明治時代に英国から日本へ伝わったカレーライスは、「日本の国民食」の1つと呼ばれるほど親しまれています。

インド人や日本人は、カレー粉を使った料理を好んで食べます。実はカレー粉は香りがよく、色が美しく、食欲を促進するだけでなく、がんの予防や治療にも効果があります。
 

「奇跡のスパイス」その秘密はクルクミン

多くの場合、カレー粉は数10種類の植物成分から構成されています。
にんにく、トウガラシ、コリアンダー、ウイキョウ、肉桂(シナモン)、ウコン、フェヌグリークなどを含みますが、現在の研究によると、これらの植物原料はいずれも一定の抗菌、抗ウイルス、血中脂肪低下、コレステロール低下、動脈硬化の抑制および抗がん効果を有するとされています。

世界の複数の研究によると、ウコンの一成分であり、カレー粉に多く含まれるクルクミンは各種のがんや脳機能退化の予防や治療に有効であることが示されています。そんなカレー粉を、科学者は「奇跡のスパイス」と呼んでいます。

カレー粉特有の成分であるクルクミンは、医療界でも注目されています。

多くの研究により、クルクミンは人間の脳内をきれいにすることができるとともに、記憶力の減退を避け、認知症を予防できることが判っています。またクルクミンは、大腸内壁のポリープを縮小させ、がん細胞の遺伝子を抑制し、細胞の炎症反応を抑えます。

『台湾聯合新聞』によると、約4500年前からインド人はウコンを薬物として使っていると言います。古代インドの医学体系『アーユルヴェーダ』の記載によると、民間ではウコンと牛乳を服用して風邪を治すとされています。ウコンはまた、古代インド医学で皮膚の潰瘍、アレルギー、糖尿病などの治療にも使われています。
 

ウコンがもつ予防効果の数々

複数の研究によると、ウコンは以下のような症状に関して、予防効果があることが示されています。

1、消化器系のがん
これまでの多くの研究によって、カレー粉に含まれるクルクミンが、各種がんの発生を予防し、炎症を抑え、関節炎などの症状を軽減するとともに、コレステロールを下げ、アルツハイマー型認知症を予防するなど、広範囲な予防効果があることが分かっています。

英国がん研究センターの責任者レスリー・ウォーカー氏は、「この研究成果は、クルクミンに含まれる天然物質が、食道がんなど消化器系のがんの治療薬として開発される可能性が高いことを証明しています」と語っています。

2、糖尿病
タイの国立大学であるシーナカリンウィロート大学の研究者は、境界型糖尿病(糖尿病に近い状態である)の人を被験者とする調査実験で、クルクミン類を250 mg含むカプセル6錠を毎日9ヶ月間摂取してもらったところ、「2型糖尿病への移行を避けるのに効果があるようだ」と発表しました。

実験は、研究者は240人の境界型糖尿病の成人のうち、無作為にクルクミンのカプセル群とプラセボ(調査用偽薬)群に分けて行われました。

9カ月後、プラセボ群は116人中19人が2型糖尿病を発症しましたが、クルクミン群は119名中ひとりも出ませんでした。

3、皮膚がん
米テキサス大学がん研究チームが最近行った動物実験によると、カレー粉に含まれるクルクミンが皮膚がんの抑性に役立つ可能性があることが判りました。

研究チームは、クルクミンがメラノーマ(ほくろのがん)の自己保護タンパク質の1つを阻害して、メラノーマを縮小させると明らかにしました。さらに、クルクミンは乳がん細胞の他所への拡散および転移を防ぐのにも役立つと言います。

4、認知症
カレー粉に含まれるクルクミンを食べることで、脳に関連する疾患を予防できます。米国の研究により、クルクミンは記憶力を改善して、脳の働きを助け認知症を予防するという研究結果が出ました。

アルツハイマー型認知症は、根本的治療が不可能であるため、予防に重点を置くほうが望ましいと言えます。クルクミンは抗炎症および抗酸化の効能をもつ物質であり、さらに老化防止の作用とともに、脳内血液の循環にも有益です。
 

ウコンを利用する上での留意点

台湾メディア『時報週刊』によると、台湾の漢方学堂北医伝統医学科の漢方医・唐佑任氏は、「ウコンに含まれるクルクミンは、未調理のままでは人体に吸収されにくいため、煮るか、油で炒めなければならない」と言います。

また、インドの研究によると、ウコンと大豆(その他の豆を含む)を一緒に調理すると、豆のレシチンがクルクミンに結合して腸での吸収率を高め、クルクミンの体内半減期が1.5倍延長されるといいます。

さらに、黒コショウと一緒に調理すると、特有のピペリンが腸のグルクロニドのリン酸化を抑制することができ、人体内でのクルクミン濃度の生物利用度を20倍に向上させることができます。

このように、すぐれた効能をもつウコンですが、すべての人に適しているわけではありません。専門家は、肝臓および腎臓に疾患をもつ人、胃潰瘍や胆管閉塞の症状がある人、よく徹夜する人、口唇裂のある人は食べない方がいいと忠告しています。

なお、ショウガ科の香辛料であるウコンには、子宮収縮を促進する作用があるため、習慣性流産が懸念される女性は、妊娠期間中とくに避けるようにしてください。
(翻訳編集・鳥飼聡)