台湾の漢方医が語る健康法 「万病は情から発する」(中)

(続き)
 

人には「自己修復機能がある」

温医師は、こう言います。「私は、多くの患者さんと接しながら、その話を聞き、患者さんが自分の気持ちを整理できるようにしています。そうすると、患者さんの病気のうち半分は治るのです」

それは、温医師が患者さんを治すのではなく、患者さんが「自分を探し当てる」ことだと言います。それがうまくいけば、何よりも患者さんの気持ちが楽になって、体調も良くなるのです。

人が病気になるのは、医師のせいではなく、やはり患者さん側のどこかに原因があるのです。人にはもともと「自己修復機能」があります。「漢方医の治療は、その自己修復機能を調整することだ」という温医師は、次のように言います。

「あなたは、もともとその機能を持っています。だから私(医者)は、余計なことをする必要はありません。ただ、どの部分の線がつながっていないか、どの部分に緩みが生じてしまったかを診断して、そこを調整してあげます。あなたが回復すれば、以後は、自分で自分の治療ができるのです」

温医師によれば、外傷についても、心の状態が良ければそれだけ早く治ります。また、伝染病も例外ではないと温医師は言います。例えば、インフルエンザなども、心の状態によって感染する人と感染しない人に分かれます。

感染する人にはどこかに隙があって、菌やウイルスが侵入したに違いありません。いっぽう、心が楽観的で穏やかであり、また精神的に強い人は、伝染病にかかりにくいだけでなく、ケガをしても回復が早いのです。
 

自然に従うことで「宇宙の法が医を正す」

「自然」とは、宇宙が運行する理のことです。人体は宇宙から来ています。だからこそ人間も、宇宙の法則に調和した「共鳴」をしなければなりません。これは、西洋医学とは全く異なる、伝統的な漢方医学の考え方です。

西洋医学は、解剖学から人体を理解しようとします。それは、言い換えれば、地球を基点とする人類つまり「地球上にある人」を診察しているだけなのです。

これに対して漢方医学は、魂や精神の在り方から人類を見極め、宇宙観から人体を理解するため、その医療の対象となるのは「宇宙のなかの人」なのです。

温医師は「漢方医学によると、人には魂、神(精神)、心、意、志などがあります。これらの精神的な動きは皆、宇宙とつながりをもつ内臓の系統に象徴されるものです。そのため、宇宙と内臓は共振しているのです。人は病気になることもあります。宇宙との共振が、アンバランスになることもあります。だから私たち人間は、何を言うにせよ、何をするにせよ、天に相応しなければなりません。感情の上でも、自然に合わせて、決して無理をしてはいけないのです」
 

加工食品を避け、運動は昼間に屋外で

では、どのように「自然に合わせる」のでしょうか。具体例を挙げましょう。
結婚を例に取れば、もしも相手に対して感情的に不本意なことがあっても、パートナーに無理な要求をしてはいけません。そして、生活そのものを、できるだけ自然と共鳴させるのです。すなわち「日が昇れば働き、日が沈めば休む」ということです。

サプリメントでビタミンCを摂るよりも、天然の果実を食べたほうが良いに決まっています。加工された食品ではなく、天然の食物を食べることです。水分も適量を補給します。暴飲暴食は避けましょう。
エアコンを使用することは、自然ではありません。黒く日焼けするために、わざと日光浴するのは、非常に不自然なのです。

(つづく)

陳柏年