エアコン使用が欠かせない猛暑の日々。体に当たる冷気によって体調を崩すことが多くなりますので、ご注意を。
日本の皆様、お元気ですか。私は台湾の漢方医、胡乃文です。
エアコンの使用が欠かせない猛暑が続きますが、体に当たる冷気によって体調を崩すことが多くなりますので、十分ご注意ください。
冷気を直接体に当てないで
頭や首筋、背中に冷気が当たり続けると、頭痛や頸椎痛、肩こりになります。
前漢の時代に成立した中国最古の総合医学書『黄帝内経』のなかに「虚邪賊風避之有時」という記載があります。「風や寒さなどの邪を避けて、それらを体の経脈や筋骨、筋肉に、侵入させない」という意味です。
多くの人が職場や自宅にいて、エアコンの冷気が頭や背中に直接当たることで、頭痛や肩こり、疲労の症状を覚えたことがあると思います。
漢方医学によると、体の裏面つまり背中は督脈と膀胱経が通るところで、この2つの経脈が人の陽気をつかさどっています。そのため、背中にずっと冷風が当たると、陽気が損なわれて免疫力が低下し、風邪を引きやすくなったり、アレルギー症状が出やすくなることもあるのです。
エアコンの冷気が直接体に当たらないように、可能な限り、デスクや家具の位置を変えるなど工夫してみてください。
就寝中は、体温が下がり、人体の防御力が低下します。エアコンの冷気にずっと当たり続けることは避けましょう。
室内の空気を循環させて温度調整を
冷房の温度は、あまり低くせず、26度ほどにするといいでしょう。就寝時は28度くらいが適温と言えます。
エアコンで室温を下げても、温度にはムラがあって、どこか一個所だけ冷えてしまいがちです。そんな時は、室内の空気を循環させるサーキュレーターがあると便利です。
部屋の空気を、上下左右に混ぜて、室温を均一にすると体にも優しい環境になります。扇風機でも、ある程度代用できます。
冷房の効いた部屋では、長袖のシャツを着るようにしてください。保温の目的もありますが、冷気は皮膚を乾燥させやすいので、体表の水分が失われるのを防ぐためです。同じ理由で、就寝中にエアコンを使う場合は、必ず長袖のパジャマを着ましょう。
夜寝る際に冷房を使う場合は、タイマーを設定して、定時に切れるようにします。
うっかり一晩中エアコンが効きっぱなしの部屋で寝てしまったら。翌朝目覚めたとき、あなたの体がどうなっているか想像してみてください。体が冷え切ってしまい、だるくて、力が全く入らないほどの疲労感を覚えているはずです。その日は、とても仕事にならないでしょう。
エアコンには大抵タイマーがついていますが、2時間ほどで切れるように設定するのがおすすめです。私の自宅では、体調を崩さないように、就寝時のエアコンは1時間から2時間までと決めています。
冷房による肩こりに効くツボ「尺沢穴」
冷房による肩こりや頭痛には、尺沢穴(しゃくたくけつ)のツボを押して改善します
尺沢穴は、肘の内側、上腕二頭筋腱の縁で、親指側のくぼみがある場所です。強く押すと痛いので、このツボを軽く押しながら、頸椎をゆっくり回して首のコリをほぐします。
尺沢穴をマッサージすることで、冷房による肩こり、頭痛を改善することができます。
人間の体には「自然治癒力」がある
日本の皆様には不思議に思われるかもしれませんが、漢方医学は、汗をかく方法で多くの病気を治療することができます。
例えば、あなたが冷房の効いた部屋に長時間いて、体調が悪くなったとします。病院へ行けば、西洋医の先生が診察して、薬の処方箋を出してくれるでしょう。
しかし漢方の医者は、化学物質の薬を飲ませるのではなく、「熱いお粥を一碗食べ、そのまま布団に入って、汗をかいてごらんなさい」と言うのです。そうしたほうが、回復が早くて、体にも優しいことを漢方医は知っているからです。
40年ほど前のことです。私の同僚の一人が顔をしかめて、やってきました。「体が寒くて、また暑い。一体どうしたのか」と私に聞きに来たのです。
私は漢方の神経学を専攻しているので、彼を一目見て「交感神経と副交感神経のバランスが悪くなっている」と分かりました。交感神経が亢進(こうしん、高い度合いに至ること)すると、発汗を伴わない冷感が生じます。副交感神経系が亢進すると、発熱および発汗が生じるのです。
聞けば、彼はオフィスにいて、40年前の大型クーラーの冷気が、直接顔に当たる位置に座っていたらしいのです。「多くの医者も治すことができない。どうやったら治せるだろうか」と私に聞きます。
当時、私は漢方医学を学んでいる途中であり、経験も浅かったのですが、たしか「発汗作用のある桂枝湯(けいしとう)を飲むといいよ」とアドバイスしたのを覚えています。彼が、その通りにしたかどうかは分かりませんが、しばらくして彼の病気は治ったようです。
人間には「自然治癒力」があります。その自然治癒力を信じて、できるだけ体に取り戻すようにするのです。
もしもあなたが、エアコンの冷気にあたって調子が悪くなった場合に、どうしますか。「西洋医学の薬は飲みたくない。漢方の桂枝湯も作るのが面倒だ」。それなら、熱いお粥を一碗、ふうふう吹きながら食べ、すぐに布団をかぶって汗をかいてみてください。
問題は、すぐに解決するでしょう。
(文・胡乃文/翻訳編集・鳥飼聡)
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