腎不全の兆候を見逃さない! 予防で透析を回避しよう

前日、45歳の外来の患者さんが訪れてきました。彼は過去一度も病院へ行ったことはなかったそうです。若い頃に、排尿時に尿が泡立つ症状はしばしばありました。しかし、痛みもはなく、かゆくもなかったため、気にはしませんでした。近頃、体がだるくて、食欲もなく、風邪を引いたような状態が続いていたため、初めて病院へ行く気になって、当クリニックに来ました。

すぐに血液検査を行い、尿毒素の数値が非常に高いと判明し、その日のうちに彼を緊急入院させ、透析を始めました。彼はまったく信じられない様子でした。家を出る時に、風邪を見てもらうつもりで病院へ行くと家族に言ったのに、一生透析を受けなければならなくなることは思ってもいなかったのです。

台湾では、腎臓科を受診した当日に透析を受けるほど気づかないうちに進行した患者さんが腎臓疾患を持つ人の20%を占めています。透析原因の9割は慢性腎不全です。症状が出てから透析が必要になるまで、通常20~30年の時間が要します。なぜ気づかれないかといいますと、慢性腎不全はほとんど症状がなく、或いは出ても症状が軽いため、見過ごされることが多いからです。
 

どのような症状が現れたら注意が必要でしょうか?

次に腎不全の初期症状を10ご紹介します、ランキングは症状の重さではなく、現れる頻度に基づきます。症状が次から次へと現れる場合、透析せざるを得ない状況に近づいている印となります。
 

第10位、 腰の鈍痛

腎臓は腰の両側に位置しており、腎臓に問題が発生すると、腰に鈍痛を感じます。10位にランクインしている理由はよく現れる症状ではないからです。多嚢胞腎泌尿器感染、或いは尿路結石や先天性腎臓病による水腎症、または全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強直性脊椎炎などの自己免疫性腎臓病で多く見られる症状となります。
 

第9位、 皮膚のかゆみと黒ずみ

腎臓機能が低下すると、皮膚にかゆみや黒ずみが生じることがあります。これは代謝で生じた老廃物がうまく体外に排出できないことによるものです。腎不全の末期によく見られる症状です。糖尿病患者や血液中リン濃度の高い人、副甲状腺機能亢進症の患者、または加工食品や重金属を過剰に摂取した場合にもよく見られます。

研究によると、腎機能が低下している人はよくかゆみが出ます、特に夜間に激しいです。小さなニキビのような非常にかゆい発疹が現れます。この発疹には普通の軟膏が効かないため、腎臓疾患専用のローションでケアするか、皮膚科で光線療法を受ける必要があります。透析で尿毒素を除去することで、かゆみを大幅軽減できます。
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第8位、 夜間頻尿

夜間頻尿とは、寝る前や起きる際の排尿を除き、睡眠中に1回以上トイレに行くことを指します。

ふくらはぎの筋力が低下し、下半身にむくみがある慢性腎不全の患者さんは、夜間頻尿になりやすいです。日中は体の水分が下半身に溜まりますが、寝ている時は体が水平になるため、水分が上半身に戻り、血液循環に入ります。これは、寝る前に大量の水を飲んで、夜中に何度もトイレに行く時の状態とそっくりです。

夜間頻尿は睡眠の品質を低下させ、十分な睡眠を取れません、したがって、抗利尿ホルモンの分泌が減少し、尿を濃縮できなくなるため、夜間頻尿がさらに悪化する一方という悪循環に陥ります。

ふくらはぎの筋力が低下し、下半身にむくみがある慢性腎不全の患者は、夜間頻尿になりやすい(Shutterstock)

 

第7位、 息切れと胸の圧迫感

腎臓機能が低下すると、呼吸困難や息切れ、胸の圧迫感が生じます。理由は、体内の水分や尿毒素が正常に排出されないため、心肺機能が低下してしまうからです。たとえば、よく見られるのは胸膜で胸水溜り、肺水腫、心不全、不整脈、心膜まわりの水溜りなどが原因で、呼吸困難を誘発することがあります。
 

第6位、 筋肉のけいれん

腎臓機能が低下すると、筋肉のけいれんも起きやすいです。起きる原因は、体内の電解質バランスが乱れ、腎臓疾患による食事制限からくる栄養不足(低カルシウム血症、低マグネシウム血症)に貧血が加わることによる筋肉への酸素供給不足、そして、尿毒素によるアシドーシス(血液の酸化)など見られます。特に高齢者や糖尿病をもつ腎臓疾患の患者さんは発症しやすいです。
 

