コロナ後遺症で脚が赤紫になる新症状、その検査方法と治療法とは?

最近、新型コロナウイルス感染症の後遺症(ロングコビッド)により、10分立つと脚に不快なうずきとかゆみを感じ、脚が赤紫色に変色したという33歳男性の症例研究報告が医学誌ランセットに掲載されました。

この症状は「肢端チアノーゼ」として知られ、脚の静脈の血流がうっ滞することで発症します。この男性は18カ月前から症状を患っていたそうです。

ウイルスが長期にわたる自律神経失調症を引き起こす可能性に関して、専門家らはようやく理解し始めましたが、今回の症例はその新たなエビデンスとなりました。

英リーズ大学のマノージ・シバン臨床准教授は、「コロナ感染前に肢端チアノーゼを発症したことのない患者が症状を発症した、特筆すべき症例だ」と述べています。

体位性頻脈症候群(POTS)とコロナ後遺症

この患者は、心臓専門医によって体位性頻脈症候群(POTS)と診断されました。座ったり横になっている状態から立ち上がる際に心拍数が極端に増加する血液循環障害で、立ちくらみ、失神、疲労感を引き起こすこともあります。

米国では推定50〜100万人が罹患しているとされる、比較的まれな症状で、年齢や性別に関係なく誰でも発症する可能性がありますが、15〜50歳の女性によく見られるといいます。

コロナ後遺症患者がPOTSを発症する正確な原因は不明ですが、この感染症を引き起こすウイルス「SARS-CoV-2」が自律神経系に与える影響と関係している可能性があります。このウイルスは、神経系に直接影響を及ぼすほか、心拍数、血圧、その他の自律神経を調節する神経に炎症や損傷を引き起こすことが分かっています。

POTSに既知の治療法はありませんが、医師は症状の管理に役立つベータ遮断薬、フルドロコルチゾン、ミドドリンなどの薬を処方する場合があります。

シバン氏は、「この症状を経験した患者は、それがコロナ後遺症や自律神経失調症の症状である可能性に気づかず、自身が目にした症状に不安を感じている。同様に、医師らもコロナ後遺症と先端チアノーゼとの関連性を認識していない可能性がある」と指摘しました。

コロナ後遺症患者の約3人に2人が自律神経失調症を経験

医療政策を研究する米国の非営利団体「カイザー・ファミリー財団(KFF)」の調査によると、コロナ感染者の約28%がコロナ後遺症を発症しているといいます。大多数の患者の症状が消えても、患者の11%はその後もコロナ後遺症の症状が続くようです。

コロナ後遺症に罹った成人2,300人以上を対象とした別のオンライン調査によって、67%が中等度から重度の自律神経機能不全を抱えており、これは最初のコロナ感染症の重症とは無関係であることが判明しました。つまり、コロナ後遺症患者のなかで自律神経機能不全が非常に蔓延しているということです。

慢性疲労症候群や線維筋痛症の専門家として米国で知られる認定内科医のジェイコブ・タイテルバウム氏は、「広範な研究により、コロナ後遺症が視床下部の機能不全を引き起こすことが示された」とエポックタイムズに語りました。視床下部は自律神経系の機能だけでなく、睡眠やホルモン調節も制御する、脳の非常に重要な部位です。

タイテルバウム氏は、治療をしなければ自律神経失調症が進行するリスクがあると言います。「視床下部の機能不全に伴い、自律神経系の他の重要な部分、たとえば、特に迷走神経と血管を制御する神経線維なども機能不全に陥る可能性がある」とのことです。

自宅でPOTSを検査し、治療する方法

タイテルバウム氏は、家庭で簡単にできる、POTSの症状をチェックするための検査方法について説明しました。

まず、10分間横になってから、脈拍数を確認します。次に、どこにも寄りかからずに一か所に立ち、10分間動かずに、2分ごとに脈拍を確認します。

その10分間で脈拍数が1分あたり20拍以上上昇した場合、起立不耐症で、1分あたり30拍以上上昇した場合、POTSだといいます。

タイテルバウム氏は、POTSの兆候がみられた場合に自宅でできる、症状を軽減するための簡単な治療法を推奨しています。 

適度に運動をとり、塩分と水分の摂取量を増やし、起きている間は中程度の弾性ストッキングを着用するのが良いといいます。

「膝まである着圧ストッキングも効果はあるが、太ももまでの丈の方が効果的だ」とのことです。

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。