米国ニューヨーク市の85 10th AveにあるGoogleのオフィス「Google Building 8510」の外壁には、Googleのロゴが飾られている=2019年6月3日(Drew Angerer/Getty Images)

米Google、香港当局へユーザーデータの一部を提供 反体制派への弾圧加担の懸念

11日付の香港フリープレス紙(HKFP)は、昨年7~12月にかけて香港政府が行ったユーザーデータの提供要請43件のうち、Googleが3件に応じたと報じた。これにより、昨年6月に香港の国家安全法が施行されて以来、米国のテクノロジー企業としては初めて、香港政府からのユーザーデータ要求に応じることになった。

Googleは、「生命への脅威」に関する1件と、「人身売買」に関する2件の計3件の緊急開示要請に対応したと発表した。また、今回の要請は国家安全保障に関わるものではなく、裁判官が署名した捜索令状に基づくものであり、Googleは政府によるユーザー情報の要請に関するグローバルポリシーに基づいて対応したとしている。

Googleは、提供した情報にはユーザーの「コンテンツデータ」は含まれていないと主張している。Google社は、政府からの要請があった場合、つまり氏名、電子メールアドレス、電話番号、IPアドレス、支払い情報など「非コンテンツデータ」であるユーザー登録情報を提供するとしている。

これは、Googleがユーザーデータに関する香港政府の要求の一部を満たしたことを意味する。しかし、昨年8月、Googleは、本社と米国司法省との間で二国間の刑事共助条約(MLAT)が合意されない限り、いかなる要請にも応じないとしていた。香港当局へのデータ提供を拒否することで、Googleは事実上、香港を中国本土と同じ土俵に立たせている。

データ専門家、香港IT産業選挙委員会の代表である黄浩華(Wong Ho-wa)氏はHKFKの取材に対し、顧客データをコンテンツと非コンテンツに分けるというGoogleの方針は、ユーザーにとって「不公平」であると指摘した。「どちらも個人情報の一部であり、同じ方針で取り扱われるべきである。また、非コンテンツデータは、法執行機関が調査目的で使用することがある。データが法廷で証拠として提示されなくても、(有罪判決のための)証拠探しに使う可能性がある」と述べた。

Googleがユーザー情報を香港当局に提供することで、中国当局による香港の民主活動家への弾圧を助長するのではないかという懸念もある。黄氏は、今年1月に英公共放送BBCのインタビューで、中国人ジャーナリスト師涛氏のケースを挙げた。

2004年の六四天安門事件15周年の前夜、師涛氏は個人のヤフーメールボックスを通じて、中国メディアに六四事件や法輪功について報道しないよう指示する中国政府の文書を、外国メディアに送った。その後、中国当局はこの文書が「国家機密」であると主張し、ヤフーは中国当局の要請に応じて師涛氏の個人情報を提供した。中国当局は「国家機密を外国に不法に提供した」という容疑で師涛氏を逮捕し、懲役10年の実刑判決を言い渡した。

(翻訳編集・王君宜)

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