お茶は長い歴史をもちます。
台湾でも、日本でも、お茶は非常に日常的な飲み物であり、その保健効果もよく知られています。ただ、なかには習慣的に「あまり健康的でない飲み方」をしている人もいるかもしれません。
「大カップ、氷入り、ガブ飲み」は体に良くありません
台湾ではよく見られる光景ですが、街の飲料店でテイクアウトする場合、例えば、緑茶やウーロン茶、ミルク紅茶などを大カップ(約700cc)に氷入りで買い、持ち歩きながら飲んでいます。
夏の暑い時期ならば、水分補給の意味でそれも無駄ではないかもしれませんが、実は、お茶の飲み方としてはあまり健康的ではなく、お薦めできない方法なのです。
お茶にも多く含まれているポリフェノールは抗酸化物質であり、体の炎症を抑えるはたらきがある栄養物質です。漢方医学でも、お茶は体の「火(ほてり)」を除いて熱を下げるのに最も適した飲み物と見ています。漢方では、この「火」を百病の原因と考えています。
ところが、冷たいお茶を飲むと、脾胃(脾臓と胃)を損傷しやすくなります。冷たい飲料は、飲めば飲むほど喉が渇き、保健どころか肥満や疲労などの症状を引き起こすこともあります。
お茶は「寒性」に属する飲み物
昔の人は、お茶を飲むことを、そのまま体の養生に生かしました。ただ、そのためにはちょっとした「技術」と、お茶の温度への注意が必要です。
お茶そのものは、その性質として寒性と温性の両面をもちますが、多くの場合は寒性に偏っています。明代の李時珍による『本草綱目』には、お茶について「温かい茶を飲むと寒気のせいで火が下がる。熱い茶を飲むと、茶は火の勢いを利用して全身へ広がり、酒や食物の毒を解消する」と記されています。
つまり、お茶を飲むことで体の炎症は改善されるのですが、そのためには、冷たいお茶ではなく、温かいお茶のほうが効果的なのです。
明医漢方連合診療所の主治医・葉啓民氏は、「お茶は確かに健康に良いのですが、その効果は飲む人の体質によって異なります」と言います。
若い人で、脾胃がつよい人は、お茶を多めに飲んでも大丈夫です。しかし、虚寒あるいは虚血体質の人は、お茶は控えめに飲むか、または飲まない方が良いと言えます。胃腸が弱くてお腹をこわしやすい人、胃痛を起こしやすい人も注意が必要です。
もう1つの注意点は、飲むお茶の量です。お茶を飲むには小さめのカップがいいでしょう。特に、緑茶や高山茶(軽焙煎のウーロン茶)などの寒性のお茶は、飲みすぎると胃を荒らすことがあります。
その点、紅茶は性質がマイルドで胃には比較的優しいですが、紅茶には凝集性があるため、「飲み過ぎると、胃に水がたまって消化吸収ができなくなります」と葉啓民氏は言います。
なお、良い茶葉を買うことができれば、自分で淹れて飲んだ方がいいですね。
市販されている安い茶飲料には、非常に安価で、どこから来たか知れない茶葉を使っているものもあるのです。
お茶の相性は、人それぞれです
市販されているお茶は、緑茶、烏龍(ウーロン)茶、紅茶などが最も一般的です。
緑茶は、発酵せず、摘み取った後すぐに「殺青(釜炒り)」をします。(注:日本の緑茶は、釜炒りせず、茶葉を蒸すことで発酵が進むことを抑えています)
緑茶は性質が最も寒性であるため、普通の人が、養生のためのお茶として常飲するのには適しません。しかし脾臓と胃が健康な人で、「火(ほてり)」が大きい場合は、適量の緑茶を飲むことで良い効果が得られます。
暑い夏には、緑茶を飲むことで少し暑さをしのげます。ただし、お茶は寒性に偏っていることが多いので、夏はお茶を飲むのに適した季節ですが、冬はお茶(特に緑茶)をあまり多く飲まないほうがいいのです。
ウーロン茶は、青茶とも呼ばれ、半発酵茶です。焙煎の深さによって、軽く煎った生茶(例、高山茶)、中程度に煎った半生熟茶(凍頂烏龍茶)、深く煎った熟茶(鉄観音)に分けられます。
煎りの浅い高山茶は、茶葉の新鮮で甘い口当たりを残していますが、寒性が強すぎて、飲みすぎると胃にダメージを与えます。
中焙煎の半熟熟茶は、焙煎時間が長いため、お茶がよりマイルドになっています。濃い焙煎の塾茶は、火気が強いため、体質が普段から熱に弱く、体が乾いており、のぼせやすい人にはあまり適していません。
「どのお茶が自分に適しているか分からない方は、中焙煎のウーロン茶からお試しいただくのが良いでしょう」と葉啓民氏はアドバイスします。
葉氏は、こうしたお茶は「年間を通じて飲むのに適している」とした上で、「胃に違和感がなければ、軽焙煎のウーロン茶や緑茶に移行してみてください」と言います。
紅茶は、完全発酵した茶葉で、性質は比較的マイルドです。身体が熱い人(ほてりがある人)は、紅茶でも飲む量に注意してください。
「老茶」は健康的なお茶です
一般的に、お茶は空腹時に飲むのに適しません。
特に緑茶や烏龍茶は、空腹時に飲むと胃痛を起こしますので注意が必要です。お茶が好きなイギリス人は、朝起きると熱い紅茶を飲むことがありますが、それは他のお茶に比べて紅茶の性質がマイルドで、胃にやさしいからです。
冬の寒い日には、温かい紅茶や、中・高焙煎のウーロン茶を飲むと良いでしょう。
飲茶による養生法の「技術」の一つとして、「老茶をつくって飲む」があります。
購入した新茶を長年貯蔵することにより、より養生効果のある老茶になるのです。一般的には、緑茶や烏龍茶など完全発酵していない茶葉を3年以上保存すると「老茶」になります。ただし、完全発酵した紅茶は老茶には向きません。
葉啓民氏は「私の曾祖父は何十斤もの茶葉を買い、それを長く保存しました。自分が90代になったときに、その味わい深い老茶を飲んだのです」と言います。茶葉は長く保存すればするほど、その性質が温和になり、薬用効果が出てくるのだそうです。
最後に葉氏は、「皆さんも緑茶やウーロン茶を多めに買って保存してみてください。年月をかけてゆっくり飲んでも、老茶ができますよ」とアドバイスしました。
(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)
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