人はどうすれば病気にならないのですか?
正気があれば、人は病気にならない
この問いに対する答えは、理屈としてはそれほど複雑なものではありません。 中国伝統医学理論の元祖である『黄帝内経』(通称『内経』)は、古くからこの問いに答えてきました。 一言で言えば、「人の体に正気があれば、邪気は干渉しない」つまり、自分の体に正気があれば邪気が侵入することはなく、病気になることはないということです。
正気とは何か?
人の体の中にある陰陽の気が正常な状態に保たれていることを意味します。 陰陽学説では、疾病は陰陽の相対的バランスが崩れ、そのために偏盛あるいは偏衰がおこり、その結果としておこるものであると考えています。伝統中医学は体の中の陰陽のバランスの崩れを正すものです。
私たち一般人がこのことを知ることは非常に重要で、病気の治し方はわからなくても、正気が乱れず、陰と陽のバランスは崩れなければ、病気は防げるのです。正常な状態に保つことで、病の邪気を寄せ付けません。ですから、病気を避けたいのであれば、普段の健康管理は万全にしなければなりません。
正気が内にあるときの見分け方
「目には見えない人体の陰陽バランスを調整し、維持するにはどうしたらいいのでしょうか」と質問する人がいます。まず、健康な状態とはどのようなものかを理解する必要があります。その判断の最も簡単な方法のひとつは、
「食欲は普通にあるが、少食でも、過食でもない状態で、時間が経つとお腹が空いて食べたくなるが、普通の量を食べたら自然に食べたくなくなること」。
もうひとつは、頭寒足熱(ずかんそくねつ)で、頭は涼しく、足は暖かいということです。頭は青空のようにすっきり澄んでいて熱もなく、おでこは触るとひんやりとしています。一方、足は暖かくなければなりません。
しかし、最近多くの人は逆です。頭が熱くのぼせ、足が冷えています。その理由は、心臓と肺が熱く、腎臓が冷たいからです。腎臓は水に対応し、五行説では「水」として分類されます。陽の気が虚すれば 水は蒸散および気化することができず、心臓は熱く、肺は乾燥します。
熱い火が下降しない場合、心臓は熱くなり、肺のよくない気で、気分が悪くなります。めまいを感じ、落ち着かなくなり、喉は乾き、目は乾いて充血し、頭は熱くのぼせます。
これは陰と陽のバランスが崩れている証拠ではないでしょうか? 上からの熱(陽気)は下がらず、腎臓の経絡に入ることができず。腎臓の虚寒は水が蒸発せず、心臓と肺を養うことができません。上は熱く、下は寒くなります。正常な状態とは全く逆になっています。
したがって、病気を治すために中医学者は心臓と肺の余分な陽気を下げたり、清熱といって、余分な熱を追い出します。 もちろん、長い間病気を患っている人の場合、人によっては陰陽両方に不足があり、病状がより複雑になり、病気を調整することが難しくなります。ですから、正常な状態を知り、その状態を維持することがとても大切なのです。
陽気を維持する方法
では、どうやって正気を保つのでしょうか。『内経』には、”人は天地の気で生まれ、四季の法則よって形成される “とあります。 これはどういう意味でしょうか? 天地の気の動きによって人間が作られることを伝えていますが、その仕組みはどうなっているのでしょうか。それは四季の一定のサイクルに従って進化していくのです。だから、私たちは宇宙の自然法則に従って生きなければなりません。
自然法則: 春に生まれ、夏は育ち、秋に収穫し、冬に蓄える。一日の朝・昼・夕方・夜が春夏秋冬であるという法則にしたがって、毎日早起きして、春のエネルギーに反応して肝臓の気を養い、昼は体が少し汗ばむくらいに動き、水を多めに飲んで、夏の熱エネルギーに反応して心臓の気を養います。
夕方には陽の気を下降させ余った熱を発散させ、日が暮れたら秋のエネルギーに反応して、肺の気が収束して下降できるようにします。食後の散歩は良いですが、激しい運動は避けましょう。
夜、冬の気を受けて、陽の火の気を沈め、人体の腎臓の気がそれに相当し、肺の気から下りた陽の気を蓄えます。腎臓が主体となって集めるため、陽の気を腎臓に蓄えて精に変えていきます。 翌日の仕事のために陽のエネルギーをしっかり蓄えておくのです。
ですから、夜更かしをしないでください。夜更かしをすると陽気が集まらず、吸収したり蓄えたりできず、腎臓が冷えます。陽の気が不足するため、翌日腎臓に水が上がらないので、肝臓の水が冷えません。これが朝起きて口が渇く原因です。もちろん激しい運動ができない理由もここにあります。
陽の気は冬や夜間は隠し外に漏れないようにしなければなりません。腎臓は骨髄や脳髄の生成もしているので、陽の気が漏れると、腰や膝が弱くなり、頭痛やめまい、記憶力の低下など、様々な病気に見舞われるでしょう。疫病がきたら、どうやって抵抗すればいいのでしょうか。
人体の小さな世界 、経絡は陰陽を調節する
人体は小さな世界、小宇宙であり、宇宙間のすべての事物はすべて木・火・土・金・水という5種類の基本物質により構成されていると考えられています。
正気と邪気は互いに関係しています。正気と邪気との相互作用・相互闘争の状況も、すべて陰と陽という観点からとらえることができます。正気には陽気と陰精の2つがあり、病邪も陽邪と陰邪に区別されます。陽邪が作用すると、陽が盛んになり陰を損傷して熱証が現れます。
また陰邪が作用すると、陰が盛んになり陽を損傷して寒証が現れます。陽気が虚して陰を制することができなくなると、陽虚陰盛による虚寒証が現れます。また陰液が虚して陽を制することができなくなると、陰虚陽充による虚熱証が現れます。
ですから、陰陽を整えるということは、経絡の気血を整えて、陰と陽の過不足を正すということです。陰陽のバランスが崩れた原因が何であれ、陰陽五行の医学理論によれば、経絡から治すことができるのですから、病気は治ります。 正常な状態に戻すように調整すれば、病気は治るのです。
したがって、病気の予防や治療には、この基本原則を理解することが大切であり、人体が小さな宇宙であることを忘れてはなりません。