誤って蝦(エビ)の国に入り、王女の夫になってしまった学生
唐の則天武后の時代に、ある唐の学生が新羅の使者と一緒に航海に出ましたが、途中、嵐に遭遇し、ある場所に流されました。
この国は非常に特殊で、老若男女を問わず、みんな長いヒゲを生やしており、人々が話す言葉は唐の時代の言語に似ています。この国は長須(ながす)国と呼ばれ、扶桑の諸島あたり(日本の近く)に位置しています。
長須国は農産物が豊富で、家並みも役人の名称も中国とは異なりました。そして、みんながこの学生に敬意をもって接してくれました。
ほどなくして、「長須国の王が君に会いたい」と、数十両の王宮の馬車がやってきました。学生は馬車と一緒に2日間旅をして、3つの城を通過し、ようやく兵隊に守られた城門にたどり着きました。
使者に導かれて広々とした高尚な宮殿に入ると、その先には威厳のある男性がいました。そう、この方がこの国の王なのです。
学生の敬意のある挨拶に対し、王も背筋を伸ばして挨拶を返しました。お互い親しくなると、王は学生に正式な称号を与え、そして、美しい王女を彼に嫁がせました。
王女はとても美しい方でしたが、頬やあごに数十本のヒゲが生えていたのです。地位も名誉も手に入れた学生は、とても満足していましたが、しかし、家に帰って姫に会うたびに気持ちが落ち込んでいました。
ある満月の夜、王が大宴会を開いたとき、学生は王の側室たちも長い髭を生やしているのを見て、「葉のない花は美しくなく、髭のある女も美しくない」という詩を作りました。 王は学生の気持ちに気づき、「王女の髭をまだ気にしていたのか」と大声で笑いました。
時間が流れ、学生と王女の間に男の子が1人、女の子が2人生まれました。異国の地ではあっても学生は幸せを感じていたのです。 しかし、ある日突然、学生は王や大臣たちがみんな心配そうにしていることに気づき、王に尋ねました。
海竜王に助けを求める
「まもなく我が国には災いが降りかかろうとしているが、それを救えるのはお前しかいない」と王は涙を浮かべてとても悲しそうな顔で話しました。驚いた学生は、「災いを取り除くことができるならば、私は死を恐れない」と言いました。
そこで王は使いの者に船を用意させ、2人の使者に学生のお供を命じ、「海竜王のところに行ってもらいたい。東の海の3つ目の湿地の7つ目の島である長須国が助けを必要としていると伝えてほしい。我が国の名を決して間違えてはいけない。我が国はとても小さい国なので、詳しく説明しないと分かってもらえないだろう」と言いました。それから王は涙を流して学生たちを見送りました。
学生は船に乗り込み、しばらく航海していくとある浜辺に着きました。そこの砂はキラキラと輝いていて、住民も背が高いのです。学生が竜宮城に入ると、そこは仏教寺院のフレスコ画に描かれた天上の宮殿のようで、非常に煌びやかでした。
学生は竜王に会いたいと申し出ました。竜王は学生の前に来て挨拶した後、一緒に宮殿に向かいながら、学生がここにやってきた理由を尋ねました。学生は竜王に長須国の災難を伝え、助けを求めました。竜王は急いで事情を調べさせたのですが、しばらくして外から使いの者が入ってきて、「王様、領内にそのような国はありません」と報告したのです。学生は詳しく事情を説明し、確かにこの国は存在していると強調しました。
竜王はもう一度使いの者を送って慎重に調査しました。 食事を終えた後、使者が戻ってきて、「この島の領域内のエビは、今月の王様の献立で使用することになったので、すでに捕えてあります」と報告しました。
海竜王は事情を理解したようで、「我が客はエビに魅せられたんだな!」と笑い、「私は竜王だが、1日3食とも天の采配に従わなければならず、好きなものを食べることはできない。でも今は、我が客のために食事の量を減らそう」と言いました。
竜王は学生を案内し、自分の食材を見せました。家ほどの大きさの十数個の鉄の檻の中に海老がびっしり入っていました。その中に、5、6匹の真っ赤な大きなエビがいて、学生を見ると、助けを求めるように勢いよく跳びあがったのです。「このエビこそ長須国の王だ!」
学生は悲しくて泣き始めました。 竜王はすぐにエビの王が入っている檻を開け、中のエビを解放しました。そして、2人の使者を派遣して、学生を中国に帰したのです。わずか一晩で学生たちは鄧州に到着しました。2人の使者を振り返って見ると、なんと彼らは2匹の巨大な竜でした。
(翻訳者 井田)
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