米国とインドネシアがバタム島に海事訓練施設を建設
当局の発表によると、インドネシア政府の国内・国際犯罪対応能力の強化を目的として、南シナ海南端に位置する産業と輸送の中心地、バタム島に沿岸警備隊訓練センターを建設している。 米国とインドネシアが3億5,000万円相当(350万米ドル)の費用を投じる。
6月25日、インドネシアの海上保安機構である沿岸警備隊(BAKAMLA/Badan Keamanan Laut Republik Indonesia)と在ジャカルタ米国大使館の代表者等が、バタム海軍基地で行われた起工式に出席した。 仮想形式で起工式に出席したソン・キム(Sung Kim)駐インドネシア米国大使は声明を通して、米国は「国内・国際犯罪対策を強化することで今後も地域の平和と安全の推進を主導するインドネシア政府の役割を支援することに注力する」と述べている。
インドネシア沿岸警備隊を率いるアーン・クルニア(Aan Kurnia)中将の発言によると、2022年に建設が完了する予定の訓練センターは、沿岸警備隊が完全に所有・運営することになる。
同様に仮想形式で起工式に出席したクルニア中将は、「米軍は駐留しない予定」とし、「これは新規機関としてまだ能力に限りがあるため、革新的に人材育成を図る必要がある」と話している。
リアウ諸島州の代表的な島であるバタム島はシンガポールから南方32キロの地点に位置し、いくつかの東南アジア諸国が中国との間で領有権問題を抱える海域の近くに所在する。
今回の訓練センター建設は2014年に創設されたインドネシア沿岸警備隊、米国沿岸警備隊、米国国務省国際麻薬・法執行局、米国国防総省の共同の取り組みである。
近年、中国海警局船舶を護衛に付けた中国漁船が南シナ海南端に位置するナトゥナ諸島沖のジャカルタ排他的経済水域(EEZ)に侵入するという事態が発生して以来、インドネシア沿岸警備隊は海上哨戒活動を強化している。インドネシア海域へ不法侵入したベトナム漁船数十隻を拿捕したこともある。2021年初頭にはジャワ海で違法な石油輸送に従事していたタンカー2隻も拿捕した。1隻はイラン籍、もう1隻はパナマ籍であった。
交通量の多い海域で緊張が高まる中、中国政府は最近、中国が領有権を主張する海域を航行する船舶すべてに対して中国海警局が武器使用などの武力を行使することを認める新法「海警法」を制定した。中国はいわゆる九段線に基づき、南シナ海の大部分の領有権を主張しているが、2016年に国際仲裁法廷が九段線には法的根拠がないという判決を下している。
南シナ海領有権紛争に関しては、インドネシアは不関与の姿勢を取っているが中国政府はインドネシア排他的経済水域と重複する海域の一部に対する歴史的権利も主張している。
米国はまた、2018年にマルク州東部に位置するアンボン島のアンボン海軍基地に海事訓練センターを建設するインドネシアの取り組みも支援している。 今回建設が開始された新施設には教室、事務所、炊事場、食堂、兵舎、進水路が含まれる予定で、最大50人の研修生と12人の講師を収容できるようになる。
インドネシア大学「持続可能な海洋政策センター(CSOP)」のアリスティオ・リズカ・ダルマワン(Aristyo Rizka Darmawan)上級研究員は、「これは両国にとって建設的な活動であり、ナトゥナ諸島近辺におけるインドネシアの存在感を高める上でも非常に有益である」と評価している。
米中関係が悪化する中、今回の共同活動により均衡維持に取り組むインドネシアの姿勢を示すことができると述べたダルマワン上級研究員は、「東南アジア諸国は中国との関係をうまく利用しているが、地域の安定性維持を推進するため今回の米国との協力によりインドネシアは中立の立場を示すことができた」と説明している。
同イニシアチブにより、インドネシア国民が受け入れやすい形で地域における米国政府の存在感が高まると、同上級研究員は述べている。
同上級研究員はまた、「特に沈没したインドネシア海軍潜水艦『ナンガラ402(KRI Nanggala 402)』の回収作業に関して最近インドネシアは中国の支援を受け入れたという事実があることから、今回の共同活動は地政学的な面で当国が同地域における中国の影響力に対抗するという明確な姿勢を米国に示す目的もある」と説明している。
2021年4月、バリ島沖で沈没したナンガラ402潜水艦の捜索活動で乗組員53人全員の死亡が確認された後、インドネシアは中国人民解放軍海軍(PLAN)艦船3隻の援助を受けて回収作業に臨んだ。
魚雷発射演習中に沈没したナンガラ402潜水艦の初期捜索活動にはオーストラリア、インド、マレーシア、シンガポール、米国の艦船と航空機が参加していた。
(Indo-Pacific Defence Forum)