初秋、暑さは完全に収まっていませんが、空気は、秋の乾燥の特徴をはっきり現しています。乾燥した空気は肺に入り、肺を傷つけ、口や鼻の不快感、かすれ声、喉のかゆみ、乾いた咳や他の肺呼吸器系の様々な病気につながる可能性を高めます。肺のメンテナンスに注意を払わないと、非常に風邪を引きやすく、または肺や腸の乾燥や便秘などの病気にもつながります。
しかし、その解決策は甘く爽やかで、潤いに満ちた秋梨を食べることなのです。秋梨は涼性として肺に入り、肺を潤し、熱や咳、痰を取り除き、呼吸器系疾患の予防と治療、皮膚への栄養補給に特化しています。そのため、秋の代表的な果物であり、古来より治療効果が高く、「百果の宗(あらゆる果物中の主たるものの意)」と称されています。
梨は万能の健康果実
漢方医は、梨は草木の中で最も熱を下げられる果物だと見て、秋の梨を食べると利尿作用で、肺や胃腸の残りの熱を体外に、排尿を介して下げることができると判断しています。血と気の陰陽が正しい位置に戻り、内臓が自然に爽快で健康になるとされているのです。したがって、秋梨はまた「快果(第一番の果物)」とも呼ばれています。
肺の呼吸器系が正常に機能していれば、免疫系も自然と強化され、風邪も予防できるのですね。梨をたくさん食べる人は、食べない人や食べる量が少ない人に比べて風邪をひく確率がずっと低いという研究結果もあるのです。現代の医師が梨を「万能の健康果実」あるいは「総合医」と呼ぶ所以です。
『本草綱目』では、秋梨は「肺を潤し、痰を除き、火を弱め、腫れ物や酒を解毒する」と結論づけています。これは主に生で食べた場合の効能を指しています。熱を取り去り解毒する力が強く、強い酒を飲むことが多い人には非常に適していますが、脾胃の冷え性の人は、食べ過ぎてはいけません。冷えすぎて腹痛や下痢を起こす可能性もあるため、十分に注意すべきだとしています。
調理すると、肺と咳を和らげ、肌に潤いを与える
梨は氷砂糖や蜂蜜と一緒に煮込んだり、蒸したり、或いは直接水で煮るのも民間伝承の典型的な梨薬膳です。氷砂糖と蜂蜜も、熱を取り除き、肺を潤し、痰や咳の良い薬であるといわれています。一緒に煮込むことで、咳や痰を止めるために、肺を潤す役割を最も果たすことができます。同時に、加熱して食べるという穏やかな方法は、清涼感が減りますが、冷え性で下痢しやすい人には向いていますね。
古代中国の医学書『本草求原』には、梨の薬膳レシピが一つ載っていますが、これは唐の時代のものと言われています。ある道教の道士が唐武宗にこの梨を使った薬膳を作り、病気を治したそうです。その話は、ある年の秋、武宗李炎が病気になり、口や舌が乾き、胸が苦しく、息切れし、食欲がなく、薬も匂いのため飲み込めず、薬を飲むのを拒み、困り果てた医師は皆不安になりました。すると突然、一人の道士が助けに来て、秋の梨に蜂蜜、川貝(センバイ)と少しの生姜、甘草を加え、一昼夜かけて釜で煮てクリーム状の薬を作り、皇帝に献上しました。
皇帝は匂いを嗅いで、新鮮な香りが食欲をそそり、食べたら口の中で溶けて、苦味があります。しかし、その甘さのバランスが適切で、薬を食べている感じがしないのでした。李炎は非常に満足して、毎日時間通りに服用するうち、口や舌の乾燥、咳や熱、息切れやだるさなどの病気は全て治ったのです。これは、各種秋梨クリームの原型であると言われ、明と清の時代に、秋梨クリームは徐々に人々に広がりました。おそらく、秋梨を氷砂糖と蜂蜜で煮込んだ甘いスープは、秋梨クリームを簡略化したもので、肺の民間薬としては最も簡単で実行しやすいものとなっています。
腸を潤滑にし、便秘を防ぐ
漢方薬は、肝臓と胆嚢が互いに照らし合うのと同じく、肺と大腸も同様に協調すると考えています。肺が乾燥していれば、腸も影響を受け、両方が同じ五行の「金」に属するため、秋は非常に乾燥しやすく、通常は便秘しない人も、腸の水分不足で便秘になりがちなのです。梨は自然に腸を潤すことができ、言うまでもなく気を下げる性質があり、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促進することができるとされています。しつこい便の排除に威力を発揮するのです。
現代の研究では、梨は85%の水分を含み、果肉にいくつかの粗い粒子があり、「石細胞」の果肉であり、石細胞はリグニンとセルロースを多く含み、腸の蠕動運動を強化させ、便秘の予防と解消に一役買っているのだそうです。
肌を保湿し、美白し、かゆみを防ぐ
『黄帝内経』によると、肺は皮膚と毛髪を司り、呼吸を司るとありますが、これはどういう意味でしょうか? 肺は皮膚と毛髪の組織を担当し、全身の呼吸は肺の手に委ねられているという意味です。これは、鼻だけでなく、人体の皮膚のすべての毛穴が呼吸に関与していることを意味しています。
たとえばある人が、それを知らないで、金粉で皮膚を密封し、唯一鼻の穴だけ露出しましたが、すぐに窒息死してしまったそうです。人間の呼吸は、全身の毛穴が同時に参加する機能であり、肺はそれを管理します。乾燥しすぎて暑い場合は、血液が粘性乾燥し、皮膚も乾燥し、かゆみや水分不足のために炎症を起こし、また、弾力性を失うか、あるいは崩れて、大きな問題になります。
したがって、皮膚の問題は多くの場合、肺の問題から出てくるのです。良好な肺は、良好な皮膚と等価であり、より多くの梨を食べると、皮膚に潤いを与えることができ、美白や顔に栄養を与えるので、様々な皮膚病、かゆみの様々な症状によって誘発される乾燥と熱が、自然に緩和されるのです。
★棗梨スープ
効果:咳と痰を取り除き、脾と気を強める。
作り方:梨1個を洗ってきれいにし、適当な大きさに切って鍋に入れ、氷砂糖適量、紅棗(赤ナツメ)6個、生姜の薄切りを加え、柔らかくなるまで煮ます。紅棗は脾気を強め、解毒作用があり、梨も一緒に入れると咳を鎮める効果が強くなります。
★梨、蓮の実、銀耳スープ
作り方:蓮の実15グラム、白きくらげ(銀耳)10グラム、秋梨1個、氷砂糖適量
蓮の実、白きくらげは洗って水にさらし、秋梨はスライスして鍋に入れます。適量の水を加え、蓮の実に火が通るまで煮て出来上がりです。蓮の実は、トラブルだけでなく心もスッキリさせ、白きくらげは肺を潤し、熱を下げ、美肌を作ります。乾熱タイプの咳にも緩和効果があります。
食用禁忌
秋梨ペーストは糖分が高いので、糖尿病患者は食べないようにしましょう。 また、蜂蜜が含まれている場合、2歳未満の子供には適しません。
また、肺が冷えている人、つまり風寒風邪や冷え性の人にも適していません。
梨には利尿作用があるので、頻尿の人は寝る前に食べないようにしましょうね。
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