高市大臣が描く日本の未来!
核融合発電とは? 危険な放射能の可能性がある現在の核分裂に代わり、太陽が行っている核融合反応を地上で行い、地上に太陽と同じ仕組みの発電装置をもたらそうという試みだという。
日本だけでなく、米国、欧州、中国が必死に開発競争、あるいは国際協力を行っている分野で、これが成功すれば、1840年以降の石油をもとにした第二次産業革命に続く第三次産業革命となり、世界の仕組みを変えるような変革をもたらすと言われている。
核融合の場合、ウラン、プルトニウムも必要ない。ゆえに放射能も出ない。海の中に無尽蔵にある重水素と三重水素が材料だというのだ。
他国の開発状況
例えば、
昨年2月10日に「欧州トーラス共同研究施設(JET)」での実験では、2種類の水素を融合した時に発生するエネルギー量が5秒間で59メガジュ―ル(約11メガワット)と、過去最大を更新したという。
加えて米国エネルギー省では、昨年12月14日に投入エネルギーを上回る出力を得たと報道されたばかりだ。
各国の予定は、
- 米国: 2025年に実験炉、2030年初期には商用炉
- 英国: 2030年中期に商用炉
- フランス: ITER計画(世界7極の国際協力、日本も参加している)2020年に炉心建設開始、77%完成しているという。この状況を踏まえて、外国では核融合ベンチャー企業に巨額な投資が行われている。
そこで今回は、高市早苗・科学技術政策担当大臣が語る日本の核融合戦略をご紹介する。
核融合は世界を変える!
質問者: 高市大臣は、2021年10月の総裁選挙で、候補者の中で唯一核融合エネルギーへの投資の必要性を訴えておられました。
そして科学技術政策担当大臣として、2022年9月に核融合戦略有識者会議を設置されました。 2023年4月14日に、日本初の核融合戦略となる「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」が、政府で正式決定されましたが、今日はこの戦略についてお話を伺います。
まず最初にそもそも核融合エネルギーとは どのようなものですか?
高市大臣: まず、これがこの度決定したフュージョン・エネルギー・イノベーション戦略でございます(と言って、書類を嬉しそうにかざす)。核融合エネルギーというのは何かと言うと、重水素と三重水素、いわゆるトリチウムですね。こういう軽い原子核同士が融合して、ヘリウムに変わる際に放出されるエネルギーのことでございます。要は、原子力発電との違いというのは、ウランもプルトニウムも必要なく、それでも高レベルの放射性廃棄物は出ないというのが特徴なのです。この核融合エネルギーで使う燃料、重水素と三重水素という基本材料は海水中に無尽蔵に存在しているのです。
それから、発電の過程で、二酸化炭素を排出しないという次世代のクリーンエネルギーなんですね。だからこの核融合エネルギーというのが実現すると、この「エネルギーの覇権」というのが、資源保有国から 技術保有国に変わるという大きな可能性に特徴があります。
ロードマップ、実現を加速?!
質問者: その核融合発電なんですが いつ頃実現するんですか?
高市大臣: 元々文部科学省はこの核融合発電、今は「フュージョンエナジー」ということなんですが、この核融合発電の実現時期を2050年頃と言ってましたね。ちょっと遠いですよね。
ところが、文部科学省に核融合科学技術委員会というのがあって、その下にタスクフォースがあります。ここは技術的な発電時期の目標があるのですが、 発電時期の前倒しは可能だという検討結果が出ました。
諸外国を見てみると 欧米ではもう政府主導で、独自の取り組みを推進している。それに加えて核融合ベンチャー企業に対して、ものすごく巨額の投資が行われているのです。
アメリカの企業は、2025年には実験炉 2030年代の初期には 原型炉を稼働すると言っています。 だからもうすぐですね。
それから英国、イギリスの企業も2030年代の中期半ば頃には、商用炉を稼働するということです。
日本もやっぱりこの融合原型炉の発電実証時期と、コストをきちんと明確化して、原型炉を早期に建設するという目標を、掲げるべきだと思っています。
他方、フランスでやっているITER(イーター)計画に、日本も参加してますよね。だからこの進捗も踏まえながら原型炉開発をしていく必要もあると言われております。ITERのほうは、国際熱核融合実験炉といいますが、このITER計画では、世界7極の国際協力で建設が進んでいて、2020年から国際協力で建設が進み、この炉心の組み立てが開始されています。運転開始まで77%が完成していると言われています。
今の段階ではちょっと不確実性が高いので、今回のこのフュージョンエネルギー・イノベーション戦略では、日本はステージゲート方式ということにいたしました。つまり複数のステージを設定して、その都度評価して進めるプロジェクト管理方式なんです。ちゃんと進捗を管理しながら研究開発を加速し、具体的なアクションを重視して、そういう表現に落ち着くように一応はいたしました。
でも一刻も早くということで志を高く持っております。
日本初、核融合の国家戦略
質問者: 戦略の名称で核融合エネルギーではなく、フュージョンエネルギーという用語を使ったのは、なぜでしょうか?
