実験動物のラット。2005年8月3日撮影 (China Photos/Getty Images)
実験動物のラット。2005年8月3日撮影 (China Photos/Getty Images)

ラットもリズムに合わせて踊った…東大チームが発見

東京大学の研究チームが音楽やダンスの起源と発展を解き明かす重要な手がかりとなり得る研究結果を発表した。ネズミの一種であるラットが、人間と同じように音楽のビートに合わせて体を動かしていることが分かった。本研究は11日付で米科学誌「Science Advances」に掲載された。

人間は音楽のリズムに合わせて、自然と体を動かすことがあるが、これを「ビート同期」と言う。人間のビート同期運動は、音楽のテンポが120〜140BPMで最も顕著になることが分かっている。しかし、人間以外の動物がビート同期運動を示すテンポについては明らかにされていなかった。

今回、チームはビート同期運動のメカニズムとして、「身体原因説」と「脳原因説」の2つの仮説を検証した。

身体原因説は、身体特性がビート同期運動を決めるという考えだ。例えば、人間の歩行テンポは1分間に約120歩だが、多くの音楽のテンポも120〜140BPMだ。一方、ラットはより速い歩行テンポを示すので、速いテンポの音楽にビート同期しやすくなるはずだ。

脳原因説は、脳の動特性(ダイナミクス)がビート同期を決めると考える。脳のダイナミクスは小動物もヒトも共通しているため、この説が正しければ、小動物も人間と同じテンポの音楽にビート同期しやすくなると予想される。

チームは、ラットの頭部に無線加速度計を取り付け、音楽提示中のラットの頭部運動を計測した。音楽にはモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」が用いられた。その結果、ラットも人間と同じ120~140BPMの音楽でビートに合わせて身体を動かし、より早いテンポではビート同期運動は小さくなることがわかった。

さらに、聴覚野で脳活動を調べたところ、脳活動も原曲のテンポに対して顕著にビート同期することが判明した。このことから、ビート同期運動は身体特性ではなく、脳の動特性から生じることが示唆された。

ビート同期を生む脳活動が動物種を超えて観察されたことは、ビート同期の進化を解き明かす第一歩になり、音楽やダンスの起源と発展を解き明かす重要な手がかりとなることが期待されている。

研究グループは今後、リズムに加えて旋律やハーモニーといった音楽の他の特徴においても、脳内メカニズムとの関連性の解明に取り組む予定だとしている。

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