第5位、 下肢の浮腫と尿が泡立つ

急性や慢性の重度糸球体腎炎患者にはよく下肢浮腫と尿の泡立ちが同時に現れます、腎臓の糸球体の炎症が長引いて、タンパク質が不足しているのが原因です。

糸球体腎炎になった場合、尿が泡立つ以外に、血液中のアルブミンの低下にもなりやすいので、この時、腎臓糸球体のろ過率がまだ高くても、重度な下肢浮腫が早くも現れます。
 
もちろん、糸球体腎炎以外の腎臓疾患の患者さん、例えば、糖尿病、高血圧、痛風による腎不全の患者さんも、腎臓糸球体のろ過率が30より下回ったため、重度の損傷と認め、尿の泡たちと浮腫の症状も見られます。
 

第4位、 高血圧

高血圧は慢性腎不全でよくある症状です。早い場合ステージ3の段階に現れることもあります。腎臓は血圧を調整する重要な臓器の一つであり、水分や電解質、レニン・アンジオテンシン系を調節することで血圧を管理しています。腎臓機能に障害があった場合に、体内の血圧をうまく調整できなくなり、これは腎性高血圧といいます。高血圧は腎臓機能障害の印であり、腎臓疾患を悪化させるきっかけでもあります。

高血圧は腎臓機能障害の印であり、腎臓疾患を悪化させるきっかけでもある(Shutterstock)

 

第3位、 貧血、めまい、倦怠感

貧血、めまい、倦怠感は、ほとんどの慢性腎不全患者から見られる症状です。腎臓はエリスロポエチンというホルモンを分泌し、骨髄で造血を促進させるので、腎臓は赤血球を生成する上で非常に重要な器官の一つです。

腎臓機能の低下と共に、体内のエリスロポエチン濃度が低下し、骨髄での赤血球を産生する能力も低下します。さらに、血液中の尿毒素が出来上がった赤血球を破壊し、赤血球の寿命を短縮させることで、腎性貧血を誘発します。通常、女性はステージ3、男性はステージ4から症状が現れます。

腎性貧血を改善するには、鉄分やビタミンB群を補充するだけは効果が限られています。エリスロポエチンの注射がより効果的です。
 

第2位、 吐き気と嘔吐

吐き気や嘔吐は末期腎臓疾患でよく見られる尿毒症状であり、腎臓疾患患者が透析を受けざるを得ない主な原因でもあります。透析で尿毒素をきれに除去しない限り、吐き気や嘔吐が続き、最終的に食事さえ喉を通らなくなります。

食べたものが代謝によって老廃物にできて、体外に排出されます、うまくいかなければ、尿毒素が体内に蓄積し始め、限度を超えますと、体は食事を受付しなくなります。

重度な貧血、糖尿病及び消化器系統疾患に持病を持つ患者さんは吐き気や嘔吐の症状が出やすいし、また早期に出ることも多いです。
 

第1位、 深刻な疲労感

尿毒素が継続的に蓄積、貧血、アシドーシス、電解質異常が原因で、体が深刻な疲労状態に陥りがちです。長引く風邪のような疲労に似ていますが、いくら休んでも回復はしません。

症状は頭痛、めまい、ぼんやり感、ひどい場合は眠気や昏睡状態になります。疲労感は腎機能の低下に比例しており、重度の貧血や糖尿病を患い、また加齢、脳の退化、身体能力が弱くなる腎臓疾患患者さんは特に疲れやすいです。疲労感は尿毒素の増加とともに次第に深刻になります。

疲労感は腎機能の低下に比例しており、重度の貧血や糖尿病を患い、また加齢、脳の退化、身体能力が弱くなる腎臓疾患患者は特に疲れやすい(Shutterstock)

 

最後に

以上は腎臓疾患症状ランキングのトップテンでした。あなたに当てはまる症状があったでしょうか。

一つか二つ当てはまるなら、腎臓疾患とは限らず、専門医に診てもらったほうがお勧めです。同時に三つの症状があれば、腎臓疾患になる確率が大幅に上がります。五つの症状が現れたら、透析を受ける可能性を否定できないほど重症になったかもしれません。

上記の症状に気づいたら、病院で検査を受け、腎臓機能を確認しましょう。残りの人生が透析を受け続けざるを得ない最悪な事態を避けるために、早めに検査し早めに治療しましょう。

(翻訳編集 正道 勇)