高市大臣: これまでは核融合と呼んできたのです。 今でも学術用語や法令用語としては核融合で間違ってないのです。それで 正しいのですね。ところが、近年海外を見ますと、やはりウランを用いて核分裂させる原子力発電とは全く異なるものですから、この核融合の特性というものを踏まえて、しかも核分裂じゃないのです。核融合ですから 、核分裂と核融合を区別するためということで、核分裂との区別が1つの特性なんだと思うのです。しかし、エネルギー分野においてはニュークリアフュージョンではなくて、フュージョンという言葉が使われるようになってきているのです。 フュージョンというのは融合という意味です。苦労して作成した戦略は、日本初の核融合の国家戦略でございます。ですから、英語版に翻訳もして、海外にも発信をすることに決めました。だからやっぱり海外でも通用する言葉として、フュージョンと呼ぶことにしたのです。それで、これを日本がですね、2023年4月14日に完成させたと、日本初の戦略を完成させたというので、早速アメリカ大使館から問い合わせが来ておりまして、やはりすぐに、この説明をして欲しいと、言われています。
実はイギリスは、日本よりも早く 2021年の10月に戦略を起こしています。国家核融合戦略を発表しているのです。米国は2022年の3月に 10年戦略を策定するという発表はしたのですが、まだ戦略は完成していないのです。 勝った……、ということで、今、アメリカからも注目をされている戦略でございます。
日本の技術は凄い!
質問者: フュージョンエネルギーの分野で、日本の技術はどのぐらいのレベルなんでしょうか?
高市大臣: これがまた大したもんでございまして、あのITER計画では、もう日本企業が最先端の核融合機器製作に対応しています。 日本企業は技術的に圧倒的な強みを有しております。今年1月にイギリスの会社と日本の古河電機工業株式会社が、高温超電導線材、これの供給に関して合意をしました。 やっぱり超電動に関しては日本はすごいですから、これを一緒にやらしてほしいということで合意しました。それから特殊銅合金メーカーで有名な大和合金。中小企業でございますけれども、欧州の研究機関によるITER関係の調達で、見事、契約を獲得されました。それから京都フュージョニアリング、これは京都大学のスタートアップなんですが、イギリス政府主導の核融合炉の開発プログラムで、三重水素のエンジニアリングに関するノウハウ提供を受注しました。ということで、日本企業の技術を求めてですね、海外から日本へのオファーが非常に多い現状でございます。
今からスピンアウトで新会社、経済浮揚
質問者: 戦略の名称にイノベーションという用語を使っておられますが 日本の経済成長に早期に活かせる技術があるということですか?
高市大臣: このフュージョンエナジー、つまり発電そのものについては、ちょっと先かなと。諸外国を見ても早いところは2020年代と言っておりますけれど、実際には、2030年代と言われております。その発電の実現を待たずに、この関連技術の産業化に向けた競争というのが、すでに始まっております。 他の産業にこの波及効果を有するというのが、まさにこのフュージョンテクノロジーなんですね。日本企業が強いこの技術で、スピンアウト型の産業(企業が特定の子会社や事業を切り離し、新たな会社として独立させる言葉)を創出することを、私たちは目指してます。つまりその発電の時期を待つことなく、先に今の日本が強い技術で、他のものに活用して儲けていこうという話なんです。 例えば、超伝導技術は何に使えるかというと、医療分野でMRIの高度化・小型化に使えます。それから超伝導コイルを高精度で製作する技術、これも日本企業が持っている技術ですが、これは海洋調査船ですとか、宇宙船の外壁の精密加工に活用できます。それからITER計画の中で、日本企業が活躍していると申し上げましたが、リチウムとかベリリウムの回収技術があります。これは電動車のリチウム電池のリサイクルですとか、それから他のレアメタルの回収にも活用できます。だからすごいですね。もう発電を待たずに、どんどん日本が強みを持つ技術で、経済を活性化させていこうということも、この戦略の中に書かせていただきました。
今後の政府支援
質問者: 日本政府はこの戦略を実現するために、これから何をしていくべきだとお考えでしょうか?
高市大臣: やっぱりこのフュージョンエネルギーを、新しい産業と捉えることが大事で、せっかく初の国家戦略ができたんですから、まずは産業協議会を設立します。できたら今年中と考えています。
それからスタートアップやアカデミアの研究開発を、政府として支援します。
安全規制に関する議論も、もう始めても遅くないと思っています。それというのも、核分裂とは全然原理が違うので、そうすると原子力規制委員会とは全く別の規制主体が必要になるのですね。そのことも含めて議論を始めておかないといけません。
それからやはり人材育成のために、このフュージョンエネルギーの教育プログラムを開発します。こういったことを新たに始めようと思っています。
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