オミクロン株「風邪に似た症状」にも油断は禁物

新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが、すでに2年以上続いています。

従来のウイルスに加えて新たにオミクロン変異株が出現し、新たな緊張感が走る現状について、欧州のウイルス学専門家である董宇紅博士の解説をまとめました。

「新たに出現したオミクロン株」その二つの特徴

各国で「一体いつ終息するのか」という不安や疑問が持ち上がっているなか、新たに出現したのがオミクロン株です。

オミクロン株は、感染力は強いものの、将来的には「感冒化(普通の流行性感冒のようになる)」とも言われています。しかし、本当にそうなるのでしょうか。

昨年12月、英国の医学雑誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に掲載された2つの研究は、新種であるオミクロン株について、以下の2つの兆候があることを示唆しました。

1、感染後、風邪に似た5つの症状がでる
オミクロン株の最初の5種類の症状は、鼻水、頭痛、疲労感(軽度から重度まで)、くしゃみ、のどの痛みです。

これらは全て普通の風邪を引いたときに最もよく見られる症状で、デルタ株との明らかな違いはありません。

ご記憶にあると思いますが、デルタ株の前に流行したアルファ株は、「発熱」「せき」「嗅覚や味覚の消失」が主な症状でした。

しかし、今回のオミクロン株はそうした特徴が少ないため、つい「ただの風邪」と思ってコロナ感染を自覚することが遅れる可能性があります。これは感染拡大防止の意味においても、十分な注意が必要です。
 

オミクロン株感染の初期に見られる5つの症状は、「鼻水」「頭痛」「疲労感」「くしゃみ」「のどの痛み」など普通の風邪によく似た症状です。(健康1+1/大紀元)

2、重症化率は50~70%減少
英国保健安全局の分析によると、オミクロン株に感染した人は、デルタ株に感染した人に比べて緊急看護を必要とする割合が31~45%低下しました。

さらに、重症化して入院する割合も50~70%低くなっていることが判りました。
 

オミクロン株の重症化率は、従来株に比べて50~70%減少しました。(健康1+1/大紀元)

しかし英国保健安全局は、現時点におけるオミクロン株の患者数はデルタ株のそれより少ないとしながらも、実際には「重症のため入院を必要とする患者数が今後、膨大になる可能性がある」と強調しています。

これは、従来株に比べて、オミクロン株の感染力が強大であることによります。

オミクロン株は、わずか半分以下の短い期間で、デルタ株の感染者数を上回る数字を挙げてしまいました。

そのため、いかに重症化率が低いと言っても、分母となる感染者数が膨大になれば、重症化する人の数が多くなることは必然でしょう。
 

オミクロン株による感染者増加のスピードはすさまじく、デルタ株の半分以下の短期間で、累積の感染者数が同等にまで達しています。(健康1+1/大紀元)

「感冒化」の判断には、まだ観察を要します

オミクロン株が今後どうなるか。通常の風邪(感冒)のようなウイルスに変化するかどうかを判断するには、まだ観察を要します。

オミクロン株がもつ26個のスパイクタンパクのなかには、確かに感冒ウイルスの遺伝子が1つ含まれているため、それがウイルスの特性に変化を与えている可能性があります。

言いかえれば、新型コロナウイルスと感冒ウイルスHCoV-229Eの両方に感染した患者がいて、この2つのウイルスが人の体内で遺伝子を交換したことにより、オミクロン変異株が生まれたことが推定されるのです。
 

オミクロン株の26個のスパイクタンパクのなかに、感冒ウイルス遺伝子が含まれています。(健康1+1/大紀元)

このような遺伝子は、ウイルスの機能である病原性や感染力を決定することができますが、今後、オミクロン株が「感冒化」するか否かについては、今のところはっきりしません。

その理由は2つあります。

1、オミクロン株の全体的な遺伝子は、感冒ウイルスとは全く異なる
現在のオミクロン株は、感冒ウイルス遺伝子が一部挿入されたに過ぎません。そのため、もし感染した場合に、「ただの風邪」に過ぎないと楽観視するのは禁物です。

2、オミクロン株について、まだ十分なデータが得られていない
病原性の程度、致死率の高低なども含めて、十分かつ詳細なデータは得られていません。そのため現段階では、推測以上の判断は不可能であり、少なくとも今後3~6カ月は観察しなければならないのです。

では、いま私たちができることは何でしょうか。

それは良好な衛生環境と生活習慣を維持するとともに、ご自身の心身の健康を保つことによって、いかなるウイルスにも負けない自然免疫力をもつことです。

(口述・董宇紅/翻訳編集・鳥飼聡)