実際に絵を描くとき、全ての光景を画家の視野の中心に集めることは不可能なので、下の写真のように、必ず対象物の一部は視野の端に出てきます。
遠近法と関係のないことはひとまず置いておいて、写真の下部のタイル道に注目しましょう。よく見ると、タイル道の横線が僅かに曲がっていることが分かります。通常の線遠近法では、タイル道の横線を平行直線のように描くでしょう。
ここで、曲線遠近法と呼ばれる遠近法の専門用語を紹介します。人間の目の網膜は本来半球形であるため、この遠近法は人間の目で見た画像に近く、特に視野の中心を超えた対象物の描写に対して、線遠近法よりも正確になります。歴史上の多くの画家はこれを発見し、彼らの作品で関連する試みを行いました。曲線遠近法は主に線遠近法より広範囲のものを描く時に用いられます。
上記の事例は、同じレベルであっても、異なる学術理論は特定範囲内でしか機能せず、この範囲を超えるとうまく適用できなくなるということを示しています。この場合、異なる範囲に適用できる理論に置き換えたり、補足したりして、人為的な特定の固定観念を突破することができるのです。
絵画において、一般認識と異なる事情もあります。絵画は二次元の芸術として分類されますが、技術の視点から見ると、実際は三次元のものでもあるのです。ほとんどの絵画は2.5次元(物体の3次元的形状を、1つの方向から見える範囲で表したもので、2次元と3次元の中間という意味)の特徴を持っており、つまり、長さと幅に加えて、わずかな深さも備わっているという意味です。ここでの深さとは、単に顔料自体の厚さではなく、色の層の違いによって構築される空間を指します。
美術の技法を例に挙げましょう。例えば、人物を描く時、最初に裸の人物を描いてから、半透明の色使いで服を描く画家は少なくないと思います。このように肌の色の上に服の色を塗っているので、空間的な深みが生じます。顔料の透明性により、見る人は内側と外側の色の層の違いが分かります。
更に、霧や雨を表現する風景画を描く時も、類似の技法が使われます。これらの技法により、たとえ実際の奥行きが0.5ミリメートルもなくても、空間をしっかりと表現することができます。
このような2.5次元の絵画技法が人間の視覚感覚により一定の効果を発揮することができると知った一部の画家は、絵を創作する時、しばしば顔料を積み重ねて、油彩やガッシュなどの作品を浅浮彫りにしたりもしました。中には、立体感や空間を表現するため、鼻などのはみ出している部分をすごく厚く塗ってしまい、結局紙面が破れたり、顔料が剥がれたりして、失敗した画家もいます。このように、芸術理論を応用するとき、望ましい効果を達成するためには、材料の性能と合わせる必要があります。
(つづく)
(翻訳編集 季千里)
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