した接着回収効果と同等の成果を上げています。
また、研究者たちはこの技術を硬質ポリウレタンフォームに応用し、他の種類のポリウレタンにも拡張できるかを検証しました。実験結果では、その効果は軟質 PUR フォームの回収率よりも悪く、原料の一部しか回収できませんでした。この方法にはさらに改良の余地があります。
硬質ポリウレタンフォームは、分子構造が複雑でリサイクルが難しい素材ですが、全体のポリウレタン市場の25%を占めています。主に冷蔵庫、住宅、住宅地の温水鋼管の断熱材として使用されています。
オーフス大学の学際的ナノサイエンスセンター(iNANO)の準教授、ステファン・クヴィスト・クリステンセン氏は、同大学のニュースルームで、この方法は規模を拡大するのは容易ですが、消費者からのポリウレタン廃棄物を処理するためにはさらに研究が必要だと述べ、循環経済に組み込むには、まだ長い道のりが必要であるとしています。
(翻訳編集 清川茜)
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