木更津駐屯地に暫定配備したものの運用が見合わされていた輸送機CV22オスプレイが、9月7日以降、飛行を再開する事になった。
停止した理由は、米空軍が8月以降、V22オスプレイをクラッチの不具合を理由に一時飛行停止した事に伴ったもので、防衛省の方でも追加点検を施し、結果、安全は確保されているという評価になった。
オスプレイに関しては、米軍が普天間基地に配備されてから、「安全性に問題がある」「うるさい」などと反対する声が上がっている。
他の軍用機にも墜落、事故などがある中、オスプレイはマスコミにも大いに取り上げられ、一部では「欠陥機」扱いをしている報道も見受けられる。「オスプレイは危険」という印象を抱いている人も少なくないだろう。
オスプレイの事故率は高くない
オスプレイの安全性について、防衛省が2012年に発表した米軍機の事故率のデータによると、オスプレイの事故率は平均よりも低い。10万飛行時間当り、事故基準で最も重大なクラスAの飛行事故の件数を事故率で示したものはオスプレイの場合1〜2となっている。因みに日本にも同系型機が配備され、大規模な災害救援でも活躍している大型輸送ヘリコプターCH-47は3〜4だ。
その後2019年に発表されたオスプレイの事故率は2.5と増加しているものの、それでもCH-47の事故率には及ばない。
この事故率のデータは整備ミス、操作ミス等の機体以外の要因で発生する事故も含まれているため、必ずしも機体そのものの安全性を示すものではないが、このオスプレイの実際のデータからすると、日本での反対運動は少なくとも事実認識に乖離があるように見受けられる。
民間の旅客機や軍機を問わず、そういったトラブルや事故から逃れられる機体などない。そもそも本当に機体の安全性に改善しようもない問題があるのなら、米軍が不採用にしているだろう。安全問題があれば、それは自軍の敗北をも招きかねないからだ。
オスプレイが採用される性能上の理由
そんな反対運動が繰り広げられている中、日本はなぜオスプレイを採用しているのだろうか?その理由はオスプレイが持つ特殊な能力にあるようだ。
V-22オスプレイの外見は非常に特徴的で、ヘリコプターのローター位の大きさの回転翼が両翼端に付いている。
回転翼は上に向けると垂直離着陸、水平にすれば高速飛行ができ、ヘリコプターと同様に垂直離着陸能力を持ちながら、それを上回る高い航続性や速度能力を有する。
わかりやすく言うと、固定翼機とヘリコプターの良いところを兼ね備えた機体がオスプレイだ。固定翼機は速度が速く早く航続距離が長いが、ホバリングが出来ない。固定翼機と、ヘリコプターはホバリングができるが、速度が遅く航続距離が短い。
陸上自衛隊が現在保有している輸送ヘリ(CH-47JA)と比べると、オスプレイは2倍の最大速度と3倍の航続距離及び飛行高度をもっているという。滑走路も無いような島などが点在し、全長が約1200kmに及ぶ南西諸島地域の防衛活動を考えた時に、広い範囲を迅速に展開できるオスプレイを採用するという選択は合理的な選択だといえるだろう。
最近、中共艦船が尖閣諸島付近に頻繁に侵入し、その挑発は常態化してきている。仮に中共が日本の南西諸島に侵攻を目論んでいるとするならば、オスプレイの配備は、何とかして阻みたいと考えるのではないだろうか。
緊張が増す海上交通路
石油を始めとするエネルギーを輸入に頼っている日本は南西諸島が脅かされると日本のシーレーン(海上連絡交通路)に多大な悪影響を被る。最近、中共軍が台湾侵攻をするという話題があがっているが、もし実現したら、すぐ物価に響くだろう。
中国(中共)軍の軍事的圧力が増す中、防衛省は2018年3月末、自衛隊にとって初めて本格的な水陸両用作戦機能を備えた水陸機動団とともに、輸送航空隊を編成した。オスプレイは17機装備されている。
防衛省は暫定的に木更津駐屯地にオスプレイを配備しており、5年後には佐賀空港(佐賀市)に配備する計画を進めているが、住民の不安を取り除くことが課題となっている。
原因はどうであれ、確かに何回か墜落した機体が自分の家の上空を飛ぶ事に不安を抱くことは自然な事かもしれない。しかしオスプレイが配備されない場合の現実的なリスクというのも考慮に入れるべきだろう。
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