中国統一戦線を暴露したカナダ記者、中国系住民から誹謗中傷「共産党が黒幕」
中国当局者による海外でのマネーロンダリングや違法ドラッグ取引、浸透工作などを暴いたカナダの著名な調査記者、サム・クーパー(Sam Cooper)氏は、一部の中国系住民に中傷され、脅迫を受けたと明かした。
クーパー氏は20日、著書『意図的な無知:麻薬密売人、実力者と中国共産党スパイのネットワークが如何に西側諸国に浸透したか(Wilful Blindness: How a Network of Narcos, Tycoons and CCP agents infiltrated the West)』の発売討論会に出席した。同氏は自身の体験を通して、カナダにおける中国当局の統一戦線工作について再認識できたと述べた。
同氏は昨年4月30日、カナダ紙グローブ・アンド・メールで、中国当局がカナダにいる統一戦線工作員を通して、中国系住民にマスクなど医療物資を大量に購入し、中国に送るよう呼びかけたことを報道した。2日後の5月2日、カナダ国内の中国系SNS、微信(ウィーチャット)では、同報道の取り下げを求める請願書が次々と転載されたという。
クーパー氏は著書の中でこの事を詳しく記述した。
「請願書の内容と中国語メディアの報道が似ている。私の報道によって、すべての中国系カナダ人が統一戦線に関わっているという悪印象を付けられ、人種差別を受けたと非難された」
「しかし、私の報道は全部事実に基づいており、中国共産党当局の公式発表を引用している。(中略)報道を通して、中国当局は海外にいるすべての中国系住民を支配し、利用しようとしていることを強調したい」
クーパー氏は、中国の情報源やカナダの香港人コミュニティの情報提供で、請願書やネット上の出所を探したという。また、クーパー氏に情報を提供した中国出身のカナダ人学者は、中国系メディアを監視した結果、中国共産党が黒幕だと結論を出した。
「(ネットの中傷などで)私は眠れなくなった。夜と週末の時間を使って、情報機関や法執行機関の担当者に相談した。これらの専門家は、カナダ人学者と同じ結論を出した」
クーパー氏は著書の中で、カナダ親中団体のリーダー、グォー・ディン(Guo Ding)氏の名前を挙げた。同団体はカナダの政治家に接近し、中国当局にとって有利な政策を策定するよう働きかけている。
市民団体、「カナディアン・フレンズ・オブ・ホンコン(Canadian Friends of Hong Kong)」の発起人、アイビー・リ(Ivy Li)氏は20日の討論会で、中国当局の浸透工作で、カナダの民主主義が危機的な状況にさらされていると懸念した。
「中国当局の統一戦線工作員らは、クーパー氏が人種差別者だとバッシングすることによって、クーパー氏に心理戦を展開した。これは、中国当局がカナダの世論をコントロールしている事例の一つだ」
リ氏は、中国当局は同様に中国系住民にも心理戦を展開していると指摘した。「強い祖国がなければ、私たちはいじめられる。中国共産党が祖国を強くすることができるから、中国共産党に頼ってくださいという観念が中国系住民に押し付けられた」
一般のカナダ人市民に対しても、「人種差別だとか、フェイクニュースだ、帝国主義者だ、中国系住民をいじめているなどのレッテルを貼って、発言をしないよう圧力をかける」。
リ氏は中国系住民に対して、中国当局による心理戦を認識したうえで、真の人種差別を区別するよう提言した。
「海外でわれわれの成功は個人の努力と関係しており、中国(共産党)の強さと無関係だ」
(翻訳編集・張哲)