実は豚の角煮にはもう一つの名前があり、それを「東坡肉(トンポーロー)」と言います。古典をたしなむ方はピンとくるかもしれませんが、ここの「東坡」とは宋王朝期の文豪・蘇軾です(ささざわ / PIXTA)

みんな大好き「豚の角煮」 実はとある文豪と深い関係

つやつやでとろっとした食感が口いっぱいに広がる「豚の角煮」。中華料理でお肉といえば、この逸品を真っ先に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。日本に限らず、本場中国でもご馳走の定番で、庶民の間では「紅焼肉(ホンシャオロー)」という名前で親しまれています。

実は豚の角煮にはもう一つの名前があり、それを「東坡肉(トンポーロー)」と言います。古典に詳しい方はピンとくるかもしれませんが、ここの「東坡」とは宋王朝期の文豪・蘇軾です。なぜ文豪の名前が料理名となったのでしょうか。ここでは人々に親しまれている一つの言い伝えをご紹介します。

ときは11世紀後半、蘇軾は杭州の太守として任命され、現地に赴任しました。現在は観光名所となっている西湖ですが、当時全く手入れがされていない状態で、野草が生い茂っていました。大雨が降れば洪水を起こし、地元の人々の生命と財産を脅かしていました。

そこで蘇軾は民衆を動員し、野草を払い、河道に溜まった土砂を除去させました。さらに除去した土砂を使って堤防を作り、水害を防ぎました。蘇軾が作った堤防は「蘇堤」と呼ばれ、地元の有名な景勝地となりました。

百姓はみな蘇軾に大いに感謝し、旧正月になると多くの豚肉を贈りました。蘇軾は、堤防の工事に携わった地元住民にも功績はあるとして、肉料理を振る舞うことにしたのです。料理人に豚肉を調理させ、出来上がったらお酒と共に出すよう伝えました。

しかし、料理人は豚肉をお酒と共に調理するよう言われたのだと勘違いしてしまいました。肉を煮込む時にお酒を一緒に入れてしまったのです。

するとどうでしょう。出来上がった角煮はいつもより増して色ツヤがよく、程よい香りが漂っているではありませんか。口当たりも優しく、脂身も食べやすい仕上がりとなりました。「特製角煮」を食べた人は皆その美味しさに感動し、蘇軾の号である「東坡居士」にちなんで「東坡肉」と呼ぶようになったそうです。

以降、「東坡肉」は人々に広く食されるようになり、杭州の名物としてその名を轟かせています。

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