2022年4月、フランス西部の海上に浮かぶ袋 (Photo by FRED TANNEAU/AFP via Getty Images)

「プラ食べる」酵素発見 何世紀もかかる分解、24時間以内も可能に=米テキサス大

米テキサス大学の研究者によれば、「ボトルや包装は分解するのに数世紀かかるといわれているが、化学的に分解する酵素の発見によって、処分場や汚染地にある数十億トンのプラスチックをクリーンアップできる」とのこと。研究成果は4月27日付の『ネイチャー』誌に掲載され、生物学的解決策を見出す取り組みの大きい一歩を踏み出した。

同大学コックレル工学部と自然科学部の研究者は機械学習モデルを用いて、PETaseと呼ばれる天然酵素に新しい変異を起こさせ、「プラスチックを食べる酵素」を作り出した。

PETaseは、飲料などの包装に使われているPETを細菌が分解することを可能にする酵素である。機械学習モデルは、酵素のどの変異が「低温かつ迅速に、廃プラスチックを解重合するか 」を予測する。

同大学によると、PETaseは、プラスチックの分解と化学的再生によって構成される「循環プロセス」を完結させるもので、通常何世紀もかかる分解が24時間以内に終わってしまうケースもある。

研究者らは、51種類のプラスチック容器、5種類のポリエステル繊維・布地、PET製水筒を用いて、この酵素の有効性を証明した。この酵素は「機能性・活性・安定性・耐性PETase」、略して「FAST-PETase」と名付けられた。

国連環境計画によると、毎年4億トンのプラスチック廃棄物が発生しているという。

同大学は、「世界におけるプラスチック・リサイクル率は10%未満でしかない。一般的には処分場での埋立や焼却が行われているが、高コストのうえに有毒ガスを発生するなど環境にも有害である。また、リサイクルはエネルギー集約型であることが多い」と語っている。

研究者らは、この技術は世界初であり「これまで商業規模で持ち運びができ低温かつ効率的に酵素を製造する方法はなかった」と指摘している。FAST-PETase酵素は、このプロセスを50℃以下で実行することができる。

同大学オースティン校のマッケッタ化学工学科のハル・アルパー教授は、「この最先端のリサイクルプロセスを活用する可能性は業界を問わず無限にある。廃棄物処理業界はもちろんのこと、あらゆる分野の企業に対して自社製品のリサイクルを牽引する機会を提供する。より持続可能なアプローチを通して循環型プラスチック経済を構想し始めることができる」と述べている。

現在、この酵素を産業用や環境用に使うためのスケールアップを行っており、特許も申請した。処分場や汚染地のクリーンアップに利用される可能性が高い。

オーストラリアでも同様な研究が進んでいる。オーストラリア国立大学の研究者らもまたプラスチックを「食べる」作用を持つ酵素を開発し、プラスチックを再利用可能な分子まで分解することができる。今後2年でスーパーマーケットから出る廃棄プラスチックのリサイクルに試験運用されるという。

フランスのバイオテクノロジー企業Carbios社も酵素リサイクルを利用したプロセスの高速化を進めており、今年中にはスケールアップ実験に入るという計画がある。

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