【中国故事】拾った大金を持ち主に返した商人に訪れた奇跡(1)

昔、中国の江南の地に呂という一家がいました。呂家の長男、呂玉は王家の女性を娶り、次男、呂宝は楊家の女性を娶りました。末っ子の呂珍はまだ結婚していません。

呂玉の妻は男の子を出産し、幼名は喜児と名付けられました。6歳のとき、喜児は隣家のお兄さんと一緒にお祭りに行った際に誘拐されました。呂玉夫婦は息子を何日も探し続けましたが、全く見つかりませんでした。

呂玉は息子をさらった者に怒りを覚え、息子の消息が全くわからず、悲しみにくれていましたが、家でじっとしていられないので、お金持ちから資金を借りて、綿布の行商をしながら、息子の居場所を探し続けることにしました。

それから4年の時が流れ、呂玉は行商で多少儲けましたが、息子の消息はわかりませんでした。5年目、呂玉は再び綿布を仕入れ、他の土地へ出かけました。その後しばらくして、仕事が一段落ついたので、呂玉は久しぶりに家に戻ることにしました。

その途中、陳留に滞在した時、ある日の早朝、呂玉は宿のトイレの横で200両の銀という大金が入った青色の布袋を拾いました。財布の持ち主は、さぞ困っているだろうと、呂玉はねこばばなどせず、袋を持ったまま持ち主を待ちました。しかし、一日待っても持ち主は現れず、彼は仕方なく翌日出発しました。

南宿州に滞在している時、呂玉は宿で、揚州で穀物の商売をやっている陳朝奉という商人と出会いました。

陳と雑談していた時、呂玉は陳朝奉が少し前に陳留で200両の銀が入った金袋をなくしたことを知りました。呂玉は、もしかしたら財布の持ち主ではないかと思いましたが、ここでは心に留めておいて、様子を見ることにしました。翌日、陳朝奉が揚州に帰ることを聞いた呂玉は、自分もそこを通るからと言って、陳朝奉と旅路をともにしました。

陳朝奉の店にやってきた呂玉は、それとなく、彼がお金を落とした時のことや、金袋の見た目などを詳しく尋ねました。すると陳朝奉はすべて言い当てたので、呂玉は保管している金袋を本人に返しました。

まさか大金を拾った人がわざわざ届けてくれると思いもしなかった陳朝奉は、申し訳ないと思い、謝礼として落としたお金の半分を受け取ってくれと申し出ました。しかし呂玉はそれを断りました。

陳朝奉は呂玉にとても感謝し、お酒の宴会を準備しました。そして、呂玉のような良い人に出会えることはめったにない、呂玉との縁を深めようと、陳朝奉は自分の娘との縁談を考え、息子はいないかと尋ねました。

すると、呂玉は目から涙を流し、行方不明になった息子のことや、自分の妻がもう子供を産めなくなったこと、そして、養子を引き取って商売を継がせることなどを話しました。これを聞いた陳朝奉は呂玉に、数年前に知り合いが連れてきた奉公人の男の子がいるが、今年13歳で名を喜児と言い、非常に利口なので、養子にしてはどうかと勧めてきました。その話を聞き、呂玉は自分の息子と同じ名前で、しかも同い年であることに本人に会う前から心を惹かれました。

(翻訳・郡山雨来)

杜若